新社会人の息子が「従業員持株会」に誘われた!「10%の奨励金が出る」とのことだけど、知っておきたい“落とし穴”も!? デメリットや注意点を確認
たしかに、奨励金が出るのは大きなメリットです。さらに業績が上がれば株価も上がるため、仕事を頑張るモチベーションになるでしょう。その一方で、持株会にはいくつか知っておいたほうがいい落とし穴もあります。制度の仕組みをよく理解しないまま始めると、後から思わぬ後悔をすることもあるため、正しい知識を伝えたいものです。
本記事では、持株会に入る前に知っておくべきデメリットや注意点を解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
持株会の魅力は奨励金と業績アップ時の利益
持株会の最大の魅力は、奨励金の存在です。例えば筆者が以前勤めていた会社では、毎月1万円を拠出すると1000円分が奨励金として加算され、合計1万1000円分の自社株が購入でき、これを魅力に感じて持株会に参加する同僚もいたものです。
加えて、持株会を通じて購入した自社株の価格は会社の業績と連動します。業績が伸びることで、株価の上昇や配当金の受け取りによる利益が期待できるため、働くモチベーションにつながるという効果も期待できるでしょう。
なお、奨励金は給与の一部として支給されるため課税されること、配当金も現金でもらうわけではなく自社株へ再投資される形となる点には注意が必要です。
売却しづらく、業績悪化時はダブルパンチになる
持株会には魅力がある一方で、特に気をつけたいのが、「売却しにくいこと」と「業績悪化時に損失が重なりやすいこと」です。
持株会で購入した株は、すぐに市場で売却できるわけではありません。自由に売買するには自分の証券口座に振り替える必要がありますが、一般的には単元株数(通常100株)までの積み立てが必要です。少額から始めた場合は、ある程度の時間がかかります。
例えば自社株の価格が1株4000円で1単元が100株の場合は、40万円分の積立が必要なので、月に1万円の積立では3年以上かかるのです。証券口座に振り替えるまでは株主優待はもらえません。
また、自社株を扱う以上、インサイダー取引とみなされないように注意が必要です。筆者が以前勤めていた会社では、決算の時期など特定の時期での売買の禁止が規定されていたほか、禁止期間ではなくても総務部に書類を提出し承認を得る必要がありました。
通常の株式のように売りたいタイミングですぐに売れないことはデメリットとなります。
会社の業績が悪化したときに「給与も資産も下がる」というダブルパンチをくらう可能性も考えなければいけません。業績が落ち込めば賞与や昇給に影響が出るかもしれませんし、それと同時に自社株の価格も下がれば、持株会で積み立ててきた資産も目減りすることになるわけです。
持株会はメリットとリスクを理解したうえで判断を
従業員持株会には、奨励金によってお得に自社株を積み立てられるという魅力があります。業績が上がれば株価や配当による利益も期待でき、働くモチベーションにつながる側面もあるでしょう。
一方で、「すぐに売却できない」「業績が悪化すれば給与面と資産面の両方に影響が出る」仕組みであることは知っておくべきです。
実際に筆者も持株会には入っていましたが、生活に影響のない範囲であることはもちろん、将来のための貯蓄をしてもなお残った完全な余剰資金を使って積み立てることを意識していました。そうすることで、仮に株価が下がっても過度に気にせずに済みましたし、制度のメリットを落ち着いて享受することができたのです。
持株会は、入る・入らないのどちらが正解というものではありません。メリットとデメリットを理解した上で、自分の考え方やライフプランに応じて判断することが大切です。
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
