2025年、S&P500はどこまで下がる? 「下落トレンド」で損しないために知っておきたい指標とは

配信日: 2025.04.24 更新日: 2025.06.26
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2025年、S&P500はどこまで下がる? 「下落トレンド」で損しないために知っておきたい指標とは
米国株を代表するS&P500が下落傾向にあります。「今は買い時なのか、それとも様子を見るべきか?」と悩んでいる投資家も多いのではないでしょうか。
 
本記事では、チャート分析の基本である移動平均線・トレンドライン・フィボナッチなどを用い、テクニカルの視点から現在の相場を読み解きます。初心者でも理解しやすい形で、「どこで入って、どこで降りるべきか?」を丁寧に整理します。
重定賢治

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

チャート環境の確認

まず、チャート環境の確認です。
 
図表1 S&P500(日足)

図表1

※TradingView提供(解説を目的に使用しております)
※チャート上の紺色の線は「200日移動平均線」、紫色の線は「50日移動平均線」です。
 

(1)水平線(上値抵抗線と下値支持線)を引く

相場の節目を確認し、それに基づき水平線(上値抵抗線と下値支持線)を引きましょう。現状では、S&P500は下落トレンドを描いているため、どこまで下げるかを意識しながら水平線を引くのがポイントです。
 

(2)上値と下値のトレンドラインを引く

過去の上値と上値を結んだ線が「上値のトレンドライン」、過去の下値と下値を結んだ線が「下値のトレンドライン」です。
 
チャート画面は長期的な動きを俯瞰(ふかん)したものですが、現状は下落幅が大きくなっているため、長期的なトレンドラインをしっかり意識する必要があります。
 

(3)移動平均線の位置を確認する

紺色が200日移動平均線、紫色が50日移動平均線です。※チャートでは紫色も200日移動平均線になっていますが、「50日移動平均線」の誤りです。
 
ローソク足チャートと移動平均線との距離を確認しましょう。現在、ローソク足は200日移動平均線を下回っています。200日移動平均線は長期トレンドを意味するため、「下落が強い」と確認できます。
 

(4)フィボナッチ・リトレースメントを描く

現在のようなチャートの動きをする場合、フィボナッチ・リトレースメントは2022年10月安値を起点に、直近高値を結んでいきます。
 
そのうえで、特に、0.382、0.5、0.618の水準を確認していきます。S&P500ではこれらのレベルのうち、おおよそ5100ポイントが、短期的な下落のめどとして意識されているのが分かります。
 

(5)インジケーターを確認する

今回は「スロー・ストキャスティクス」というインジケーターを用いていますが、これは相場の割高感、割安感を示すものです。現在はかなり割安な水準に位置しているため、短期的には若干の反発が期待されるタイミングといえます。
 

総合評価

(1)テクニカル的な判断

今のような相場状況は、どちらかというと長期的な目線から俯瞰的に見ることが求められます。このためテクニカル分析を行う際は、より長い波動を確認しながら分析していく必要があります。
 
例えばシナリオとしては、S&P500の場合、2025年2月高値を「天井」と捉え、それ以降の動きは下落波動を描く可能性が高いと考えます。そうすることで、どこまで下がるかを意識することができます。そのため、前述のフィボナッチ・リトレースメントなどの分析ツールを用い、下値を探っていきます。
 
この場合、短期的には「およそ4800ポイントまでの下落を視野に入れておく必要がある」と判断することができます。
 
その手前の下値水準で小さめの反発が予想されますが、その反発は「だまし」である可能性が高いです。そのため、このような下落トレンドにおいては、特に投資初心者は短期で入らないほうがよいかもしれません。
 

(2)ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)的な判断

現在、ファンダメンタルズ分析はあまり効かないというのが正直なところです。なぜならば、相場の大きな材料が、トランプ政権の関税引き上げとウクライナ戦争が終結するかどうかにあるからです。
 
もちろん経済指標の発表には多少影響を受けますが、それよりも大きなニュースが出てきやすい状況であるため、特定のニュースに踊らされる相場環境にあるということができます。
 
このような相場環境においては、通常、チャートの動きが次のチャートの動きを決める傾向があります。従ってどちらかといえば、ファンダメンタルズ分析よりもテクニカル分析の優位性が高くなります。
 

どこで入って、どこで降りる?

短期で入る場合、下値が確定した後に入るようにしましょう。なぜならば、今回の下落トレンドは大きくなる可能性があるからです。逆に「売り」から入る場合は、下落トレンドで利益が出るため、利益を得やすい環境といえるでしょう。
 
長期で入る場合は、不確実性が高いため、判断は保留します(ここでいうところの「長期」は5年未満の期間です)。
 
なぜ留保する必要があるかというと、もっと長い波動で考えた場合、2025年2月高値が歴史的な転換点になる可能性もあるからです。長期保有(ホールド)や積立投資といえども、仮にそのシナリオを描く場合、損失が大きく膨らむ可能性を見る必要があります(今のところ可能性は低いですが)。
 

まとめ

今のような相場環境で投資を始める人は、「投資が怖い」と感じるかもしれません。これは当たり前の感情です。そして「投資はしない」と考えるのも当然のことといえるでしょう。
 
世間では、「長期投資を前提に、途中で止めずに続けるようにしましょう」という考え方が広がっていますが、確かに間違いではありません。
 
しかし、この考え方はリスク(不確実性)の本質を捉えておらず、時代という投資環境によってはそうともいえないのが正直なところです。だからこそ知識や技術を身につける必要がありますが、経験を積み重ねなければ、これらを身につけることはできません。
 
つまり、長期投資を行う場合、損失を経験しながらどう対応していくかを身につけていくということです。下落局面こそ学びは深まります。この機会に、投資についてしっかりと経験を積んでいくようにしましょう。
 

出典

TradingView Inc. TradingView
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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