【新NISA】9月に始めた人は得? 10月から投資信託に「10万円」積み立てた場合のリターンを年率「3%・5%・7%」で比較してみた
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
新NISAの基本ルールを確認
2024年から始まった新NISA(少額投資非課税制度)は、これまでの制度を一本化し、非課税枠の上限が大幅に拡充されました。主な特徴は、以下の通りです。
●毎年の投資上限は合計360万円、総額最大1800万円
●「つみたて投資枠」は年間120万円まで
●「成長投資枠」は年間240万円まで
●非課税保有期間は「無期限」
特に利用者が多いと想定される「つみたて投資枠」は、金融庁が指定する投資信託やETFを毎月積み立てられます。ここで気になるのは「始めるタイミング」です。例えば、9月に始めるのと、10月に始めるのでは、1ヶ月の差がありますが、その差は将来どの程度の違いになるのでしょうか。
シミュレーション結果|9月スタートと10月スタートのリターン差
金融庁の「つみたてシミュレーター」を使い、年率リターン3%・5%・7%のケースを比較します。シミュレーション条件は「毎月10万円を20年間積み立てる」場合です。
NISAの非課税枠は、つみたて投資枠と成長投資枠の合計で上限1800万円です。上限に達した後は積み立てを停止し、年利だけの運用を継続して9月スタートが20年を迎えるまで運用を続ける場合を考えます。
元本は1ヶ月分の差がついて積み立てられ、ともに約15年で1800万円に達します。しかし、運用成果を含めると以下のようになります。
◆年率3%で運用した場合
239ヶ月(10月スタート):2636万5529円
240ヶ月(9月スタート):2643万1442円
元本:1800万円/1ヶ月分の差額:6万5913円
◆年率5%で運用した場合
239ヶ月(10月スタート):3430万2759円
240ヶ月(9月スタート):3444万5687円
元本:1800万円/1ヶ月分の差額:14万2928円
◆年率7%で運用した場合
239ヶ月(10月スタート):4493万3376円
240ヶ月(9月スタート):4519万5487円
元本:1800万円/1ヶ月分の差額:26万2111円
つまり、1ヶ月は元本で約10万円の投資差ですが、長期運用では年率に応じて、複利効果により数万円から数十万円の差に広がることが分かります。
1ヶ月の違いが将来に与えるインパクト
シミュレーションから見えてくるのは、「投資を早く始めるほど複利効果を享受できる」という事実です。複利とは投資で得られた利益を元本として再投資することで、利益がさらに利益を生む仕組みを指します。
9月スタートと10月スタートでは、最初は10万円しか差がありません。しかし、20年間の運用を年率3%~7%で行うと、総資産額の差は1ヶ月の違いで約6~26万円に膨らみます。
ただし、これはあくまで「1ヶ月の差」のケースです。早く始めていれば、その分だけ差は大きくなる可能性があります。
一方、見方によっては20年間もの長期間運用したにもかかわらず、差が数十万円にとどまっているのも事実です。そのため「投資を1ヶ月遅らせたら大きく損をするのではないか」と焦る必要はありません。
重要なのは「早く始める意識を持ちながら、無理なく継続できるシミュレーションを行う」ことです。投資は、必ず資産が増える仕組みではありません。世界情勢や金利、為替などの影響で購入時よりも価格が下落するリスクもあります。
一方、積み立て投資は、資産購入時の価格を抑え、値下がりのリスクやインパクトを軽減する効果も期待できます。
「早く始めるほど得」は本当か
早く始めるほど得かは運用状況によって異なるため、一概に正しいとは言えません。それ以上に大切なことは、「投資を継続すること」と「適切な商品選び」です。短期的な相場変動に左右されず、価格下落リスクを踏まえて長期間投資を積み立てることで、時間を味方にしてリターンを大きくできます。
これからNISAでの投資を検討する人は、まず制度を調べることから始めるのがおすすめです。
出典
金融庁NISA特設ウエブサイト 資産形成の基本
金融庁NISA特設ウエブサイト NISAを知る
執筆者 : 上嶋勝也
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
