円安で「ドル預金」は本当に得? 1ドル140円で「100万円」預けた場合の損益は? 円高になったときの“変化”もFPが検証
本記事では、1ドル140円で100万円をドルに換えた場合の損益を試算し、円高に動いたときの影響をファイナンシャルプランナーの視点から解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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目次
円安でドル預金が注目される背景
2022年以降、円安傾向が長期的に進んでいます。2021年に1ドル110円台だった為替レートは、2023年には一時150円を突破しました。
円の購買力が低下する中、外貨で資産を持とうとする動きが高まっています。特にドルは世界の基軸通貨であり、日本円より高金利で運用できることから、外貨預金の人気が上昇しています。
外貨預金は、日本の銀行を通して外貨を購入し、預金する仕組みです。円預金と異なり預金保険制度(ペイオフ)の対象外であるため、元本保証はありません。その一方で、為替次第では利益を得られる可能性がある投資性の高い商品です。
1ドル140円で100万円をドル預金にした場合の試算
仮に1ドル140円のタイミングで100万円をドルに換えたとしましょう。為替手数料を1ドルあたり1円と仮定すると、実際の購入レートは141円程度です。100万円を141円で割ると、約7092ドルが手に入ります。
これを、1年定期で年利3%のドル預金に預けると、利益となる利息は約213ドル(7092ドル×3%)となり、1年後の元利合計は約7305ドルです。その後、どのようなレートで日本円に換金するかで日本円としての利益が確定します。
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為替変動による損益の具体例(円安・円高のケース)
為替の値動きによって、7305ドルを円に換金したときの結果は大きく変わります。
◆円安がさらに進み150円となった場合
7305ドル×150円=109万5750円です。利息を含めて約9万5000円の為替差益となります。
◆円高に進み130円となった場合
7305ドル×130円=94万9650円です。為替差損で約5万円のマイナスです。
◆さらに円高が進み、120円になった場合
7305ドル×120円=87万6600円。約12万円の損失となり、利息で補いきれません。
預入時より、円安になれば利益を得られますが、円高に振れると元本割れリスクがあります。
ドル預金のメリットとリスクを比較
ドル預金の最大の魅力は、日本円より高い金利で運用できる点です。例えば、三菱UFJ銀行では、外貨定期預金の金利が円定期より高水準に設定されることがあります。
注意点もあります。為替手数料は往復で数円かかるため、短期的な売買では利益が出にくいです。また、為替変動リスクにより、預けたときより円高が進むと元本割れのリスクが高くなります。
さらに、外貨預金はペイオフ対象外であるため、銀行が破綻した場合には補償はありません。また、外貨預金の為替差益の金額によっては雑所得として確定申告が必要になる場合がありますので、税制の確認が必要です。
ドル預金を賢く活用するポイント
ドル預金を利用する場合は、次の点に注意が必要です。
◆長期的な資産分散として利用する
外貨建て資産は全体の一部にとどめ、円預金や投資信託などと組み合わせてリスク分散することが大切です。
◆為替動向を意識する
為替が円安に振れたタイミングで円転すると利益を得られる一方、円高時に解約すれば損失が膨らみます。為替相場の長期トレンドを理解することが重要です。
◆ほかの金融商品との違いを理解する
外貨預金は「元本割れリスクを伴う預金」です。為替ヘッジ付き投資信託や外貨建債券と比較し、どの手段が自分に合っているか検討しましょう。
円安局面では外貨資産への関心が高まりますが、実際には「為替の動き次第で損もする」という点を理解しておくことが必要です。ドル預金はリスクとリターンを冷静に比較し、長期的な資産運用の一部として活用するのが賢い方法といえるでしょう。
執筆者 : 上嶋勝也
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
