年収600万円・42歳の友人が「iDeCoをやめてNISAに一本化したい」と言い出した!65歳まで“月5万円運用”した場合、最終的な資産額の差はいくらになる?
確かにNISAは自由度が高く、資金をいつでも引き出せる点が魅力です。しかし、iDeCoには老後資金形成に特化した税制上の強みがあります。
そこで本記事では、42歳から65歳まで毎月5万円を運用した場合を想定し、iDeCoとNISAで最終的な資産額にどの程度の差が生じるのかを、制度の違いや税金の視点から整理します。
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目次
iDeCoとNISAはそもそも何が違う制度なのか
iDeCoとNISAはいずれも運用益が非課税になる制度ですが、目的は大きく異なります。iDeCoは老後資金形成を目的とした私的年金制度で、原則として60歳まで資金を引き出せません。その代わり、掛金が全額所得控除の対象となり、現役時代の税負担を軽減できる点が最大の特徴です。
一方、NISAは資産形成を幅広く支援する制度で、売却や引き出しに制限がありません。ただし、拠出した金額そのものに対する所得控除はなく、税制メリットは運用益が非課税になる点に限られます。
このようなことから、老後資金を「確実に積み上げる制度」がiDeCo、「柔軟に使える資産形成制度」がNISAと考えると理解しやすいでしょう。
42歳から65歳まで月5万円を運用した場合の資産額
では、42歳から65歳までの23年間、毎月5万円(年間60万円)を積み立て、年3%で運用したケースを想定してみましょう。金融庁の「つみたてシミュレーター」でシミュレーションすると、23年目の運用資産額は1974万円となり、おおよそ2000万円前後と想定されます。
重要なのは、この金額自体はiDeCoでもNISAでも同じである点です。運用商品や利回りが同じであれば、制度によって運用成果に差は生じません。では、どこで差が生まれるのでしょうか? それが、「税金」です。
所得控除の有無が生む実質的な違い
iDeCoとNISAはいずれも運用益が非課税ですが、税制優遇の仕組みには明確な違いがあります。NISAは、税金を支払った後の資金を投資し、運用によって得られた利益が非課税になる制度です。一方、iDeCoは、拠出した金額そのものが所得控除の対象となり、投資する前の段階で所得税や住民税の負担が軽減されます。
年収600万円の会社員で、所得税20%・住民税10%が適用されるケースを想定すると、月5万円(年間60万円)をiDeCoに拠出することで、年間約18万円の税負担が軽減される計算になります。この節税効果が23年間続くと、単純計算で累計約400万円になります。
この約400万円は、運用によって増えたお金ではなく、iDeCoを利用したことで税金として支払わずに済んだ金額の累計です。NISAのみで運用した場合には得られない点であり、仮にこの分を生活費に使わず、貯蓄や運用に回せたとすれば、資産形成に使える資金がその分多くなると考えられます。
iDeCoをやめてNISA一本化する判断は正しいのか
では、「iDeCoをやめてNISAに一本化する」という判断は合理的なのでしょうか。結論としては、目的によって評価が分かれます。
老後資金として使うお金であり、60歳まで引き出せなくても問題がなく、現役時代の節税メリットを最大限に活用したいのであれば、iDeCoをやめる理由は乏しいといえます。
一方で、教育費や住宅関連資金など、将来使う可能性がある資金を運用したい場合には、NISAの柔軟性が安心材料になるでしょう。現実的には、iDeCoとNISAを併用し、老後資金の土台はiDeCoで作り、流動性が必要な資産はNISAで運用する方法が、バランスの取れた選択肢と考えられます。
制度の特性を理解して後悔のない選択をしよう
iDeCoとNISAは優劣を競う制度ではなく、役割の異なる仕組みです。42歳から65歳までの23年間に月5万円を運用した場合、表面的な運用額は同じでも、所得控除という視点を加えるとiDeCoの実質的なメリットは小さくありません。一方で、自由度の高さという点ではNISAに軍配が上がります。
大切なのは、「老後資金なのか、それとも将来使う可能性のあるお金なのか」という目的を明確にし、自分のライフプランに合った制度を選ぶことです。制度の特徴を理解したうえで判断することが、将来の資産形成において後悔しない第一歩となるでしょう。
出典
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト
金融庁 NISA特設ウェブサイト
国税庁 No.2260 所得税の税率
東京都主税局 個人住民税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
