50代の親が10年前から「つみたてNISA」をしていたら、老後資金はどのくらい多かった? 貯金とNISAのシミュレーション比較
そこで本記事では、「NISAとはどのような制度か?」「NISAで積み立て投資をした場合と預貯金で積み立てた場合を比較して金額にどれくらい差があるのか?」について解説します。具体的な計算も行っておりますので、ぜひ最後までお読みください。
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
NISAとはどのような制度か?
NISA(ニーサ)は「少額投資非課税制度」のことであり、2014年1月からスタートしています。NISAの本来の意味は「日本版個人貯蓄口座」です。投資のイメージが強いかもしれませんが、NISAはあくまで口座です。
2016年4月には「ジュニアNISA」が、2018年1月には「つみたてNISA」がスタート(これに伴いこれまでのNISAを「一般NISA」というようになりました)し、2024年1月には「一般NISA」と「つみたてNISA」を統合する形(「ジュニアNISA」は2023年に廃止)、現在のNISAがスタートしました。
以後、「一般NISA」「つみたてNISA」で投資をすることはできませんが、すでに投資した金融商品は所定の非課税保有期間まで保有することができます。
NISA口座の最大の特徴は、NISA口座で金融商品(株式や投資信託など)に投資をした場合、そこで得た配当や売却益などに対して税金がかからないということです。通常、金融商品で利益を得た場合、約20%の税金(所得税・住民税・復興特別所得税)がかかりますが、NISA口座で投資をした場合は、この税金が非課税になります。
ただし、NISA口座で非課税となる投資枠(年間投資枠・総枠)には上限があります。年間投資枠・総枠は、図表1のとおりです。
図表1
| NISA口座 | 年間投資枠 | 総枠 | |
|---|---|---|---|
| 一般NISA(旧制度) | 120万円 | 600万円 | |
| つみたてNISA(旧制度) | 40万円 | 800万円 | |
| NISA(現行制度) | つみたて投資枠 | 120万円 | 1800万円 (成長投資枠と合算) |
| 成長投資枠 | 240万円 | 1200万円 | |
※筆者作成
NISAで積み立て投資をした場合と預貯金で積み立てた場合を比較して金額にどれくらい差があるのか?
以下では、仮に10年前から「つみたてNISA」をしていたとして、預貯金を積み立てた場合と比較してどれくらい金額に差があるのかを試算します。なお、条件として運用期間を2016年から2025年までの10年間とし、各年におけるNISA口座と投資金額を以下のように仮定します。
・2016年~2017年の2年間:一般NISA口座 年間120万円
・2018年~2023年の6年間:つみたてNISA口座 年間40万円
・2024年~2025年の2年間:NISA口座(つみたて投資枠) 年間120万円
上記金額を年率2%で複利運用したと仮定すると、2026年における金額は804万6400円になります。なお、各年における投資の運用成果は「終価係数」を用いて算出しており、詳細は以下のとおりです。
・2016年の運用成果:120万円×1.219=146万2800円
・2017年の運用成果:120万円×1.195=143万4000円
・2018年の運用成果:40万円×1.172=46万8800円
・2019年の運用成果:40万円×1.149=45万9600円
・2020年の運用成果:40万円×1.126=45万400円
・2021年の運用成果:40万円×1.104=44万1600円
・2022年の運用成果:40万円×1.082=43万2800円
・2023年の運用成果:40万円×1.061=42万4400円
・2024年の運用成果:120万円×1.04=124万8000円
・2025年の運用成果:120万円×1.02=122万4000円
これらの金額を運用せずに預貯金した場合、合計金額は720万円となり、上記運用成果と比較すると84万6400円(約11.8%)の差が生じます。
また仮に2016年から2025年までの10年間、年率2%で複利運用しながら毎年40万円積み立てていった場合の2026年における金額は、438万円(=40万円×10.95)となり、預貯金で積み立てていった場合と比べ、38万円(9.5%)多くなります。なお、この金額は「年金終価係数」を用いて算出しております。
2つの試算結果は、いずれも10%前後の差が生じているのが分かります。年率2%であるにもかかわらず約10%の差が生じるのは、複利運用をしているためです。
複利運用とは、いわば「利益を再投資する」ということであり、これにより利益がさらなる利益を生むことになります。資産運用をされる際には、「複利運用をする」ということも心掛けていただくとよいでしょう。
まとめ
本記事では、「NISAとはどのような制度か?」「NISAで積み立て投資をした場合と預貯金で積み立てた場合を比較して金額にどれくらい差があるのか?」について解説しました。まとめると、以下のとおりです。
・NISAとは「日本版個人貯蓄口座」のことであり、この口座で投資した金融商品から得た利益は非課税となる
・NISAで積み立て投資をした場合と預貯金で積み立てた場合を比較すると、仮に年率2%で複利運用しながら毎年40万円を10年間積み立てていったとして、およそ10%前後の差が生じる
積み立て投資を始める時期にもよりますが、老後資金を準備する目的であるならば、リスクの高い投資は控えたほうがよいでしょう。リスクの高い投資はそれだけ多くの利益を期待できますが、反面、大きな損失を被る可能性もあります。したがって、本記事での試算も期待利回りを2%にとどめています。
資産運用をする場合は、複利運用を心掛けるとよいでしょう。本記事での試算においても、年率2%の運用益を複利運用(再投資)することで、預貯金で積み立てた場合と比較して、10%前後のプラスになりました。
複利運用は運用期間が長いほど恩恵を受けやすく、積み立て投資と相性がよいため、これから積み立て投資を行われる方は、複利運用されることをおすすめします。
出典
金融庁 NISA特設ウェブサイト NISAを知る
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
