住宅ローンを「退職金1000万円」で“繰り上げ返済”した夫へ、妻が「株で配当もらえば良かったのに」とポツリ…金利が「120万円」減っても損? 高配当株に投資した場合でシミュレーション
しかし、退職金の使い道はいくつか考えられるため、慌てず慎重に検討することも大切です。
本記事では、退職金1000万円を活用する例として、住宅ローンの繰り上げ返済に使う場合と株式を購入して配当や利子を得る場合を比較し、どちらが有利なのか考察します。繰り上げ返済や株式投資の注意点についても解説しますので参考にしてください。
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1000万円を繰り上げ返済に使ったら
まず、退職金1000万円を使って、住宅ローンを繰り上げ返済する場合から考えてみましょう。繰り上げ返済の最大のメリットは、言うまでもなく金利負担の軽減です。当初の借入額や返済期間、返済のタイミングなどで金利の減少幅に違いはありますが、確実に負担を減らせます。
1つの例として、借り入れた元金が3500万円、金利2.0%、返済期間35年(元利均等)で、25年返済を続けていた場合を想定してみましょう。もし、その時点で1000万円を繰り上げ返済し、返済期間を短縮すると120万円ほど支払う金利が減ります。
繰り上げ返済後の元金残高は250万円ぐらいとなり、あと2年ほどでローンを完済可能です。金利負担が減るのはもちろん、返済期間が短くなることで、老後に向けた不安が少なくなる人もいるでしょう。
もしも1000万円を高配当株に投資したら?
確かに繰り上げ返済することで金利負担は減少し、返済期間も短くなりました。この結果を見る限り、繰り上げ返済は経済的な合理性があります。しかし、場合によっては、この1000万円をもっと有効に活用する手だてがあるかも知れません。
例えば、1000万円で高配当株を購入したらどうなるでしょう。高配当株とは、配当金と呼ばれる会社から株主に還元される金銭が相対的に高めの株式のことです。
配当金の多寡については、年間に得られる1株あたりの配当金を株価で割って算出する「配当利回り」で判断するのが一般的でしょう。例えば、株価1000円で1株あたりの年間配当金が10円なら「10÷1000=1%」の計算から配当利回りは1%になります。
高配当株に明確な定義はありませんが、配当利回りがおおむね3%後半から5%以上であれば、高配当株と考えて差し支えありません。
もし、配当利回り4%の株を1000万円分所有すれば、1年間に1000万円×4%=40万円の配当を受け取れます。通常は所得税など20.315%の税金がかかりますが、NISA口座を利用すれば非課税での運用が可能です。
つまり、先ほどの繰り上げ返済による120万円の金利負担減を、わずか3年でクリアし、その後も毎年40万円の配当金が手に入ります。せっかく夫がよかれと思ってやった繰り上げ返済なのに、株式投資したかった妻に愚痴を言われることにもなりかねません。
高配当株への投資には大きなリスクもある
では、1000万円の使い道として、繰り上げ返済よりも高配当株への投資がベターなのでしょうか? 実はこの2つの用途には、考えられるリスクに大きな違いがあります。
繰り上げ返済であれば、ほぼ想定どおりに金利負担軽減を図れるのに対し、株式投資には価格変動などのリスクがつきものです。
配当金が定期的に手に入っても、肝心の株価が購入時から下がると、トータルで見れば損失が発生する可能性があります。最悪、会社が破綻する事態になると、株の価値がゼロになることもあるのです。
また、配当金は株主総会の議決で決まるため、今は「高配当株」であっても、その状態がずっと続く保証はありません。会社の業績悪化などにより、配当金が少なくなることも十分考えられます。
さらに「オール・カントリー(eMAXIS Slim 全世界株式、略称=オルカン)」など、元々分散効果のある投資信託を用いた長期・積立投資に比べ、個別銘柄に依存する高配当株投資の難易度は相対的に高いでしょう。1000万円もの老後の大切な資金を、一気に高配当株に投資するのは、ややリスキーな選択と言えます。
もちろん、繰り上げ返済も団体信用生命保険に加入している場合など、返済タイミングに注意しなければなりません。また、1000万円を慌てて使い、急な出費などに対応できないようでは本末転倒です。
まとめ
退職金1000万円の使い道として、繰り上げ返済と高配当株への投資について、簡単な例を用いて得られる効果やリスクなどを比較してみました。高配当株を購入することで、繰り上げ返済以上の経済的メリットを得られるかもしれませんが、それに見合ったリスクも取らなければなりません。
いずれにしても、シニア世代が老後に充てる資金を一気に使う場合は、慎重な検討が必要です。どの用途に資金を使うかは、個人の資産状況や老後のライフプランなどによっても、選択に違いが出ます。大切な資金ですので、パートナーなどとしっかり相談した上で、使い道を考えてみてはいかがでしょうか。
執筆者 : 松尾知真
FP2級
