「退職金1500万円」は、貯金だけだと“実質830万円”に目減り! 一方「年率3%×20年」の運用で“2700万円”に…元本割れに怯え「現金を放置」するリスクとは? 運用収益をシミュレーション
仮に年3%のインフレが20年続いた場合、1500万円の価値は実質830万円ほどまでに下がってしまいます。インフレのリスクと、資産を守りながら増やすための堅実な運用方法を確認していきましょう。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
20年で価値が半減? インフレがもたらす資産の目減り
「銀行に預けておけば元本は減らないから安心」と考える人は少なくありません。確かに、銀行預金であれば預けた金額(元本)が減るケースはまれです。しかし、ものの値段が上がり続けるインフレ下においては、同じ金額で買えるものが少なくなってしまいます。これが、実質的な資産価値の減少です。
総務省が公表した2023年の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合で前年比3.1%の上昇となりました。これは第2次オイルショックの影響があった1982年以降、41年ぶりの高い伸び率です。
この状況はその後も続いており、2024年は前年比べ2.5%上昇、2025年も前年比3.1%上昇しています。食料品やガソリン価格の値上がりを肌で感じている人も多いでしょう。
仮に、今後も毎年3%ずつ物価が上昇すると仮定します。現在は1500万円で購入できる商品やサービスが、毎年3%ずつ値上がりしていくため、20年後には同じものを買うのにより多くのお金が必要です。
試算すると20年後の1500万円は、現在の価値で約830万円分の購買力しか持ちません。額面は変わらなくても、実質的な価値は4割以上も失われてしまう計算です。一生懸命働いて得た退職金や預貯金が、何もしなくても目減りしてしまうのは避けたい事態でしょう。
インフレに負けないために年率3%の運用を目指す
資産の価値を守るためには、物価上昇率と同じか、それ以上の利回りで資産を運用する必要があります。インフレ率が3%であれば、資産も3%で増やして初めて現在の価値を維持できるからです。
ここで、退職金などの1500万円を年率3%で20年間運用した場合をシミュレーションしてみます。証券会社などの資産運用シミュレーションを利用して試算すると、最終的な金額は約2709万円になります。運用収益だけで約1209万円も増える結果です。
銀行の普通預金金利も上がっていますが、現在の0.2%前後の金利では、20年預けても数万円にしかなりません。運用するかしないかでこれほど大きな差が生まれるのは、「複利」の効果が働くためです。
複利とは、運用で得た利益を元本に加えて再投資し、さらに利益を生む仕組みです。時間がたつほど雪だるま式に資産が増えていくため、長期で運用するほど効果は大きくなります。
もちろん、投資にはリスクが伴います。しかし「元本割れが怖いから」と現金のまま放置するリスクもまた、無視できません。インフレによって確実に資産価値が削られていく現状においては、適切なリスクを取って運用する必要があります。
投資初心者でもはじめやすいリスクを抑えた運用方法
これまで投資経験がない人にとって、退職金のような大金をいきなり運用に回すのは不安が大きいでしょう。そこでおすすめなのが、国が推奨する税制優遇制度であるNISA(少額投資非課税制度)を活用することです。
通常、株式や投資信託などの運用で得た利益には約20%の税金がかかります。しかし、NISAを利用すれば利益が非課税になるため、手元に残るお金を効率よく増やせます。特に2024年から始まった新しいNISA制度では、非課税で保有できる期間が無制限となり、長期的な資産形成により適した仕組みになりました。
運用商品を選ぶ際は、特定の企業や国だけに集中させず、世界中に分散投資するのが鉄則です。「全世界株式」や「バランス型」と呼ばれる投資信託であれば、一本で世界中の株式や債券に分散投資できます。仮にどこかの国の景気が悪くなっても、ほかの国がカバーするため、資産全体の値動きをマイルドに抑えられる効果があります。
また、一度に全額を投資するのではなく、毎月一定額を購入する「積立投資」も有効です。価格が高いときには少なく、安いときには多く購入するため、平均購入単価を抑える効果が期待できます。
まずは今の生活費などに支障のない範囲で、少額から積立をはじめてみてはいかがでしょうか。値動きになれておくことが、将来受け取る退職金を賢く守るための準備運動になります。
資産を守るためには「何もしない」リスクを知る
インフレが加速する現代において、現金のまま資産を保有し続けるのは安全な選択肢ではなくなりつつあります。20年後の豊かな老後生活を守るためには、物価上昇に負けない資産づくりが欠かせません。
「投資はギャンブル」と決めつけず、インフレに対抗するための防衛策として捉え直すことが大切です。まず家計の状況を確認し、無理のない範囲でNISA口座を開設するなどして、運用への一歩を踏み出してみましょう。
出典
総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)平均
執筆者 : 山口克雄
2級ファイナンシャル・プランニング技能士