2020年4-6月期実質GDP成長率▲27.8%!「GDP成長率」はマネーリテラシーを磨く良いツールになる。

配信日: 2020.10.23

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2020年4-6月期実質GDP成長率▲27.8%!「GDP成長率」はマネーリテラシーを磨く良いツールになる。
老後のお金を準備する方法として「確定拠出年金制度(企業型・個人型)」や「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」が設けられていますが、中でも、投資信託で積立投資を行っている方は増えているのではないでしょうか。
 
老後までの長い間、積み立てのように投資信託を買い増し、運用を続けていくことになりますが、お盆明けの8月17日に発表された「2020年4-6月期GDP成長率(年率換算)」を見て、これからこの国はどうなるだろうかと少なからず思った方は多いと思います。
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

四半期ごとの実質GDPの推移

GDP(国内総生産)成長率は資産運用をする上で非常に重要な経済指標です。
GDPは日本国内で生み出された付加価値の総額ですが、テレビのニュース番組や新聞では、四半期ごとのGDP成長率を年率換算した値が速報値として私たちに知らされます。
 
「2020年4-6月期のGDP成長率を年率に換算した値は、前期比で▲27.8%の落ち込みとなりました」
この内容を聞いて私たちは「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で日本経済がものすごく落ち込んだようだ」と受け止めますが、年率換算値は四半期ごとのGDP成長率を1年間に引き直した値であるため、必ずしも1年後の値がこうなるという意味ではありません。
 
下のグラフは四半期別の実質GDP成長率(前期比・季節調整済)の推移ですが、2020年4-6月期における実質GDP成長率(1次速報値)は前期比▲7.8%であるため、これぐらいの水準で1年が経過するとおおむね▲27.8%になるだろうという程度で受け止めるようにしましょう。
 
〇四半期別実質GDP成長率(前期比)

※内閣府 「統計表一覧(2020年4-6月期1次速報値)」より筆者作成
 
報道によると、2020年4-6月期の実質GDP成長率の落ち込みは戦後最大とのことですが、過去を振り返ると、リーマンショック時の2009年1-3月期実質GDP成長率が前期比▲4.8%、東日本大震災時の2011年1-3月期が前期比▲1.4%、消費税率を5%から8%に引き上げた2014年4-6月期が前期比▲1.9%、そして、消費税率を8%から10%に引き上げた2019年10-12月期が前期比▲1.8%と、それらと比べても大幅な落ち込みとなっており、その衝撃がいかに大きかったかが分かります。
 

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年度ごとの実質GDPの推移

民間のエコノミストによると、次の四半期である2020年7-9月期においてはプラス回復が予測されています。
 
緊急事態宣言を解除した後の経済状況が反映されてくるため、2020年4-6月期と比べると元に戻ると考えられますが、年度単位で見た場合、実際にどのような値になるかが気になるところです。
 
下のグラフは年度ごとの実質GDP成長率の推移ですが、消費税率を8%から10%に引き上げた2019年度においてはゼロパーセント成長でした。
 
消費税率を5%から8%に引き上げた2014年度では前年度比▲0.4%成長、東日本大震災のあった2011年度は前年度比0.5%、そして、リーマンショックのあった2008年度は前年度比▲3.4%となっています。
 
四半期ベースでは、リーマンショック時の2008年1-3月期実質GDP成長率が前期比▲4.8%、2020年4-6月期における実質GDP成長率が前期比▲7.8%であることを考えると、2020年度は結果としてリーマンショックのあった2008年よりも低い数値で終えるだろうと推測できます。
 
〇年度別実質GDP成長率(前年度比)

※内閣府 「統計表一覧(2020年4-6月期1次速報値)」より筆者作成
 

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まとめ

GDPの成長率は四半期ごとや年度ごとの値をつぶさに見ることも重要ですが、私たちにとってより重要なのは、老後までの間の長期に亘り、この国の経済成長がどのように推移していくかということです。
 
1995年度からさかのぼっても、実質GDPの成長率は毎年度、ほんの数パーセント程度しか成長していません。1995年度からのデータを見ると、傾向としておおむね毎年度1%程度の成長といっても過言ではないでしょう。
 
老後の年金を準備するために確定拠出年金制度やつみたてNISAなどを活用し、国内の株式型投資信託で運用している方も多いと思いますが、長期に亘る資産運用を行う上で参考になるのがGDP(国内総生産)成長率です。
 
過去のデータをさかのぼり、傾向を探ることで、「なぜ、日本経済はこのような低成長に陥っているか」、また、「なぜ、このような状況からなかなか抜け出せないのか」、「低成長から抜け出すために必要なことは何か」、そして「なぜ、実体経済が低成長にもかかわらず、株式市場は活況を呈するのか」などについて自分なりに探ることも資産運用の面白さの1つといえます。
 
資産運用は時代を映し出す鏡でもあります。
 
どちらかというと、私たちは老後のお金を貯めるなどの理由から「いくらもうかっているか」といった「お金のこと」に目が行きがちですが、資産運用は世界の出来事や日本国内の出来事に目を向けさせるツールでもあります。GDP成長率といった指標からでもいろいろなことを読み取ることができるため、マネーリテラシーを磨くきっかけにしていただければ幸いです。
 
出典 内閣府 「統計表一覧(2020年4-6月期1次速報値)」
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)


 

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