更新日: 2020.06.28 キャリア
自分の会社でもテレワークをしてみよう。「IT導入補助金」とは?
以前から国は「IT導入補助金」という制度を用意し、ITやICTを活用する企業をサポートしてきました。
そして今、以前からあるIT導入補助金の中に「特別枠」を設け、テレワーク環境の整備などを積極的にバックアップしようとしています。
※この記事は、令和元年5月18日までの情報を基に執筆しています。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
IT導入補助金の概要
「IT導入補助金」は、経済産業省がかねてから実施している生産性革命推進事業(ものづくり・商業・サービス補助、小規模事業者持続化補助、IT導入補助)の補助金制度の1つです。経済産業省によると、IT導入補助金の目的は次のように説明されています。
「中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイスの導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が生産性向上に資するITツール(ソフトウエア、サービス等)を導入するための事業費等の経費の一部を補助等することにより、中小企業・小規模事業者等の生産性向上を図ることを目的とする。」
要するに、中小企業や個人事業主の生産性を向上させることが目的ですが、企業がITツールを導入することで業務の効率化を図り、今後実施される制度変更にも対応しやすくなるよう支援することが狙いです。
小規模事業者持続化補助金との大きな違いは、ITを活用することに対してのサポートという点です。
同じくITといっても、例えば会社のホームページを作成した場合、小規模持続化補助金では作成にかかった経費の一部が補助されますが、これは会社にとっては単なる販路拡大・売上向上が目的であるため、いわば広告宣伝費です。
一方、IT導入補助金では、ホームページ作成にかかった経費の一部を補助するのではなく、例えば飲食店の場合、24時間受付可能なウェブ予約システムを導入したり、お客さんがスマホを使ってメニューから注文できるといった「仕組みづくり」に対してかかった経費の一部が補助されるという違いがあります。
このため、IT導入補助金について検討する場合、ポイントになるのが「ITツールとはなんぞや」ということになります。
IT導入補助金で認められる経費
「IT導入補助金2020」の公募要領を見ると、ITツールとは「ソフトウエア」(大分類I)、「ソフトウエア(オプション)」(大分類II)、「役務(付帯サービス)」(大分類III)の3つとされおり、それぞれがさらに小分類に細かく分けられています。
※出典 一般社団法人サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金2020」 公募要領より
大分類Iの「ソフトウェア」は、小分類を見ると(1)顧客対応・販売支援、(2)決済・債券債務・資金回収管理、(3)調達・供給・在庫・物流、(4)業務固有プロセス、(5)会計・財務・資産・経営、(6)総務・人事・給与・労務・教育訓練の6つの「業務プロセス」に分けられています。
要するに(1)~(6)のソフトウェアを活用することで、それぞれの業務について生産性を向上させるというのが目的です。
大分類IIは「ソフトウェア」の中でも「オプション」とされるツールで、自動化・分析ツール、汎用ツール、機能拡張、データ連携ツール、セキュリティーの5つがこれに該当します。ソフトウェアにこのような機能がある場合も経費の一部が対象になるという意味です。
大分類IIIは「役務(付帯サービス)」ですが、簡単にいうと専門家などからサポートを受けた場合の経費の一部が補助として認められます。
導入コンサルティングや導入設定・マニュアル作成・導入研修、保守サポートとありますが、ITツールの専門家が行っている相談業務などにかかる経費の一部が対象となります。
申請のパターンは原則2種類
IT導入補助金の申請方法は、原則として「A類型」と「B類型」に分かれています。
〔A類型〕
・必ず1つ以上の業務プロセスを保有するITツールを申請すること
・上記を満たしていることを要件として、「オプション」、「役務」に係る各経費も補助対象となる
・補助額は30万円以上、150万円未満とする
・事業実施効果報告は、2022年から2024年までの3回とする
A類型では、6つの業務プロセス(大分類I)のうち1つ以上が実現できるITツールであることが要件です。これを満たしていれば、オプションや役務についての経費の一部も対象となります。
補助額は30万円以上、150万円未満となっていますが、IT導入補助金では補助率が2分の1であるため、実際にかかる経費としては60万円以上、300万円未満と想定することができます。
〔B類型〕
・必ず4つ以上の業務プロセスを保有するITツールを申請すること
・上記を満たしていることを要件として、「オプション」、「役務」に係る各経費も補助対象となる
・補助額は150万円以上、450万円以下とする
・事業実施効果報告は、2022年から2024年までの3回とする
A類型との違いはITツールの業務プロセスの数が4つ以上となっている点です。補助額ですが、こちらも補助率が2分の1のため、実際にかかる経費としては300万円以上、900万円以下と想定できます。
ITツールを使ってできることが少なければA類型、できることが多ければB類型と考えてください。
コロナ特別枠(C類型)とは
前述したA類型・B類型は以前からある通常枠としてのIT導入補助金ですが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、特別枠として「C類型」が加えられました。
C類型の特徴は、通常枠(A類型・B類型)では補助の対象にならない「ハードウエアのレンタル費用」についても役務(付帯サービス)の1つとして認められるという点です。 ただし対象となる事業者は、補助対象経費の6分の1以上が次のいずれかの要件に合致する事業である必要があります。
・サプライチェーンの毀損(きそん)への対応
・非対面型ビジネスモデルへの転換
・テレワーク環境の整備
C類型では、例えば会社でテレワークを始めるにあたってパソコンやタブレットをレンタルした場合、このレンタル費用も経費の一部として補助されます。補助率が2分の1から3分の2に引き上げられているのも特徴の1つといえます。
申請の流れ
申請の流れとしては、次のようなイメージです。
※出典 一般社団法人サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金2020」 公募要領より
大まかな流れとしては、事業者がIT導入支援事業者に相談し、導入の依頼後、IT導入支援事業の事務局に申請できるようになっています。
申請の期間は2020年5月11日から2020年12月下旬までとなっていますが、特別枠では2020年4月7日以降に行ったITツールの導入に対してさかのぼって申請することができます。
詳細については、「IT導入補助金2020」の公募要領にてご確認ください。
まとめ
冒頭で述べた生産性革命推進事業は、アベノミクスが始まって以降の取り組みです。そのうち、IT導入補助金が最も歴史が浅く、ようやく中小企業や個人事業主にまでIT化の波が届いてきたという印象を持っています。
特に国は、2020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックに向け、数年前からインバウンド需要の拡大やキャッシュレス化を積極的に推進し、地域経済の活性化を企図して中小企業・個人事業主のIT化をサポートしてきました。
おそらく今後もこのような取り組みに対しての支援は継続されると思いますが、補助事業であるため単年度事業が原則です。
事業者としては、業務のIT化が自社の生産性向上に本当に結び付くのかといった疑問を持つことと思いますが、仮にITの導入を検討する場合は、このような制度もあるので積極的に活用するようにしましょう。
出典
一般社団法人サービスデザイン推進協議会 「IT導入補助金2020」
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)