夫が生活費を入れてくれない…「経済的DV」を受けたら、どう対処すればいいの?
配信日: 2021.04.02 更新日: 2024.10.10
このような「経済的DV」を受けている場合、誰に相談し、どのように対処すべきでしょうか。
執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
生活費を入れない理由は? 話し合いはできる? できない?
今まで生活費を入れてくれていた夫が、入れてくれなくなったのはなぜでしょうか? 知らず知らずのうちに、夫婦関係のボタンの掛け違いが起きている可能性があります。もしも今まで話し合う機会がなかったのであれば、お互い時間をつくり、なぜ生活費を入れてくれないのか話し合いを持ちましょう。
話し合いの際、家計簿などをみせ、毎月どのくらい生活費がかかっているか説明し、具体的に必要な生活費を提示し理解してもらうことも必要です。
例えば、「子どもが生まれて夫婦関係が親子中心になり、疎外感を覚えてしまった」「親の介護のため、日常生活で夫婦の会話がとれなくなり反抗的になってしまった」など、あることが原因で自分の好きなことに費やしてしまったのであれば、今後の夫婦生活を見直すことで、解決することができるでしょう。
しかし、自分のために使う理由が、「ギャンブル」「浮気」「私利私欲の自己中心的な理由」など、悪意的な理由があれば夫婦生活の危機的状況を認識してもらう必要があります。話し合いをしてもなお、夫が生活費を入れないのであれば、第三者に仲介に入ってもらい、解決への糸口を見つけることが必要です。
専門家に相談する
話し合いができない、もしくは話し合いが決別した場合、第三者の人に入ってもらい、中立な立場の方に相談しましょう。2人で話し合うことは、時に感情的になってしまったり、真実をいえない状況であったりします。
家族、友人など、中立の立場でお互いの話を聞いてくれる人がいるでしょうか。お互い共通の友人がいれば話を聞いてもらうことも一案だと思いますが、中立ということを考えると、専門家や公的機関などにお願いすることがスムーズに進むかもしれません。
家庭裁判所で調停というのはハードルが高いと思うなら、都道府県や市区町村に女性センター(都道府県、市区町村によって名称が違います)があるので、一度相談してみることをお勧めします。
女性センターとは 都道府県、市町村等が自主的に設置している女性のための総合施設です。「女性センター」「男女共同参画センター」など名称はさまざまです。女性センターでは「女性問題の解決」「女性の地位向上」「女性の社会参画」を目的とし、女性が抱える問題全般の情報提供、相談、研究などを実施しています。
悪意のある経済的DVである場合
悪意的な経済的DVであった場合、家庭裁判所にて婚姻費用分担調停の申し立てをし、冷静に話し合いを進めることができるかもしれません。調停では、調停委員が夫婦別々に話を聞いてくれます。
夫が生活費を入れてくれれば婚姻関係を続けられるのか、もしくは離婚を前提に話し合うのかによっても進め方が変わってきます。最終的に調停が成立すれば、結果、婚姻関係の継続または離婚となるか分かりませんが、今後の生活設計へと舵をとり前に進むことができますが、調停が不成立に終わり進展がなかった場合、審判へと進むことになります。
経済的DVだけでないことも
経済的DVに限らず、DVをする側の人は、本人に悪意的な自覚がない場合が多いです。その場合、DVを受けている相手が第三者に相談したり、調停を申し立てたりすることで、さらに関係が悪化することもあります。まずは話し合いを求め、夫婦で解決できるよう努力をしてから、次の段階へと進めていくことをお勧めします。
DVは1つに限らず、経済的DVプラス精神的、身体的暴力など、複数のDVが絡んでいるケースもあります。
まとめ
「家庭裁判所における家事事件の概況及び実情並びに人事訴訟事件の概況等」によると、婚姻費用分担事件は増加傾向にあります。婚姻費用分担事件の新受件数(審判+調停)は、2007年には1万2512件でしたが、2016年には2万4728件となっています。
子どもがいる家庭においては、経済的DVは子どもの貧困につながり、子どもの健やかな成長の妨げです。
夫婦の一方が働く場合、または共働き夫婦の場合のどちらであっても、婚姻費用(生活費)は夫婦で分担する義務が法律で定められています。夫婦2人で築いた財産であることを夫に理解してもらいましょう。
話し合いがまとまらない、夫の理解が得られない場合、貯金を取り崩す前に、なるべく早期に相談するなど、解決することを第一に考え、第三者(専門家)や公的機関に相談するなど、我慢し過ぎないようにしてください。
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、三藤FP社会保険労務士事務所 代表、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士