【実際の判例で解説!】勤務先に無許可の副業でも就業規則違反じゃない? 就業規則の方が違法?

配信日: 2022.06.28 更新日: 2024.10.10

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【実際の判例で解説!】勤務先に無許可の副業でも就業規則違反じゃない? 就業規則の方が違法?
「収入アップのため副業をやりたいけど就業規則で禁止されている」こういった悩みを持っている方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。このような方に向けた、嬉しい裁判例があります。
 
それは、「地位確認等請求事件(通称:東京都私立大学教授懲戒解雇)」です。この判決によれば、勤務先に無許可で副業を行っても次の2つの条件をみたせば就業規則に違反しない可能性が高いのです。
 
1.職場秩序に影響を与えない
2.業務に支障をきたさない 
 
本記事ではこの判例と、勤務先に無許可で副業を行う場合の注意点について詳しく解説します。
桜井鉄郎

執筆者:桜井鉄郎(さくらい てつろう)

1級ファイナンシャルプランニング技能士 宅地建物取引士

地位確認等請求事件とはどんな事件か?

 

事実関係

・大学教授が勤務する学校法人に無許可で土曜日や夜間に語学学校の講師を務めたり、語学講座を開いたりしていた。
 
・このことが就業規則で定める無許可兼職の禁止違反の懲戒事由に該当するということで、学校法人から懲戒解雇を通告された。
 
・大学教授は解雇は無効であると主張し、大学法人に対し訴えを起こした。
 

判決

本件懲戒は無効
 

判決理由

(以下 判決文抜粋)
 
・学校法人の就業規則では無許可兼職を懲戒事由としているが、就業規則は使用者がその事業活動を円滑に遂行するに必要な限りでの規律と秩序を根拠づけるにすぎず、労働者の私生活に対する使用者の一般的支配までを生ぜしめるものではない。
 
・兼職(二重就職)は、本来は使用者の労働契約上の権限の及び得ない労働者の私生活における行為であるから、兼業(二重就職)許可制に形式的には違反する場合であっても、職場秩序に影響せず、かつ使用者に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の二重就職については、兼業(二重就職)を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しないものと解するのが相当である。
 
・学校法人は、大学教授が語学学校の講師をしたことや土曜教室を営んだことを無許可の兼職または事業にあたると主張するが、大学教授がこれらを実施したのはいずれも夜間ないし土曜日と認められるのであり、大学教授が行うべき授業等の労務提供に支障が生じたとも認めることはできない。また大学教授がこれらを実施したことによって、職場秩序に影響が生じたとも認めることはできない。
 

副業を行う際の注意点

解説してきたように勤務先に無許可で副業を始めても、以下の2つの条件を満たせば就業規則に違反しない可能性が高いでしょう。

1.職場秩序に影響を与えない

2.業務に支障をきたさない

 
ただしこれらに加え、以下のことにも注意してください。

・勤務先の秘密を漏らさない
・勤務先の名誉、信用を傷つけない
・勤務先との信頼関係を破壊しない
・競業により勤務先の利益を害しない

これらに抵触すると解雇または損害賠償を請求されることもあり得ます。
 

まとめ

2021年4月厚生労働省は、モデル就業規則68条第1項で「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」と定めました。「副業は原則自由」と国が宣言したとみていいでしょう。
 
しかし、現状は副業禁止としている会社も多くあります。このような環境下で副業を行うには、上記に抵触しないよう自分を守る必要があります。場合によっては労働問題専門の弁護士、労働基準監督署に相談することをおすすめします。
 

出典

裁判所 裁判例結果詳細
裁判所 最高裁判所判例集 地位確認等請求事件
厚生労働省 モデル就業規則
厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン
 
執筆者:桜井鉄郎
1級ファイナンシャルプランニング技能士 宅地建物取引士

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