更新日: 2024.10.10 働き方
社会保険料の計算の基になる「標準報酬月額」。安く抑えるための方法って?
今回は、社会保険料を安くする方法について解説します。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、厚生年金保険料や健康保険料など、社会保険料を算定する際の基礎となる金額のことです。標準報酬月額は、毎月の給与の金額と必ずしも連動しているわけではありません。
基本的に、残業手当や通勤手当などを含めた4~6月の3ヶ月間に支払われた給与(報酬月額)の平均額を、1等級から32等級の標準報酬月額に当てはめて決定されます。
参考までに上記3ヶ月間の給与の平均が25万円という場合、報酬月額は25万円以上27万円未満で、該当する標準報酬月額は17等級の26万円、毎月の厚生年金保険料は2万3790円となります。
社会保険料を抑えることのリスク
社会保険料が高いのは家計にとってマイナスになると、毎月の負担額だけで考えるのは早計です。将来受け取れる厚生年金、けがや病気で働けなくなった際に健康保険から支給される傷病手当金などの金額は、おおむね支払っている社会保険料に比例します。
そのため社会保険料が安くなると、その分、将来の年金や万が一のときの保障など、社会保険の給付も減るということには注意をしておくべきです。
こうした点を踏まえると、社会保険料をなるべく安くする場合、資産運用や貯蓄など、自身での将来への備えも同時に並行して行うべきだといえます。
社会保険料を安く抑えるには
厚生年金保険料や健康保険料といった社会保険料をできるだけ安くするには、4~6月の給与を低くして、標準報酬月額の等級を下げる必要があります。具体的には以下のような方法で、無理なくできる範囲で検討していくことになります。
4~6月の給与が低くなるように残業を減らす
業務の繁忙期のほか、残業の調整が労働者主導で可能かなど、勤務先との兼ね合いもありますが、4~6月分の平均給与について、該当する標準報酬月額が1等級分でも低くなるように働き方を調整してみてください。
3ヶ月分の給与は少なくなってしまいますが、その後1年間の社会保険料が安くなるため、トータルでは家計の可処分所得が増加することが期待できます。
会社の近くへ引っ越したり、近くの会社に転職する
通勤手当は一定額まで非課税ですが、社会保険料を算定する際の給与総額には含まれます。
会社から支給されている通勤手当が多い場合は、例えば会社の近くに引っ越したり、近くの会社に転職したりと、勤務地が自宅から近くなって通勤手当が少なくなることで標準報酬月額の等級が下がり、社会保険料の負担が減る場合もあります。
副業に注力する
会社員として勤務先から支給される給与が増えれば、社会保険料も増額していきます。しかし、副業として給与収入以外で稼いだ分は、社会保険料の算定の基礎となる収入には当たりません。
副業についての規定などにもよりますが、社会保険料を抑えるという観点だけで考えると、勤務先ではなるべく残業せずに効率よく働き、副業によって残業分やそれ以上の収入を得ることで、収入全体に占める社会保険料の支出の割合を減らすことができます。
会社員の社会保険料は条件次第で抑えることができる
会社員の方の社会保険料の負担は抑えることができないと思われがちですが、標準報酬月額の等級を下げることで社会保険料は減らせます。
しかし、社会保険料を抑えることを主眼に置いてしまうと、将来の厚生年金の給付が減るなどデメリットが多く、結果的に後悔することもあるでしょう。社会保険料の負担を減らしたいと思う場合、社会保険の給付の内容も理解しておくことが重要です。
出典
日本年金機構 標準報酬月額は、いつどのように決まるのですか。
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和4年度版)
執筆者:柘植輝
行政書士