「退職は月末がよい」って本当? 退職する日にちの違いで社会保険料はどう変わる?
配信日: 2023.03.30 更新日: 2024.10.10
今回は、退職を月末にした場合と月末1日前にした場合のメリット・デメリットについて解説してみます。
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執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
社会保険料の支払い発生について
月末に退職した場合の社会保険料について見てみましょう。
例えば、1月31日に退職した場合には、被保険者としての資格喪失日は翌日、つまり2月1日です。この場合には、資格を保有している1月分の社会保険料を支払う必要があり、退職する会社から支給される給与から天引きをされます。
一方で、月末の1日前に退職した場合には、被保険者としての資格の喪失日は、翌日の1月31日となり、1月中に資格を喪失しています。そのため、1月分の社会保険料を支払う必要がなく、給与から天引きされません。
この事実からすると、月末に退職するよりも、月末の1日前に退職したほうが、ひと月分の社会保険料が得になり、給与がその分増えることになります。したがって、月末の1日前に退職したほうが得のように思えます。
しかし、退職後に未払い月の社会保険料を支払う必要があり、損得については、その本人の退職後の社会保険の加入状況によって変わってきます。
以下、詳しくみてみましょう。
退職後の社会保険加入状況
月末に退職したほうが得なのか、月末の1日前に退職したほうが得かをみるために、退職後の本人の社会保険の加入方法の違いについて確認してみましょう。
ここで社会保険とは、厚生年金保険と健康保険をさしています。
(1)厚生年金保険
会社員であれば、厚生年金保険に加入していますが、退職した場合には、次の2つの選択肢があります。
1. 国民年金に入る
2. 配偶者の扶養に入る(第三号被保険者)
(2)健康保険
会社を退職した場合には、次の3つの選択肢があります。
1. 国民健康保険に加入する
2. 家族の扶養に入る
3. 健康保険を任意継続する
月末退職が得か? 月末の1日前退職が得か?
すでにみてきたように、月末の1日前に退職した場合には、その月の社会保険料を支払わずに済むので一見、得をしたようにみえますが、実は翌月に社会保険料を支払う必要があります。
会社に所属している場合には、社会保険料は会社と折半になりますが、退職した場合には、自分で全額を支払うことになります。
退職して、国民年金、国民健康保険に加入する人は、その保険料と会社が折半していた厚生年金保険料、健康保険料とを比較して、どちらが得になるかを判断することになります。
したがって、退職前にどちらの保険料が高いかを確認し、会社に支払う社会保険料が高い場合には、月末の1日前に退職したほうが得ですし、逆の場合には、月末退職が得になります。
ただし、月末の1日前に退職した場合に、厚生年金の積み上げが1ヶ月少なくなるので、将来の年金が減少するデメリットも考慮する必要があります。
なお、退職後、配偶者や家族の扶養になった場合には、月末退職よりも、月末の1日前に退職した場合のほうが、自分の負担が軽くできるメリットはあります。
また、健康保険は退職後も加入する必要がありますが、退職し、任意継続をする場合には、今まで会社が半分負担していた分を自分で全額負担することになるので、月末退職をして会社で払ってもらったほうが得になります。
以上のように、退職日の違いの損得については、本人が退職後にどのような社会保険制度を選択するかによって変わってきますので、退職前によく検討するとよいでしょう。
出典
日本年金機構 退職した従業員の保険料の徴収
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー