更新日: 2023.04.17 働き方

「計画年休で、あなたの有休はもうありません」と上司に言われたら「違法」? 有給休暇の違法行為について解説

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

「計画年休で、あなたの有休はもうありません」と上司に言われたら「違法」? 有給休暇の違法行為について解説
「計画年休で利用したから、あなたの有給休暇はもうありません」「忙しいから有給休暇をあなたは取れません」このような言葉を企業側から言われたことはありませんか? もし言われていた場合、企業による違法行為の可能性があります。有給休暇は労働者の権利です。
 
本記事では、有給休暇に関する違法行為について詳しく解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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有給休暇は法律で定められている

有給休暇は労働基準法第39条によって業種、業態にかかわらず、また正社員やパートタイム、アルバイト、派遣社員など労働者の区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければならないと定められています。労働基準法を下回るルールを企業が独自に設けた場合には処罰の対象となります。
 

有給休暇に関する違法行為とは?


 
有給休暇に関する違法行為にはどのようなものがあるのでしょうか? それぞれ詳しく解説します。
 

要件を満たしているのに有給休暇が付与されないのは違法

年次有給休暇の最低日数は法律で決められています。図表1のとおり有給休暇は入社から半年経過すると10日付与され、その後毎年1日または2日ずつ増加します。6年半で合計20日付与され、その後は毎年20日ずつ付与されます。
 
ただし、あくまでも労働基準法で定めている最低日数となるため、図表1より多く有給休暇を付与しても問題ありません。例えば企業によっては、1年目から20日付与することも可能です。有給休暇の発生要件は雇用された日から6ヶ月継続勤務していることに加え、全労働日の8割以上出勤していることです。
 
図表1


 
厚生労働省 年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
 
継続勤務とは事業が行われている場所における在籍期間です。具体的には定年退職者を嘱託社員として再雇用した場合などは、継続勤務として扱われます。しかし継続勤務の例外として、以下が挙げられます。

●業務上のけがや病気で休んでいる期間、育児休業や介護休業を取得した期間などは、出勤したものとみなして取り扱われる
●会社都合の休業期間などは原則として、全労働日から除外される

このように要件を満たしている場合には、必ず有給休暇が付与されます。反対に要件を満たしているにもかかわらず、有給休暇が付与されない場合は違法です。
 

有給休暇の拒否は違法

有給休暇は労働者の権利であり、企業側に拒否する権利はありません。とはいえ、有給申請した際に企業側に人手不足などの事情がある場合には、企業側が時季変更の依頼をすることは可能です。しかし、あくまでも時季変更の「依頼」となるため、労働者が有給休暇を取得したい場合、企業側は労働者の意思を拒否できません。
 
また企業側は年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対しては、有給休暇の日数のうち年5日について労働者の意見を尊重した上で、有給休暇を指定して取得させる必要があります。
10日以上の有給休暇がある人は1年のうち5日は有給休暇を消化しなければならない点も確認しておきましょう。
 

有給休暇が1年で消滅は違法

有給休暇の時効は、労働基準法第115条によって発生の日から2年間と定められています。企業から「有給休暇の付与から1年が経過したから期限切れ」と伝えられた場合は違法です。
 

計画年休で有給休暇が全てなくなるのは違法

計画年休とは労使協定を結ぶことで、企業側が労働者の有給休暇取得日をあらかじめ決められる制度です。計画年休は、以下のようなさまざまな時季に活用されています。

●夏季、年末年始に有給休暇を計画的に付与し、大型連休にする
●誕生日や結婚記念日などのメモリアル休暇制度を設けている
●閑散期に有給休暇の計画付与日を設けている

企業側が計画年休の制度の対象にできる日数は、有給休暇のうち5日を超える部分となります。例えば、有給休暇が10日の労働者は5日まで、20日の労働者は15日まで、企業が計画的に休暇を付与できるということです。なお、計画年休の付与方法は労働基準法第39条第6項によって定められています。
 
図表2


 
厚生労働省 新しい働き方・休み方を実践するために、年次有給休暇を上手に活用しましょう
 
このように企業側が計画年休によって有給休暇取得日を決めていたとしても、労働者は5日間の有給休暇が残るため、計画年休で有給休暇が全てなくなることはありません。
 

まとめ

有給休暇は労働基準法によって付与の条件や方法が定められており、企業が同法を下回る規定を設けている場合には違法となります。企業や同僚への配慮も大切ですが、有給休暇の取得は労働者の権利です。
 
取得させてもらえないときには、可能であれば企業側と話し合いをしましょう。話し合っても理解が得られない場合や、不利益な扱いを受けた場合には、都道府県労働局や労働基準監督署の労働相談コーナーなどへ相談しましょう。
 

出典

厚生労働省熊本労働局 年次有給休暇活用のススメ
厚生労働省 4.年次有給休暇の計画的付与について【労働基準法第39条関係】
厚生労働省 年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
厚生労働省 新しい働き方・休み方を実践するために、年次有給休暇を上手に活用しましょう
茨城労働局 就労中の方へ
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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