更新日: 2024.10.10 働き方
【過労死ラインは月80時間?】基準と脳・心疾患の関連性を解説
一方、過剰な残業や長時間労働は心身の疾患や過労死のリスクを高める可能性があるとも言われ、脳梗塞などの脳血管疾患、心筋梗塞などの心疾患は、疾患発症の基礎となる血管病変等が仕事が主な原因で発症する場合もあります。
本記事では長時間労働と疾病の問題と労災認定基準の具体的な要件について解説しています。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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脳・心臓疾患の認定基準とは?
脳・心臓疾患を労災認定する認定基準は、基本的な「考え方・対象疾病・認定要件」を示し判断されたものです。では、それぞれの項目について解説します。
1.基本的な考え方
脳・心臓疾患の発症の原因となる動脈硬化や動脈瘤などの血管病変等が、仕事が特に過重であったことで著しく悪化した結果、脳・心臓疾患が発症した場合に労災補償の対象となります。
2.対象疾病
脳・心臓疾患の認定基準の対象疾病は、図表1のとおりです。
図表1
脳血管疾患 | 虚血性心疾患等 |
---|---|
脳内出血(脳出血) くも膜下出血 脳梗塞 高血圧性脳症 |
心筋梗塞 狭心症 心停止(心臓性突然死を含む) 重篤な心不全 大動脈解離 |
厚生労働省 脳・心臓疾患の労災認定を基に作成
3.認定要件
長期間の過重業務・短期間の過重業務・異常な出来事、以上3つのいずれかの業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、『業務上の疾病』として取り扱われます。
業務による明らかな過重負荷とは?
「業務による明らかな」とは、仕事が発症の主原因というのが明確なことをいいます。また、「過重負荷」とは医学的経験則的に脳・心臓疾患の発症の原因となりえる血管病変等を、自然経過を超えて顕著に増悪させることが客観的に認められる負荷をいいます。
認定要件の具体的な判断とは?
認定要件の具体的な判断は、長期間の過重業務・短期間の過重業務・異常な出来事の3つの側面から見ていきます。
1.長期間の過重業務
定義:発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと。
●発症前の長期間とは発症前おおむね6ヶ月間です
●著しい疲労とは発症前の一定期間の就労実態等を考察し、発症時における疲労の蓄積程度の観点から判断します
●特に過重な業務とは、日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務です
■労働時間
疲労蓄積の重要な要因と考えられる労働時間については、発症日を起点とした1ヶ月単位の連続した期間について以下の場合に業務と発症との関連性が強いとされます。
●発症前1ヶ月間におおむね100時間又は発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間※にわたって、1ヶ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合
※発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間は、発症前2ヶ月間、発症前3ヶ月間、発症前4ヶ月間、発症前5ヶ月間、発症前6ヶ月間のいずれかの期間をいいます。
2.短期間の過重業務
定義:発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと。
●「発症に近接した時期」とは発症前おおむね1週間です。
●過重負荷の有無は、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同種労働者にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められる業務であるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断します。
3.異常な出来事
定義:発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的および場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと。
異常な出来事とは、以下のようなことをいいます。
●「精神的負荷」とは、極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす事態
●「身体的負荷」とは、急激で著しい身体的負荷を強いられる事態
●「作業環境の変化」とは、急激で顕著な作業環境の変化
まとめ
脳・心臓疾患の対象疾病、認定基準や業務と発症との時間的関連性等について説明してきました。ご自身やご家族が業務上の過重負荷による発症の疑いがある状況に直面したら、具体的な認定基準に該当するか詳細に確認するようにしましょう。
労災認定されれば労災保険によって、療養補償や休業補償、障害補償等の保障が受けられ、当事者の経済的負担は大きく緩和されることになります。労災補償について詳しい情報が必要な際は最寄りの都道府県労働局又は労働基準監督署まで問い合わせましょう。
出典
厚生労働省 脳・心臓疾患の労災認定 過労死等の労災補償I
厚生労働省 働き方改革 ~一億総活躍社会の実現に向けて~
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー