更新日: 2023.10.04 働き方

「産休前に全部使ったでしょ?」育休復帰時に有給は「0日」だと言われました。これって違法ではないですか? 子どもの体調不良もあるので、有給がないと困ります…

執筆者 : 平原あかり

「産休前に全部使ったでしょ?」育休復帰時に有給は「0日」だと言われました。これって違法ではないですか? 子どもの体調不良もあるので、有給がないと困ります…
育休復帰後の大きな悩みの1つが、子どもの発熱や体調不良による急な欠勤ではないでしょうか。
 
子どもの体調不良で欠勤する場合は有給休暇を使用する人が大半かと思いますが、中には会社から「有給は産休前に全部使い切っており残っていないですよ」と言われた人もいるようです。
 
しかし有給休暇は育休中にも付与されるため、育休復帰時にはほとんどの人が有給休暇を保有しているはずです。本記事では育休復帰時の有給について、具体例も交えて解説します。
平原あかり

執筆者:平原あかり(ひらはら あかり)

社会保険労務士・FP2級

育休中も勤続年数に応じて有給休暇が付与される

産休・育休中にも、実際に勤務しているときと同様に、勤続年数に応じて毎年有給休暇が付与されます。
 
有給休暇の付与条件は「6ヶ月間継続勤務し、かつ、全労働日の8割以上出勤すること」ですが、産休・育休の期間中は出勤していたものとみなされます。
 
妊娠中の体調不良や産休の前倒しなどで産休前に有給休暇をすべて使い切るというケースは多く見られますが、復帰時には育休中に付与された有給休暇を保有していることになります。
 

有給休暇は年に何日付与される?

有給休暇の付与日数は、産休に入る前の週の所定労働日数と勤続年数によって決まります。
 
正社員と、週の所定労働日数が5日以上かつ週の所定労働時間が30時間以上のパートタイム労働者の有給付与日数は、図表1のとおりです。
 
【図表1】


厚生労働省 労働基準関係リーフレット 年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
 
また、週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満のパートタイム労働者は、所定労働日数に応じて図表2のとおりに付与されます。
 
【図表2】

厚生労働省 労働基準関係リーフレット 年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
 

約4年半働いたのち育休に入って復帰した場合は?

具体的に、以下の条件で有給休暇の日数を試算してみましょう。

・2016年4月1日に正社員として入社
・2020年9月1日から産休・育休に入った
・産休に入る前に有給休暇はすべて使い切った
・2022年4月1日に復帰した

上記のような場合、復帰時に保有している有給休暇は何日になるのでしょうか?
 
4月1日に入社した場合、法律で定められた有給の付与日は入社半年後の10月1日です。
 
2020年9月に産休に入る前に有給を使い切っていたとしても、その後の2020年10月1日に16日(勤続年数4.5年のため)、2021年10月1日に18日(勤続年数5.5年のため)の有給休暇が付与されるため、復帰時の2022年4月には合わせて34日の有給休暇を保有していることになります。
 

有給休暇を取らせないと言われたら?

有給休暇の取得は労働者の権利であり、合理的な理由がある場合の時期変更は認められていますが、会社は有給休暇の取得を拒むことはできません。会社が有給休暇の取得を合理的な理由もなく拒否すると、労働基準法第39条違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります(労基法119条)。
 
また2019年4月以降は、すべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、少なくとも年5日は取得させることが義務付けられています。
 
「産休前に全部使ったから有給は取らせない」と言われた場合、まずは上記の内容を会社の担当者に伝え、対応してもらえない場合は監督署に相談するのも1つの方法です。
 

出典

厚生労働省 年次次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
 
執筆者:平原あかり
社会保険労務士・FP2級

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