更新日: 2024.10.10 働き方
看護師ですが、師長に妊娠を報告したら「育休を取るなら、復帰後は夜勤をすると念書を書くのが条件ね」と言われました…本当に書く必要があるのでしょうか? 違法なのではないですか?
これは実際に、看護師の知人に聞いた話です。
産休・育休について会社の都合で取得を拒否することはできず、また取得に伴い従業員に条件を付けるなど不利益な扱いをすることもできませんが、会社や上司に認識の誤りがあるケースもいまだに存在します。
本記事では、本来の産休・育休を取得するための条件、産休・育休の取得の際に会社から嫌がらせを受けた際の対処法を解説します。
執筆者:平原あかり(ひらはら あかり)
社会保険労務士・FP2級
目次
産休・育休の取得条件は?
産休の取得に条件はありません。雇用形態(正社員・パート等)や勤続年数に関係なく取得可能です。
また、産後休業については労働基準法において「産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない」と定められています。ただし、産後6週間経った女性が請求した場合、医師が支障ないと認めた業務であれば就業することができます。
育休には一定の取得条件があり、条件を満たしている場合のみ取得できます。育休を取得するための条件は以下の通りです。
・有期雇用労働者の場合、子が1歳6ヶ月に達する日までに契約が満了することが明らかでないこと
・日々雇い入れられる者でないこと
・労使協定の締結により取得対象外となっていないこと(引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により、除外することが可能とされる)
この条件を満たしている場合、会社は育休取得希望の申し出を拒むことはできないと育児・介護休業法によって定められています。
産休・育休の取得拒否は違法
産休・育休はどちらも法律によって決められた制度であり、会社によって「制度があるかないか」「取れるか取れないか」を決められるものではありません。産休・育休の取得を拒否することは違法となり、処罰の対象となります。
産休の取得を拒否することは、労働基準法違反となり、会社は罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となります。
育休取得の条件を満たしている人への取得の拒否は、育児・介護休業法違反となります。育児・介護休業法に直接の罰則規定はありませんが、厚生労働大臣から会社に報告を求めたり、助言や勧告などがなされたりする可能性があります。
産休・育休を取る人への不利益な取り扱いや嫌がらせも違法
産休・育休取得や取得の申出による、不利益な取り扱いは法律で禁止されています。
不利益な取り扱いとは、妊娠・出産したこと、産休・育休を取ったことを理由として以下のような扱いをすることをいいます。
・退職を勧める
・減給、降格する
・正社員からパートに変更する等
嫌がらせとはいわゆるマタハラ(マタニティ・ハラスメント)を指します。マタハラとは、妊娠・出産した人、産休・育休を取った人が、上司・同僚からの言動により働きにくい環境にさせられることです。
例えばこのような発言が「マタハラ」にあたります。
・「妊娠中の体調不良を理由に休みがちで迷惑しているので辞めてほしい」
・「妊娠中だからといって1人だけ残業しないなんてずるい」
・「先輩より先に妊娠するなんて……」
・「就職してすぐに産休に入るなんて図々しい」
冒頭の「育休を取るなら、復帰後は必ず夜勤をするという念書を書いてね」という発言も当然、育休取得に条件を付けるという不利益な取り扱いのためマタハラにあたります。
とくに夜勤については、労働基準法において「妊産婦(=妊婦・産後1年以内の女性)が請求すれば深夜業をさせてはならない」、育児・介護休業法においては「小学校就学前の子を養育する一定の労働者から請求があった場合には、深夜(午後10時から午前5時まで)において労働させてはならない」という定めがあるほどで、育休明けに夜勤を強制するのはもってのほかです。
産休・育休を取らせてくれないときや嫌がらせを受けたときは?
まずは会社の人事部や、ハラスメント相談窓口に相談しましょう。上司の理解がなく不利益な取り扱いやマタハラを受けた場合でも、会社として制度が整っているのであれば社内で適切な対応をしてもらえるはずです。
社内で対応してもらえず困っている場合は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談をしましょう。あまり聞いたことのない機関かもしれませんが、都道府県の労働局にある部門のひとつで、マタハラなどのハラスメントを専門に取り扱っている部門です。
相談内容によっては会社に対し事実確認を行い、法律上の制度の説明や適切な対応をするよう働きかけをしてくれます。
マタハラを受けたら泣き寝入りせず相談を
産休・育休は法律で守られた権利であり、労働者に取らせるかどうかを会社が決めるものではありません。
育休に条件を付けられたり、マタハラを受けたりしたときは泣き寝入りせずに相談をしましょう。
出典
厚生労働省 労働基準法における母性保護規定
厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし
厚生労働省 職場でつらい思いしていませんか?
執筆者:平原あかり
社会保険労務士・FP2級