「仕事が終わらないなら土日も働け!」と上司に言われ、休日も働いています。終わらないのは「自己責任」として残業代が出ないのですが、違法ではありませんか? 本来どれだけ支払われるのでしょうか…?
配信日: 2023.12.24 更新日: 2024.10.10
たとえ会社からサービスで残業するように求められたとしても、原則として残業を行った際は、残業時間に応じた残業代を受け取れます。本記事では、そもそも「休日労働」とは何を指すのかを解説し、サービス残業をした際に支払われるべき残業代をシミュレーションします。
執筆者:小林裕(こばやし ゆう)
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
休日労働は35%以上の割増賃金
労働基準法には、会社が休日労働をさせた場合、35%以上の割増賃金を支払わなければならないと定められています。前提として、そもそも「休日労働」とは何を指すのか、確認しておきましょう。
休日は「法定休日」と「所定休日」の2種類に大別されます。
「法定休日」は労働基準法で定められている休日であり、会社は週1日以上の休日あるいは4週間を通して4日以上の休日を労働者に与える必要があります。
「所定休日」とは、企業が法定休日以外に労働者に与える休日です。法律上、与える義務はありませんが、労働基準法では労働時間の上限を1日8時間、週に40時間と設定されているため、所定休日を1日設け、週休2日制とする企業が多いです。その場合、週休2日のうち1日を法定休日、もう1日を所定休日にしています。
労働基準法でいう休日労働とは、「法定休日」での労働を意味します。つまり、「法定休日」に労働した場合には休日労働の割増賃金が発生しますが、「所定休日」に働いた場合には休日労働の割増賃金は発生しないのです。
所定休日でも割増賃金が支払われるべきケース
先述の通り、労働基準法では「1日8時間、週40時間」の労働時間上限が定められています。そのため、この上限を超過した場合には、所定休日での労働であっても残業代が支払われます。超過した残業時間については、25%以上の割増率によって賃金を支払うものと定められています。
割増率の考え方
完全週休2日制(土日休み)で、1日の所定労働時間が8時間である企業を例にとって、土日の労働の割増率を考えてみます。なお、1時間当たりの賃金は1500円と仮定します。
平日は所定労働時間の8時間ずつ働き、土曜日に5時間、日曜日に5時間働いたとしましょう。
本ケースでは、平日の合計労働時間は40時間(8時間×5日)であるため、土曜日に勤務した5時間分は全て残業(時間外労働)とみなされ、割増賃金(25%以上)を受け取れます。土曜日の労働に対する残業代計算式は以下の通りです。
1500円(1時間当たりの賃金)×5時間(残業時間)×割増率(125%)=9375円
また、日曜日の勤務に関しては「残業」ではなく「休日労働」に該当するため、勤務した5時間分については割増賃金(35%以上)を受け取れます。日曜日の労働に対する残業代計算式は以下の通りです。
1500円(1時間当たりの賃金)×5時間(残業時間)×割増率(135%)=1万125円
以上から、土日の労働に対する残業代は、9375円+1万125円=1万9500円です。
残業代未払いは労働基準法違反の疑いが
残業代を支払わないことは労働基準法違反で、労働者は会社に請求することができます。2020年4月1日以後に発生した残業代の消滅時効は3年です。会社に訴えても残業代未払いが解消されない場合は、労働組合や労働基準監督署、弁護士などへの相談が選択肢として挙げられます。もしくは自ら環境を変える転職活動を行うのもよいかもしれません。
まとめ
毎週のように、土日のサービス残業を強いられている場合、支給されるはずだった残業代は非常に大きな金額になっているのではないでしょうか。ぜひ一度計算してみてください。ご自身の利益を守るためにも、残業代の計算方法について、ある程度の知識を持っておきましょう。
出典
厚生労働省 労働基準に関する法制度
e-Gov法令検索 労働基準法
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート