更新日: 2024.01.22 貯金

コツコツ貯めたタンス預金の「300万円」は、銀行に預けても大丈夫? このまま子どもに渡したら「脱税」になりますか?

執筆者 : 御手洗康之

コツコツ貯めたタンス預金の「300万円」は、銀行に預けても大丈夫? このまま子どもに渡したら「脱税」になりますか?
日本銀行が公表している2022年度の資金循環によれば、預金などをしていない家計の「現金」の金額は106兆1544億円という膨大な金額(ちなみに預金は約1000兆円)となっています。タンス預金の正確な数字はわかりませんが、この中で約半分がタンス預金と仮定しても約50兆円という計算です。
 
一方で、株式や投資信託などの資産運用金額がおよそ300兆円なので、資産運用や預金もしていない金額の割合が相当に大きいことがわかります。
 
タンス預金と聞くと、資産を隠しているようなネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、手元にお金を保管しておくこと自体は悪いことではありません。ただし、実際に多くの金額をタンス預金している場合、今後どのように活用していくのかを考えておくことも大切です。

タンス預金はデメリットが大きくなりやすい点に注意

タンス預金が増えた理由として、日本で低金利が続いていることが1つの要因と考えられます。2023年の後半には多くの銀行で定期預金金利が引き上げられましたが、それでも銀行に預けて資産を増やすレベルとはいえないでしょう。
 
また、預金保険制度も少なからず影響を及ぼしました。この制度は、預金保険制度に加入している金融機関が破綻しても1000万円までとその利息部分が保護される仕組み(破綻時の救済方式の1つをペイオフといいます)です。逆にいえば、1000万円を超える部分は補償されないので、金融機関に預けるよりも安全ではないかという認識が広まった可能性があります。
 
これを見ると、すぐにお金を利用できるタンス預金にメリットがあるようにも見えますが、タンス預金には以下のようなデメリットも存在するため、あまりおすすめできません。
 

●タンス預金は利息が付かず、保管コストもかかることがある
●盗難や紛失などのリスクが増える
●詐欺にあう可能性がある

 
まず、タンス預金では当然お金が増えることはありません。そのため、一般的にはインフレが進むと資産が目減りします。また、安全を確保するために金庫を購入したりすれば、保管にもコストがかかります。
 
金庫ではなく実際にタンスにいれた場合でも、そのタンスを誤って処分してしまったり、災害などによってお金を補完しているタンス自体が失われたりするリスクもあります。
 
また、タンス預金でお金を保管することによる特殊詐欺の被害も増加しており、現金が手元にあることで逆にリスクが高くなることも考えられます。高齢者の人は警戒が必要です。
 

銀行に預けるのは問題なし、黙って引き継ぐのは問題あり

「タンス預金をしていたお金を銀行に預けても大丈夫なの?」と不安に感じる人もいるかもしれませんが、問題ありません。給料など稼いだお金であればどこで保管していてもその人の自由ですので、自宅にあったお金を銀行に移すことも可能です。
 
一方で、タンス預金の資金を子どもにこっそり引き継ぐことは問題です。広く知られていることですが、タンス預金は相続税の対象となります。税金逃れのためにこっそりと行っても、発覚したらペナルティを課せられるので、絶対に行わないようにしましょう。
 

適切な資金保管計画を検討しましょう

どれだけの割合を手元に残すのが妥当なのかは各家庭によって異なりますが、緊急時にすぐ利用できる資金をタンス預金で保管しておきたいというのはよい判断だと思います。
 
ただし、必要以上の金額をタンス預金として保管するのはリスクが大きくなります。資産を減らしたくないのであれば個人向け国債などの選択肢もありますし、子どもに資産を継承したいのであれば、タンス預金で相続するのではなく、暦年贈与で税金をかけずに引き継ぐ方法なども考えられます。
 
なぜタンス預金でないといけないのか、手元のお金をこれからどうしたいのかをきちんと考えておくことが大切です。自身だけで判断するのがむずかしければ、税理士などの専門家へ相談してみるのもよいかもしれません。
 

出典

日本銀行 資金循環

金融庁 預金保険制度

 
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級

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