更新日: 2024.10.10 働き方
新卒社員、「月給21万円」と聞いていたのに、振り込まれたのは「17万円」だった!「4万円」の差額の理由とは?「給与天引きの仕組み」を解説
会社員になると法律に基づいて保険料や税金が引かれます。これが、もらえるべき給与(額面給与)と実際に振り込まれる給与(手取り給与)に差異が生まれる理由です。
本記事では、給料から保険料や税金が天引きされる理由と、引かれたお金の行方について詳しく解説します。
執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
給与から天引きされるものには何がある?
給与から天引きされるものには次のものがあります。
●所得税
●住民税
●健康保険料
●厚生年金保険料
●雇用保険料
ただし、4月に入社した新卒社員の場合、1ヶ月目は健康保険料と厚生年金保険料が引かれず、2年目の5月までは住民税が引かれないことがほとんどです。
天引きしたお金は会社のものになるわけではありません。所得税は所轄の税務署に、健康保険料と厚生年金保険料は日本年金機構にといった具合に、会社がそれぞれの機関に支払います。
また、会社によっては労働組合費や社宅利用料などが天引きされることがあります。
会社に所属していないフリーランスや自営業の場合は自分で税金や保険料を支払いますが、会社員の場合は会社が徴収係を担っているのです。
額面給与21万円の場合天引きされるのはいくら?
初任給21万円の新入社員が天引きされる目安の金額と明細は次の通りです。
●健康保険料…1万978円
●厚生年金保険料…2万130円
●介護保険料…40歳以上が支払うものなので新入社員は天引きなし
●雇用保険料…1260円
●所得税…3980円(扶養家族がいない場合)
●住民税…多くの新入社員は天引きなし
※東京都協会けんぽ・一般の事業の場合 加入する健康保険組合や都道府県や職種によって金額は異なります
これらが引かれることにより、21万円の給与をもらっても実際に振り込まれる金額は17万3652円になるのです。なお、労働組合費や社宅利用料などが別途天引きされる場合は、手取り金額はもっと少なくなってしまいます。
学生時代のアルバイトであれば、多くの場合、給料が少なく所得税はかかりませんし、社会保険に加入していない場合がほとんどなので、額面給与と手取り給与がほぼ同じです。しかし、社会人になると天引きされるものが多く、しかも金額が大きいので驚いてしまう人も多いでしょう。
天引きされるお金は大きく社会保険料と税金に分類される
ここからは具体的に給与から天引きされるお金を見ていきましょう。主に社会保険料と税金の2つに分類できます。
社会保険料
健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料(40歳以上が対象)と雇用保険料をまとめて社会保険料と呼ばれます。社会保険とは、生活の安定のために加入することが義務付けられている公的保険のことです。
例えば、医療機関を受診した際の負担が3割で済むのは健康保険に加入しているからです。ほかにも厚生年金保険料を支払うことで将来もらえる年金を増やせますし、雇用保険により仕事ができないときに失業手当や育休手当をもらえます。
社会保険料の支払いは、何かあっても安心して暮らしたり、明るい老後を迎えたりするのに欠かせないものなのです。
税金
会社からもらった給料には税金がかかります。国に支払うものが所得税、住んでいる市町村に支払うのが住民税です。
所得税は本来1月1日~12月31日までの収入や加入している保険、家族の状況などに応じて自分で計算し、確定申告の上、税務署に納付します。
会社員の場合は源泉徴収といって、所得税を会社が計算し、毎月の給与からあらかじめ天引きし国に支払う仕組みがあるため、自分で計算や納付をする必要がありません。正確な所得税の金額は12月31日に決まるため、「年末調整」という手続きで、再度正確な所得税を会社が計算し直し、過不足の調整が行われます。
住民税は1年遅れで支払う仕組みになっています。前年が学生で収入がアルバイトで稼いだ額程度であれば多くの場合、住民税は課税されません。したがって、多くの新入社員は初年度、住民税の天引きはないはずです。
ただし、2年目の6月から住民税の支払いが始まります。1年目よりさらに手取りが減ってしまうため、それを見越した適切な家計管理が大切です。
天引きされるお金を把握しよう
給与から天引きされるのは、社会保険料と税金です。社会保険料は安定した生活を送るために必要なものです。また、所得税は本来自分で計算して支払わなければならないものを会社が計算から納付までを担い、しっかりルールに基づいて天引きが行われています。
決して会社がうそをついているわけでもなく、不正にお金を抜いているわけでもありません。もう1度給与明細を確認し、引かれたお金が何に使われるのか確認してみましょう。
出典
全国健康保険協会 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
厚生労働省 令和6年度の雇用保険料率について
国税庁 給与所得の源泉徴収税額表(令和6年分)
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士