昔は夏でも「扇風機だけで乗り切れた」って本当ですか? 今年はエアコンを「24時間」つけっぱなしですが、どれだけ涼しかったのでしょうか…?
配信日: 2024.09.11 更新日: 2024.10.10
しかし、「昔は扇風機があれば夏を乗り切れた」とよく言われます。その習慣を続けた結果、エアコンを使わなかったために熱中症で病院に搬送される高齢者のニュースが報じられるなど、大きな影響が出ているのです。
本記事では 東京の過去40年間の気温データを基に、「昔より暑くなった」という主張は本当なのかを見ていきます。
執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
東京の8月最高気温は30年で1.5度上昇
気象庁のデータによると、8月の平均気温は年々上昇しています。1984年から1993年と2014年から2023年のそれぞれ10年間の、8月の平均気温、8月の最高気温、年間猛暑日の日数をまとめたものが図表1です。
図表1
気象庁 過去の気象で検索を参考に筆者作成
平均気温こそ30年で0.7度しか違いがないものの、最高気温は1.5度も上がっています。
最も違いが大きいのは猛暑日の日数です。猛暑日とは最高気温が35度を超える日のことをいいますが、過去10年で約8倍に増えています。特に2022年は年間16回、2023年は22回と近年一気に増えているのです。
これらのデータからも、30年前よりも全体的に暑くなっていること、特に最高気温の上昇や猛暑日の頻度の増加が大きいことが、近年「真夏はエアコンが必須」となったことにつながっています。
エアコンと扇風機 24時間使ったときの差額は?
図表2は、エアコンと扇風機、それぞれを24時間使う生活を1ヶ月間(31日間)続けた場合の電気料金を比較したものです。なお、電気料金は公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価を利用し、1キロワットアワーあたり31円として計算します。
図表2
筆者作成
扇風機だけで済んでいたときの電気代は、31日間使い続けていても500円未満でした。しかし、エアコンの場合は機種の大きさによって1万円前後から2万円以上の電気代が必要です。ここ数年の夏の気温上昇による経済的な負担は決して小さくないことがわかります。
エアコンを適切に使い、温暖化対策も考えよう
ここまで平均気温や猛暑日の日数といった気象データを見ることで、「夏の暑さが厳しくなっている」のは体感ではなく事実であることが分かりました。とはいえ、実際にエアコンと扇風機の電気代の差は大きく、エアコンを使わずに我慢できるなら、扇風機で過ごしたいと考える人も多いでしょう。
地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出を少しでも減らしたいと考え、なるべくエアコンの使用を控えたいと思う人もいるかもしれません。
しかし、近年は「エアコンを使わなくても我慢すれば過ごせる気温」から「エアコンを使わないと熱中症などを起こす危険な気温」へと変化しています。いくら電気代を節約できても、地球温暖化への影響を減らせても、身体の調子を崩したり、ましてや命を危険にさらしたりしては意味がありません。
もちろん、涼しい日や涼しい時間帯は扇風機で過ごす、サーキュレーターを使ってエアコンの設定温度を上げるといった方法で電気代の節約や二酸化炭素排出削減を図ることは大切です。一方で、エアコンなしでは過ごすことが難しくなってしまったことも受け入れ、無理のない生活を送ることを心がけましょう。
出典
気象庁 観測開始からの毎月の値
気象庁 大都市における猛暑日日数の長期変化傾向
公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会 よくある質問 Q&A
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士