更新日: 2024.11.27 働き方
大学生の息子から「今年のアルバイトの年収が103万円を超えそう」と言われました。お店が忙しくシフトは減らせないそうですが、年収600万円の私はいくら「税金」が増えるのでしょうか?
では、実際に大学生の子どもが扶養から外れた場合、どれくらい手取りが減ってしまうのでしょうか。本記事では年収600万円の会社員を例に、シミュレーションしてみます。
執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
年収103万円が境界線となる理由
扶養控除とは、簡単にいうと「働いていない家族、または収入が少ない家族を養っている人の税負担を減らす仕組み」です。
控除対象の扶養親族となる条件の1つに、年間の合計所得が48万円以下であること、というものがあります。これだけを見ると、「年48万円以上の給料をもらうと扶養から外れてしまうのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、そうではありません。
給与所得と給与収入は異なるもので、「給与所得=給与収入-給与所得控除」で求められます。給与所得控除は給与収入の金額によって異なりますが、最低額は55万円です。このため、給与収入が103万円の場合、給与所得は「103万円-55万円=48万円」となり、103万円が扶養控除を受けられる境界線となります。
なお、扶養控除の判定に使う給与所得の計算には、原則通勤手当を含みません(ただし、1ヶ月あたりの交通費が15万円を超える場合など例外規定あり)。勤務先から支給されている交通費を除くと年収が103万円以内に収まる場合もあるため、給与明細などを見ながら、しっかりと再計算することが大切です。
扶養控除がなくなった場合の税金への影響は?
大学生の子どもが年収103万円を超えた場合、扶養親族としてカウントできなくなるため、扶養者の税負担が増えることになります。実際、どれくらい税負担が増えるのでしょうか。
まずは、扶養控除について確認しておきましょう。大学生の子どもが19~23歳で、年収103万円以内で働いている場合は特定扶養親族として扱われ、所得税63万円と住民税45万円の控除が受けられます。
年収600万円の場合、家族構成や保険の加入状況などによりますが、所得税の税率は10%が一般的で、住民税(所得割)の税率は所得にかかわらず10%です。
つまり、所得税63万円の控除がなくなると所得税の負担が年間6万3000円増え、住民税45万円の控除がなくなると住民税の負担が年間4万5000円増えてしまいます。合計で10万8000円となり、決して小さくない金額です。
なお、所得税の増加は年末調整に反映されるため、年末調整の還付金が減少します。また、住民税が増え始めるのは翌年6月の徴収分からです。住民税の負担増で手取りが減り始めるのは多くの人が忘れた頃ですので、あらかじめ把握しておきましょう。
会社からの手当がなくなる場合も
会社によっては「家族手当」や「扶養手当」として、扶養家族がいる場合に支給される手当があるかもしれません。こうした手当は、税制上の扶養を基準としていることが多いため、子どもの年収が103万円を超えて扶養から外れると、支給されないケースがあることにも注意が必要です。
例えば、扶養家族1人につき月額5000円を支給する会社に勤めている人では、子どもが扶養から外れることで年間6万円の手当が減ってしまいます。扶養から外れているにもかかわらず手当を受け取り続けると、社内で処分を受ける恐れもあるため、制度をしっかり確認することが大切です。
扶養控除がなくなる影響は大きい
大学生の子どもの年収が103万円を超え、扶養控除がなくなると、扶養者の年間の税負担が増加します。年収600万円の世帯では、目安として、年間10万円以上の負担増となり、家計へのインパクトは決して小さくありません。
ただし、「負担増を受け入れたくない」と考え、年末調整で正しく申請しないことは大問題です。
所得税や住民税を正しく支払わないことは脱税にあたりますし、扶養し続けたと偽って会社からの手当を受け取ることは、手当の不正受給にあたり、懲戒処分の対象となるかもしれません。扶養控除が適用されるかどうかは正確に確認し、適切に申請することが重要です。
出典
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.1410 給与所得控除
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士