「医師の働き方改革」って一体何? 高収入でも「長時間労働」を強いられているという話は本当なの?
配信日: 2025.03.08

本記事では、高収入とはいえ働きすぎが指摘される医療業界において、医師の働き方改革の取り組み、長時間労働の改善について解説します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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医師の働き方改革とは
2024年4月から始まった医師の働き方改革は、時間外労働の上限規制(年960時間、特例で年1860時間)を改革の軸として、長時間労働の改善を目指し、医療の質の向上と安全を確保することを目的としています。
また、改革の推進を支援する第三者評価機関として「医療勤務環境改善支援センター」を設置し、表1のように医療機関は3つの水準(A・B・C)に指定されました。
表1
水準 | 時間外労働(年間) | 対象 |
---|---|---|
A | 960時間未満 | 一般の労働者と同程度 |
B | 1860時間未満 | 医師を派遣する病院と救急医療等 |
C | 1860時間未満 | 臨床・専門研修と高度技能の修得研修 |
厚生労働省「医師の働き方改革」より筆者作成
医師の労働時間の解消策
労働基準法による法定労働時間は、原則として1日8時間、1週間に40時間までです。しかし、医師の場合、緊急対応や手術、外来対応などで時間外労働が超過するケースも少なくありません。
厚生労働省の調査「長時間労働の指摘がある業種・職種の実態について(例)」によると、1ヶ月の時間外労働時間は「20時間~50時間以下」が31.5%と最も多く「50時間~80時間以下」が14.2%であることが分かっています。
医師の働き方改革は、時間外労働の見直しを基本とし、医療機関内のマネジメント改革、ICT技術の活用、地域医療提供体制における機能分化・連携、医師偏在対策の推進、医者のかかり方についての周知など、「医療機関、行政、患者」の3つの側面からの改善が必要とされているのです。
医師の健康を確保する
医師の働き方改革では、「追加的健康確保措置」が義務付けられています。具体的には、医師の健康をほかの医師がチェックする面談指導と休息時間の管理が徹底されます。
●通常の日勤及び宿日直に従事する場合:24時間以内に9時間連続した休息時間をとる
●宿日直許可なしで宿日直に従事する場合:46時間以内に18時間連続の休息時間をとる
●勤務シフトで予定されている場合:9時間または18時間連続した休息時間をとる
●休息時間中にやむを得ず労働した場合:労働時間に相当する時間の代償休息をとる
●宿日直に連続9時間以上従事する場合:労働が発生しなければ、9時間の連続した休息時間をとったとみなす
医師の年収
厚生労働省が令和5年に実施した「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」によると、医師の平均年収と賞与は表2の通りです。
表2
国立 | 公立 | |||
---|---|---|---|---|
職種 | 平均年収 | 賞与 | 平均年収 | 賞与 |
病院長 | 1398万6613円 | 509万6495円 | 1713万3822円 | 375万551円 |
医師 | 1148万2676円 | 261万8653円 | 1241万1192円 | 214万6224円 |
歯科医師 | 1028万6012円 | 245万5478円 | 1173万9350円 | 251万9733円 |
厚生労働省「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」筆者作成
医師の年収は、勤務先や専門分野によって異なり、国立より公立病院の方が高額です。また、一般の給与所得者の平均年収「460万円」と比較すると、約2.5倍の差が生じます。医師の給与が高額である理由は、専門性が高い仕事で人命にかかわる責任が求められるためです。
いくら給与が高くても、医師の数が減ると長時間労働に縛られてしまうことから、労働環境の改善を目的に、医師の働き方改革による労働時間の見直しが実施されているというわけです。
医師の働き方改革が必要な医療現場への理解を深めよう
医師の働き方改革は、医師の健康を維持し医療の質を高めるための取り組みです。医師本人のゆとりが確保されることで患者の満足度に繋がるというメリットがあります。改革の推進は、医療機関や行政、患者の協力が必要となるため、関係者として総合的に理解を深めていきましょう。
出典
厚生労働省 医師の働き方改革
厚生労働省 追加的健康確保措置(連続勤務時間制限・勤務間インターバル規制等)の運用について
厚生労働省 長時間労働の指摘がある業種・職種の実態について
厚生労働省 労働時間・休日
厚生労働省 第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告
国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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