扶養から外れて給与が11万円に! でも、社会保険が引かれて手取りが「8万円」になり、損をしている気が…。扶養内に戻ったほうがいいのでしょうか?
配信日: 2025.05.09


執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
パートも適用拡大で社会保険に加入しなければならない
適用事業所で働く人で、パートやアルバイトといった短時間労働者が、一定の要件を満たすと、社会保険(厚生年金保険・健康保険)の加入対象になることを指します。2024年10月からは、社会保険に加入している従業員51人以上の会社では、扶養から外れて社会保険に加入となっています。
Aさんの会社も例外ではなく、昨年から週20時間以上で社会保険に加入することになりました。当時、人事担当の方から、「Aさんはもう少し働く時間を増やして社会保険に加入する働き方をしませんか?」と面接の際に聞かれました。
Aさんには中学生の子どもが1人います。これから教育費にお金がかかるため、パート収入が増えるのであれば、もう少し時間数を増やして働こうかと、1日7時間、週3日勤務の契約をすることにしました。これによりAさんの給与は月約11万円になります。
ただし11万円は総支給額であり、社会保険に加入したため、手取りは約8万円です(1163円×7時間×13日/月で計算)。
いままでのAさんの働き方は、配偶者の扶養内で働くことをしていたため、週20時間未満で働いていました。その時のAさんの手取りは、総支給額と同額で約9万円(1163円×6時間×13日/月で計算)。手取り額が減ってしまい、なんだか損をしている気がします。扶養内に戻った方がいいのかと悩んでいます。
扶養内に戻るメリットとデメリット
Aさんが扶養内に戻りたいと考えた場合、会社と話し合い、雇用契約の変更をします。働き方としては週20時間未満に戻します。扶養内に戻るメリットとデメリットは次のことが想定されます。
<メリット>
給与から保険料が天引きされず全額が手取り額です。ただし、金額によって税金が天引きされる可能性があります。また、Aさんの配偶者の会社によって給与に扶養内だと家族手当が支給されたことがあります。
<デメリット>
Aさんが病気やケガ等で働けなくなった場合、収入はゼロです。また、週20時間未満のため、雇用保険に加入せず、雇用保険の給付である失業等給付や教育訓練等給付、育児や介護給付などを受けることはできません。さらに、高齢期に受け取る年金の上乗せ部分(老齢厚生年金)を増やすことはできません。
扶養から外れて働くメリットとデメリット
扶養から外れた場合のメリットとデメリットですが、扶養内のメリットとデメリットを反対に考えることになります。
<メリット>
扶養から外れて自身で健康保険に加入すると、病気やケガ等で働けなくなった生活保障として、傷病手当金や出産手当金の給付を受け取れます。
さらに、雇用保険に加入することで転職等する場合、求職活動している間の失業等給付、スキルアップ等に教育訓練等給付(金額の上限等、要件あり)、育児や介護により働けない場合の給付などを受け取れます。また、高齢期に受け取る年金を増やせます。
<デメリット>
給与の総支給額から社会保険料や税金が天引きされるため、手取り額は減少します。配偶者の会社で家族手当が支給されている場合、家族手当がつかなくなる可能性があります。
扶養内と扶養外、迷った時の考えるポイント
扶養内か扶養外、今後の働き方に迷った際に、夫婦で検討する上でのポイントをお伝えします。
・就労時間を思い切って増やせない
・時間を調整する働き方をしたい(自由な働き方)
・配偶者の給与に家族手当があり、扶養外になると支給されなくなる
・働けなくなった時の備えとして社会保険加入する
・雇用保険の給付を受ける働き方をしたい
・厚生年金保険に加入し高齢期に受け取る年金額を増やしたい
・働く時間を増やしたい
まとめ
まずは、1日何時間、1週何日ぐらい働けるのか家庭内で話し合ってみましょう。扶養から外れるのであれば、フルタイム(正社員)で思い切って収入を増やす働き方も視野に、パート等のままであれば就労時間を長くすることで、扶養内の手取り額より多く収入を増やせます。
就労時間を週20時間前後のラインで考えるのであれば、メリットとデメリットを参考に扶養内か扶養外か検討してみてはいかがでしょうか。
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士