日本の平均年収は400万円台だと聞き、「物価高であまり貯金できないのでは?」と感じます。実際いくらくらい貯金できているのでしょうか?
今回は国の統計から、平均年収や平均貯蓄額を見てみましょう。
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com
目次
平均年収は478万円、男女で大きな差も
国税庁の「民間給与実態統計調査(令和6年分)」によると、日本の平均年収は1人あたり478万円です。
内訳を見ると、
男性:586万7000円
女性:333万2000円
正規社員:544万9000円
非正規社員:206万3000円
このように、性別や雇用形態によって大きな違いが見られます。
平均貯蓄現在高の平均は1984万円で中央値は1189万円
では、みんなはどのくらい貯金しているのでしょうか。
総務省の「家計調査報告 貯蓄負債編(令和6年版)」によると、2人以上世帯の平均貯蓄現在高1984万円です。
しかし、ここで注意したいのが「平均」と「中央値」の違いです。
中央値(全世帯を並べたときのちょうど真ん中)は1189万円、貯蓄ゼロの世帯を含めれば1099万円です。貯蓄が100万円未満の世帯は10.2%、貯蓄現在高の平均値(1984万円)を下回る世帯が67.0%と約3分の2を占めていますが、一部の資産を多く持つ世帯が平均値を引き上げており、実際の多くの家庭は「1000万円前後」というのが現実に近い数字です。
つまり、約10世帯に1世帯は「貯金がほとんどない」というのが現状といえます。
貯蓄ができない理由は「物価高」と「所得の伸び悩み」
最近は、「物価が上がるのに給料は上がらない」と感じている人も多いでしょう。実際、総務省発表による「2025年9月分 消費者物価指数(CPI)」は、前年同月比で2.9%上昇している一方で、国税庁の「民間給与実態統計調査(令和6年分)」によると令和6年の給与の対前年比は3.9%です。
内訳では、男性+3.2%、女性+5.5%、正規社員+2.8%、非正規が+2.2%となっており、実質的な購買力を押し上げるには力不足感が残るという現実です。
特に最近の食費、電気代、ガソリン代などの生活必需品が上がる環境下、貯金にまわせるお金が減っているのは自然な流れといえます。
「平均」にとらわれず、自分の家計と向き合うことが大切
「みんながどのくらい貯金しているのか」は気になりますが、統計の数字はあくまで「統計上の全体像」です。実際の家計改善には、「平均」に合わせるのではなく、自分の収入と支出のバランスを把握することが大切です。
自分の家計を見直し、無理なく貯金できる習慣をつくっていきましょう。すぐ取り組みができることとして、家計簿アプリなどで毎月の支出を「固定費」「変動費」に分け、固定費のなかでも「通信費・保険料・サブスク」を見直すことからはじめましょう。
次に、あらかじめ貯蓄する金額を別枠で設定する「先取り貯蓄(給料の10%を自動で貯蓄口座に振り分ける)」といった工夫を取り入れましょう。
「平均」を参考に、お金のマイルールをつくる
平均年収478万円、平均貯蓄1397万円という数字は、一見、難しい壁のように見え、多くの人がまだ十分な余裕を感じられていないのが現実です。大事なことは「周りと比べる」のではなく、「マイゴールを立てる」ことです。
例えば、
・年間の生活費の3ヶ月分を「緊急用予備資金」として確保する
・老後資金のために毎月1万円からつみたてNISAを活用して資産形成する
・将来の支出(教育・住宅・老後)をライフプラン表に整理する
といった段階を踏んで具体的な行動を進めていきましょう。
まとめ
日本の平均年収は478万円、平均貯蓄は1397万円という数字だけを見ると「みんな結構持っている」と感じるかもしれませんが、約4人に1人は貯蓄ゼロというのが現実です。
物価高のなかで「貯めにくい時代」ですが、工夫次第で確実にお金は貯められます。大切なのは、「平均」をうのみにするよりも、自分の家計をと向き合って、改善点や無理なく取り組める目標を設定し、コツコツ積み上げる習慣づくりを続けることでしょう。
出典
国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査
総務省 家計調査報告(貯蓄・負債編) 令和6年(2024年)平均結果の概要(二人以上の世帯)
総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)9月分
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者
