「新築マンションの光熱費」実は“築10年の物件”より高い! 最新設備が「裏目に出る」ことも…専門家が暴く“省エネ性能の罠”とは?
私は、建築設計者として20年以上、省エネ住宅の設計・監修に携わってきました。現場で感じるのは、「新築なのに光熱費で悩む家庭」が想像以上に多いということです。本記事では、そんな逆転現象が起きる理由と対策を、専門家の視点から解説します。
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目次
理由1:「省エネ基準クリア=光熱費が安い」ではない
「省エネ等級4」という言葉を聞いたことがありますか? これは、建物が最低限クリアすべき基準で、いわば“合格ライン”です。しかし、基準を満たすからといって、光熱費が安いとは限らないのです。
「ギリギリ合格」がほとんど
開発会社は、コスト削減のため、基準を満たす最低限の設計を選ぶケースが多いのが実情です。余裕ある高性能ではなく、「必要最低限」で作られているのです。
中古マンションが意外と優秀
2010年代前半の物件も、現行とほぼ同じ基準を満たしています。施工精度が高ければ、新築よりも省エネ性能が上回ることもあります。
驚きの逆転現象
中古マンションはローン負担が軽いうえ、光熱費が抑えられる性能を持っていれば、新築より総コスト(ローン+光熱費)が安くなるというケースもあります。
理由2:最新設備が「裏目」に出ることも
エコキュートや高効率エアコンなど、最新の省エネ設備は魅力的に見えますが、使い方やライフスタイルによっては、光熱費が高くついてしまう場合があります。
使い方次第で無駄に
24時間換気を止めたり、冷暖房を過度に使ったりすると、省エネ効果は一気に失われます。生活スタイルに左右されるのです。
想定外のライフスタイルに弱い
新築マンションは、「共働きで昼間不在」を想定して設計されることが多いのですが、
・在宅ワークの増加
・高齢の親との同居
・ペット飼育
などの要因が加わると、想定よりエネルギー消費が増大します。
複雑な操作で無駄が発生
高機能設備は操作が難しく、設定を誤ると逆に消費量が増えることもあります。取扱説明書をよく読んで、理解して使いこなすことが重要です。
理由3:デザイン優先で性能が犠牲に
売れ筋を意識したデザイン重視の設計が、光熱費を押し上げる原因にもなります。
大きな窓が冷暖房費を増やす
開放感のある大きな窓やバルコニーは人気ですが、夏は暑気、冬は冷気を招き、冷暖房負荷を高めます。特に西日の差し込む大窓には注意が必要です。
「隠れた部分」でコスト削減
開発会社は、表から見えにくい部分でコストを抑える傾向があります。
・壁の断熱材は、薄型で断熱性能が低めのものを使用
・アルミサッシを使用
・通常ガラスを採用
こうしたコスト削減は、光熱費の上昇につながります。
気密性の甘さ
断熱材が高性能でも、施工精度が低ければ隙間風が入り、効率を大きく損ねます。マンション全体の気密性は見落とされがちな盲点です。
建築専門家が教える! 光熱費を抑える対策
物件選びのポイント
・省エネ等級4は最低ラインです。
可能なら「等級5や等級6」や「ZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)」を狙います。
・カタログや資料にある「キロワットアワー(kWh)/年」という数字を確認。
この数字が低いほど、光熱費が安くなる可能性が高いです。
・窓は「樹脂サッシ」+「LowE複層ガラス(ペアガラス以上)」が理想。
アルミサッシは避けたいところです。
・気密性(C値)が測定されているかも確認しましょう。
・間取り図では、大きすぎる窓や吹き抜けがあるかどうかをチェックしましょう。
暮らし方の工夫
・設備は正しく使う:24時間換気は止めず、エアコンは適温で継続運転。
・日射対策を徹底:すだれ、遮熱カーテン、断熱フィルムで夏の冷房負荷を軽減。
「新築=光熱費が安い」は幻想!
新築マンションの「省エネ性能」は、宣伝されているほど高くないことが多いです。「最低基準ギリギリの設計」「見た目重視」「生活スタイルのミスマッチ」が原因で、光熱費が高くなることがあります。
物件選びの際は、華やかな内装や間取りだけでなく、「窓の性能」「断熱材のグレード」「気密性」といった、光熱費に直結するポイントをしっかり確認することが重要です。「新築だから安心」と決めつけず、長い目で見て本当に賢い選択をしましょう。
出典
国土交通省 断熱性能 | ラベル項目の解説|建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表⽰制度
一般社団法人環境共生まちづくり協会 省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
