「年収130万円以上だと、手取りが20万円減る」というママ友。年収の壁は「103万→160万円」に引き上げられたのに、なぜ“扶養を外れる”のでしょうか? 注意が必要なポイントとは
本記事では、働き方を考える上で知っておきたいポイントを解説します。
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目次
「年収の壁」が引き上げられても“130万円”を超えると「配偶者の扶養」から外れるって本当?
そもそも、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の「被扶養者」として認定を受けるには「収入要件」「同一世帯要件」に合致する必要があります。
このうち「収入要件」は、年間収入「130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)」、かつ同居の場合は収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満、別居の場合は収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満です。
そのため、社会保険上の被扶養者認定を受けるための「収入要件」により、配偶者の扶養から外れるボーダーラインが「130万円の壁」と呼ばれています。
「103万円の壁」が「160万円の壁」になっても「106万円の壁」「130万円の壁」には注意が必要
令和7年度税制改正においては、税制に関する年収の壁が引き上げられました。所得税が発生するボーダーラインの「103万円の壁」は「160万円の壁」へ大幅に引き上げとなり、同時に配偶者控除の所得要件は「103万円の壁」から「123万円の壁」となりました。
さらに、配偶者特別控除を満額受けられる所得要件も150万円から160万円に引き上げられています。
その一方で、一定規模の企業で社会保険への加入義務が生じる「106万円」の壁や、上記の「130万円の壁」は残っているため、注意が必要です。年収がこれらの壁を超えた場合、社会保険料の負担によって手取りが逆転するケースもあります。
例えば、東京都在住で年収130万円、45歳(介護保険第2号被保険者)の場合だと、標準報酬月額は10万7000円~11万4000円の範囲です。協会けんぽ管掌の健康保険は7等級、厚生年金保険料は4等級、労使折半の従業員側の負担額は6325円+1万65円で1万6390円程度になります。
パート先の企業規模にもよりますが、壁を超えると年間で「19万6680円」も手取りが減る計算になるのです。
ただし、106万円の壁に関しては、最低賃金の引き上げを踏まえて法律の公布された令和7年6月から3年以内の廃止が決定されています。そのため、今後は一定規模の企業で「週の所定労働時間が20時間」を超える人に対し、社会保険の加入義務が発生するでしょう。
「社会保険の適用拡大」が進められている?「年収の壁・支援強化パッケージ」を利用する方法も
「年収の壁」を理由にした労働時間の調整と、それに伴う人手不足については、「年収の壁・支援強化パッケージ」として、厚生労働省が「106万円の壁」「130万円の壁」それぞれの対策に乗り出しています。
主に「106万円の壁」対策には、従業員を社会保険へ新たに加入させる事業主向けに、従業員の手当などに充てるための支援金を出す「キャリアアップ助成金」という制度を設けました。
さらに「130万円の壁」対策には、一時的に収入が130万円を超えた場合でも、簡易的な申請により健康保険の「被扶養者認定」を継続して受けられるようにする仕組みづくりなどがされています。
「壁」を超えて働きたい場合、これらのパッケージ適用を事業主に打診してみるのも手です。
まとめ
税制改正により、所得税が発生するボーダーラインが103万円から160万円に引き上げられました。一方、社会保険の加入義務が発生する106万円や、配偶者の扶養から外れる130万円の壁は依然として存在しているため、注意しなければなりません。
ただし、政府も働き控えを解消するために支援策を講じています。こういった税金に関する情報を常にアップデートし、必要であれば勤務先の担当者に相談しながら、最も賢明な選択をしましょう。
出典
首相官邸 「年収の壁」対策
厚生労働省 年金制度総論
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
