会社の“出社回数ゼロ”でも通勤手当が満額支給。これってもらっていいの?
違法なのか、課税されるのか、会社は見直す必要があるのか――さまざまな疑問もあるでしょう。本記事では、出社ゼロの通勤手当をめぐるルールと注意点を、分かりやすく解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
出社ゼロでも通勤手当満額……これって違法?
働き方のひとつとして在宅勤務が普及するなか、「数ヶ月まったく出社していないのに、以前と同じ通勤定期代が満額支給されている」というケースもあるようです。通勤手当は法律で支給義務が決まっているものではなく、支給の有無や金額は就業規則や賃金規程で会社ごとに定める仕組みです。
そのため、出社ゼロでも就業規則どおりに支給されているのであれば、直ちに違法とはいえず、「もらっていること」自体が問題になるケースは多くありません。ただし、税金面では通勤の実態がないのに通勤手当として非課税扱いにするのは適切ではなく、税務上の問題が生じる可能性があります。
国税庁は、電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合の通勤手当について、最も経済的かつ合理的な通勤ルート・方法に基づく金額(1ヶ月あたり15万円が上限)まで非課税と定めています。
通勤手当について定められている運用ルールは要チェック
前述の通り、通勤手当は、労働基準法などで支給が義務付けられているわけではありません。多くの会社が福利厚生の一環として支給しているに過ぎないため、在宅勤務をきっかけに「定期代支給をやめて、出社日数分だけ実費精算に切り替える」ことも可能です。
ただし、就業規則などの変更手続きと従業員への説明を経ずに一方的に支給停止したり減額したりすることは、労働条件の不利益変更にあたる可能性があるため、ルール変更には慎重さが求められます。
税金面では、公共交通機関を利用する場合は、「最も経済的で合理的な経路・方法」による運賃の額について、1ヶ月あたり15万円まで所得税は非課税とされています。車通勤の場合は、片道距離ごとに1ヶ月あたりの非課税限度額(例:片道15キロメートル以上25キロメートル未満なら月1万3500円など)が定められています。
在宅勤務中でも就業場所が会社のままであれば、定期代などを通勤手当として支給し、限度額の範囲内を非課税とすることは制度上できます。しかし、長期にわたり出社実態がないのに定期代を出し続けると、「通勤手当の名を借りた給与」とみなされ課税対象となるリスクはゼロではなく、会社側の運用次第では注意が必要です。
会社が見直すべき通勤手当・在宅勤務手当の設計と注意点
在宅勤務が前提となる働き方で実務上よくあるのは、定期代支給をやめて出社日ごとの実費精算に変えるパターンや、通勤費を削減してその一部を在宅勤務手当として支給するパターンです。在宅勤務手当は、通信費や光熱費など従業員が自宅で仕事をするうえで必要な費用の補てんという位置づけです。
在宅勤務手当は原則として給与所得として所得税の課税対象となります。一方で、国税庁によれば、通信費や光熱費などの実費相当額を合理的に精算する方法で支給する場合については、課税対象から除外できる可能性があります。
会社としては、就業規則・雇用契約・賃金規程などをセットで整備し、従業員に分かりやすく説明することが不可欠です。
出社ゼロの通勤手当問題とどう向き合う?
出社ゼロでも通勤手当が満額支給されていると、不安を感じる人もいるでしょう。通勤手当の支給は企業の裁量であり、非課税限度額の範囲で経済的かつ合理的な通勤を前提としていれば、すぐに問題となるわけではないと考えられます。
ただし、長期間出社がないのに定期代が支給され続けると、制度との乖離(かいり)から税務リスクや不公平感が生じる可能性があります。気になる場合は、会社に扱いを確認するのが安心です。
企業にとっても、在宅勤務の定着は通勤手当や在宅勤務手当の見直し時期といえます。定期代を適正化し、その分を在宅勤務手当やスキル支援に充てるなど、納得感のある形で再配分すれば理解も得やすくなるでしょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
国税庁 在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)1 在宅勤務手当(3ページ)、5 業務使用部分の精算方法(4~5ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
