43歳の共働き夫婦・子ども5歳、予想したより貯金ができていません。「教育費」と「老後資金」どちらを優先すべきですか?

配信日: 2025.12.23
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43歳の共働き夫婦・子ども5歳、予想したより貯金ができていません。「教育費」と「老後資金」どちらを優先すべきですか?
給与があまり変わらないうえに物価高などもあり、思ったよりも貯金がうまくできないという家庭は多いでしょう。子どもがまだ小さく、これから多額の養育費を準備しなければならない場合、子どもの養育費と自分たちの老後資金、どちらを優先してつくるべきなのでしょうか?
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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優先すべきは老後資金だが、“教育費の最低ライン”も同時に確保しよう

「教育費と老後資金、どちらを優先したらいいのか」という相談は、40代前半のご家庭で特に多いテーマです。結論からいうと、老後資金の準備が優先項目です。教育費は“最低限の基礎部分”だけを確保するのが最適解といえます。
 
理由は、教育費には奨学金・授業料減免制度・自治体の給付金など「代替手段」が多く存在します。
 
一方で、老後資金には代替手段がほぼありません。公的年金だけで老後生活が十分に成り立つ家庭は少なく、金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループによる報告書でも「老後20~30年の生活には、不足総額は単純計算で1300~2000万円程度になる」とされています。
 
教育費は後から調達できますが、老後資金は後でまとめて稼ぐことができません。この代替できないリスクの違いが、優先順位を分ける最大の着眼点です。
 

教育費のピークは15~22歳に集中

子どもの教育費のピークは中学~大学の15~22歳になります。文部科学省のデータによると、大学4年間の費用の目安は以下のレンジになります。
 

国公立大学:入学金約28万円、年間授業料約54万円
私立大学:入学金約24万円、年間授業料約96万円

 
学費に加え、大学進学前の塾代・高校時代の部活動費なども加わるため、ピークの教育費支出は家計への影響が非常に大きくなります。
 
ただし、教育費は次のようなさまざまな選択肢がありますので、日頃から以下について情報収集を行っていれば、適切なサポートを受けることで調整が可能です。
 

1. 奨学金(給付型・貸与型)
2. 自治体の給付金制度
3. 大学の授業料減免制度
4. 子ども本人のアルバイト
5. 進学先の選択(国公立・自宅通学など)

 
そのため、教育費の全額を親が今から準備する必要はないと考えて差し支えないでしょう。まずは、「児童手当を教育費として積み立てる」程度の最小限で土台を固めておけば、十分だといえるでしょう。
 

老後資金は最優先項目 時間を味方につけて早めの積み立てを

老後資金を優先させる理由を振り返り、具体的な手段を考えましょう。
 

(1)公的年金だけでは不足する可能性が高い

厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均的な高齢夫婦の年金受給額として、夫が会社員の場合16万9484円、妻が専業主婦の場合5万8000円で、合計月額約23 万円であるのに対して、65歳以上の夫婦のみで無職世帯の平均支出額は月約26万円 程度(総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年」)で、計算上毎月3万円の赤字が生じる可能性があります。
 

(2)40代なら複利効果を効かせて資産を成長させられる

定年年齢を65歳とすると、43歳からは残り22年となり、NISAやiDeCoを活用すれば、年3~4%の運用でも大きく資産を成長させることができます。例えば、月額3万円で(年3%運用)を22年間継続した場合、元金792万円に対して1020万円となります。
 

(3)老後資金には代替手段がほぼない

教育費と違い、老後資金には奨学金も給付金もありません。不足は、生活レベルの大幅な引き下げ、再就職による収入確保、住宅売却といった負担が大きい選択肢しかないというのが実情です。
 

「老後7:教育3」で配分するのが現実的

理想的な準備バランスとしては、老後資金 70%:教育費 30%ではないでしょうか。具体的な手段について以下に記載します。
 

■老後資金(70%)

・新NISAのつみたて投資枠や成長投資枠を活用
・iDeCo(特に会社員・公務員は節税メリットが大きい)
・会社の確定拠出年金(DC)がある場合は上限まで拠出

 
これらは非課税制度であり、複利の効果を最大化できます。
 

■教育費(30%)

・児童手当を全額積み立て(中学卒業まで総額約200万円)
・もしジュニアNISAで積み立てていれば18歳まで継続、その後新NISA移行
(ジュニアNISAは2023年末で新規開設が終了しています)
・高校以降の出費は「現金+奨学金」で調整

 

まとめ 教育も老後も守るために、「老後資金の基盤づくり」を優先

今回のご相談のケースについてまとめましょう。教育費は調整手段が多く代替可能である一方、老後資金は代替手段がほぼなく自助努力のみに依存しているため、優先度を高く準備しましょう。40代は複利効果が十分生かせる時期なので、老後7:教育3の配分が無理なく続けられる可能性が高いです。
 
老後の不安が軽減すれば、教育についての選択肢も広がります。今からでも十分間に合いますので、できる範囲の積み立てから始めてみましょう。
 

出典

金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理
文部科学省 私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況
総務省統計局 家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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