扶養内でパート勤務をしているのですが、年末は残業が多く12月の手取りが「10万円」でした。一度だけ収入が増えた場合でも、確定申告は必要でしょうか?
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
年収いくらから所得税がかかる?
扶養内で働くと決めて、「年収103万円の壁」を超えないよう気を付けていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。それなのに12月に残業が多くなってしまい、手取りが10万円を超えてしまったら不安になるのもわかります。
Aさんは、毎月8万5000円になるように働いていて、11月までの収入は93万5000円でした。ところが12月の給与は10万5000円だったということです。年収は104万円で「103万円の壁」を超えてしまったので、扶養から外れてしまうのではないかと心配になったそうです。
年収が103万円を超えた場合、これまでは扶養から外れたのですが、令和7年の税制改正で、基礎控除や給与所得控除が引き上げられたため、所得税がかからない年収ラインが上がりました。したがって、年収104万円なら扶養の範囲内で確定申告の必要もありません。
では、年収いくらから所得税がかかるようになったのでしょうか。令和6年までの収入に対しては基礎控除が48万円、給与所得控除が55万円(最低額)なので、年収103万円以下であれば所得税はかかりませんでした。
これに対して、令和7年からは基礎控除が95万円(合計所得金額132万円以下の場合)、給与所得控除が65万円(最低額)に引き上げられたので、年収160万円が所得税非課税で扶養の範囲となる収入ラインになりました。つまり、所得税に関しては「年収103万円の壁」がなくなり、あらたに「年収160万円の壁」ができたことになります。
「所得税の扶養」と「社会保険の扶養」
ただし、ひと言で扶養と言っても、主に「所得税の扶養」と「社会保険の扶養」の2つがあり、それぞれ別々の制度で収入の基準も違います。
妻の収入が所得税の扶養内であれば、所得税が非課税であるうえ、夫の所得税の計算で配偶者控除の対象となるので、税金の負担が減ります。一方、社会保険の扶養内であれば、夫が会社員や公務員などの場合、健康保険は夫の扶養家族となり、国民年金の第3号被保険者となるので、妻は保険料を自分で払う必要がありません。
所得税で扶養の範囲となる収入ラインは上がりましたが、社会保険の扶養の範囲はこれまでと変わりません。つまり、勤務先が従業員50人超、週20時間以上の勤務の条件を満たせば年収106万円から、それ以外の場合も年収130万円からは自分で社会保険に加入して、健康保険や年金の保険料を払わなければなりません。
どちらかというと、所得税より社会保険のほうが扶養の範囲から外れた場合の負担増加が大きいので、社会保険の扶養の範囲も意識しておいたほうがよいでしょう。
これから「年収の壁」はどう変わっていくのか?
「年収の壁」に関しては、所得税、社会保険ともに制度が変わる見込みなので、日ごろから注意しておきましょう、
まず、所得税に関しては、令和7年に年収103万円から160万円まで非課税の収入ラインが上がりましたが、令和8年もさらなる引き上げが見込まれます。
社会保険に関しては、2026年10月に「106万円の壁」が撤廃される予定です。
これまで、従業員数51人以上の企業等で、(1)週20時間以上、(2)給与が月額8万8000円以上、(3)2ヶ月以上働く予定、(4)学生ではないという4つの条件を満たすと、扶養から外れて自分で社会保険に加入するルールとなっていました。
この4つの条件のうち「(2)給与が月額8万8000円以上」がなくなるので、主に働く時間で判断するようになります。
「従業員数51人以上」という企業規模の要件も、今後10年かけて段階的に縮小・撤廃し、2035年には勤務先の大小に関係なく、週20時間以上働く場合は社会保険に加入することになると決まっています。
「130万円の壁」に関しては、改正の予定がありません。勤務先や労働時間に関係なく、年収が130万円以上であれば、扶養から外れて自分で社会保険に加入しなければなりません。
まとめ
2025年の税制改正で所得税非課税の年収ラインが上がったため、年収が103万円を少し上回っても、扶養から外れることはなくなりました。今後も非課税の年収ラインが上がる可能性がありますが、社会保険ではより多くの人が自分で社会保険に加入するように改正される予定です。
「扶養の範囲を外れると手取りが減る」というデメリットを気にする人は多いのですが、夫婦で元気で老後を楽しむなら、年金は少しでも多く受け取れるようにしておきたいものです。将来のライフプランも考えて、さまざまな働き方を検討してみてはいかがでしょうか。
出典
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について
執筆者 : 蟹山淳子
CFP(R)認定者
