子どもの独立はライフプラン見直しの好機! 50代・60代から始める「100歳でもお金が残る」これからの家計の整え方
では、具体的にどこから手を付けるのが効果的なのでしょうか。見直しの重要なポイントをファイナンシャルプランナーが解説します。
福本FP事務所 代表、広島県相続診断士 会長、寺院コンサルタント
外資系金融機関を退職後、ファイナンシャルプランナーへ転身。資産運用・ライフプラン・相続・終活と、お客さまの幅広いニーズにワンストップで対応。ミドル・シニア世代、寺院のお客さまのアドバイスを得意とする。人生は一度きり、「今も将来もどちらも楽しむライフプラン」を提案する。
目次
生命保険の見直し:死亡保障は「子どもの生活を守るため」から「家族の未来を想う形」へ
固定費の中で大きな割合を占める代表格が「生命保険料」です。現役の子育て世代であれば、万が一の際にも子どもの教育費や生活費が不足しないよう、数千万円単位の手厚い死亡保障を準備していた方も多いでしょう。
子どもが経済的に自立した今、かつてのような「子どもの生活を全額カバーするための大きな保障」はその役割を終えます。しかし、だからといって子どもへの想いまでなくして、保障を極端に削る必要はありません。
筆者のもとに相談に来られるお客さまからも、「残される配偶者の生活を守りたい」というお声と同時に、「万が一のときには、子どもや孫の未来のために、少しでも応援資金を残してあげたい」という温かい親心を伺うことがよくあります。
大切なのは、誰かを切り捨てることではなく、全員への想いのバランスを整えることです。
これからは、重すぎる生活保障の衣を脱ぎ、「隣にいるパートナーの暮らしを守りつつ、独立した子どもの節目にもそっと手を差し伸べられるような、ちょうどいい規模」へとリサイズしてみましょう。家族を想う温かさはそのままに、今のライフステージに合わせた形に調えることで、家計に無理のないゆとりを生み出すことが可能になります。
1. 「手元資金」と「公的制度」を前提に医療保障を効率化する
次に検討したいのが、医療保険やがん保険の見直しです。ここで考慮すべきポイントは、若い頃と比べた「手元資金(貯蓄)の差」と「公的医療保険制度の充実度」です。
20代・30代の資産形成期には、急な入院や手術が家計に直撃するため、民間の医療保険で手厚く備える必要性がありました。しかし50代・60代となり、これまで蓄えてきた預貯金や、保険見直しに伴う解約返戻金がある程度手元にあるならば、それが何よりの「自前の保障」として機能します。
もちろん、年齢が上がるにつれて健康上のリスクは高まります。だからこそ、現在の資産状況と健康状態のバランスを踏まえた見直しが求められます。
2. 高額療養費制度
日本の公的医療保険には「高額療養費制度」があり、医療費の自己負担額には月ごとの上限が設けられています。一般的な所得層(年収約370万〜770万円・区分)であれば、仮に1ヶ月の総医療費が100万円に達したとしても、実際の自己負担額は8万7430円程度に抑えられます。
このように、一定の手元資金と公的制度を組み合わせれば、医療費の負担は最小限に抑えられます。ただし、長期入院時に個室を利用する場合の「差額ベッド代」や「食事代」などはこの制度の対象外です。民間保険をすべて解約するのではなく、こうした「公的制度でカバーできないリスク」に絞って効率よく加入するのが賢い選択です。
3. 子どもの独立による「支出の減少」を実感する
家計を見直す上で見落とせないのが、子どもの独立に伴う支出の減少です。子どもの学費負担が終わるだけでなく、特に自宅外から大学等に通っていた場合は、毎月の「仕送り」や日々の食費・水道光熱費なども大幅に減少します。
この支出が減った分は、そのまま生活費として消費してしまうのではなく、これまで教育費として毎月支払っていたと思って「未来の自分たちのための資金」に振り向けてはいかがでしょうか。
4. 眠っている預金と浮いたお金で「資産運用」をスタート
保険や家計の見直しによって毎月「2万円」の余力が生まれ、さらに銀行口座に低金利のまま眠っている預金(または保険の解約返戻金)から「200万円」を投資に回せるとしたら、将来の資産はどのように変わるでしょうか。
55歳から70歳までの15年間、年利5%で運用できた場合のシミュレーションを、それぞれの要素に分けて見てみましょう。
(1) まとまった資金200万円を15年運用:約415万円(※年5%の複利計算による理論値)
(2) 毎月2万円を15年間積み立てて運用:約535万円(※金融庁「つみたてシミュレーター」にて試算)
これら2つの仕組みを組み合わせることで、投資元本560万円(初期200万円 + 月2万円×180ヶ月)は、70歳時点で約950万円にまで育つ計算になります。
55歳からでも、人生100年時代を見据えれば15年以上の運用期間を確保できます。「今さら遅い」と守りに徹するのではなく、「お金の寿命が尽きるリスク」に備えて、一部の資産を「増やす場所」に配置し直す視点が極めて有効です。
5. 70歳以降の「運用しながら取り崩す」出口戦略と資産寿命
老後の安心を確実なものにするためには、貯めた資産を70歳以降にどう使うかという「出口戦略」が鍵となります。手にした950万円を一括で現金化して銀行に預けるケースと、運用を継続しながら毎月5万円(年間60万円)ずつ取り崩していくケースを比較してみましょう。
■運用を終了し、0%で取り崩した場合: 85歳で資産が枯渇する(期間:約15年)
■年利5%で運用を継続しながら取り崩した場合: 100歳を迎えてもまだ資産が残る(期間:30年以上持続)
日本人女性の平均寿命は約87歳であり、60歳女性の平均余命は約29年となっています。
単に取り崩すだけでは平均寿命前後で資金が底をつくリスクがありますが、運用を継続しながら引き出すことで、理論上は資産寿命を大きく延ばし、100歳の大節目を迎えてもなお手元にお金が残る仕組みをつくることが可能になります。お金を完全に眠らせず、一部を働かせ続けることが、人生後半戦の大きな盾となります。
6. 見落とせない注意点:高齢期の「認知症リスク」への備え
新NISAの普及に伴い高齢期でも資産運用を続ける方が増える一方、深刻な社会問題となっているのが「認知症リスク」です。
どれほど優れた運用プランであっても、名義人が認知症などにより判断能力が低下したと判断されると、NISA口座を含む金融口座が凍結され、運用の指図や引き出しができなくなるリスクがあります。
これを防ぐため、証券会社によっては「予約型代理人制度」や「家族サポート証券口座」などを導入しており、あらかじめ家族を代理人に指定しておく仕組みや、家族信託といった選択肢もあります。
しかし、これらを一般の方がひとりで比較・準備するにはハードルが高いため、専門家のサポートを受けながら事前に手続きを済ませておくことが重要です。
結論:ライフステージに合わせた「これからの家計の整え方」を
「人生100年時代」において、50代・60代からの時間はまだまだ長く残されています。子どもが独立したタイミングは、これからの人生後半戦に向けた「家計の整え方」を意識する最大のチャンスです。
まずは現在の保険や固定費を整理し、浮いた資金で新NISAなどの資産運用を検討してみましょう。その際、長期運用とセットで考えるべき認知症リスクに対しては、一部の生命保険会社が提供する「保険契約者代理制度」が心強い味方です。
これは、契約者本人の意思表示が難しくなった場合でも、あらかじめ指定された代理人(家族)が解約等の所定の手続きを行える仕組みです。
すべての資産を投資へ回すのではなく、この制度を組み込んだ保険を一部手元に残しておくことで、万が一の「投資口座の凍結リスク」をカバーし、老後資金を途絶えさせないための重要な補完策となります。
守るべき保障は残しつつ、100歳になってもお金が残る仕組みと、万が一の認知症対策を両立させるために、まずは信頼できる専門家に相談し、あなたに最適なプランをデザインしてみてはいかがでしょうか。
出典
金融庁 つみたてシミュレーター
厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆様へ
厚生労働省 令和6年簡易生命表の概況
執筆者 : 福本知輝
福本FP事務所 代表、広島県相続診断士 会長、寺院コンサルタント

