更新日: 2021.12.26 年収
公的医療保険制度の恩恵を最も受けるのは世帯年収いくらの家庭?
名前は聞いたことがあっても、病気やケガで入院したことがない人は、どんな制度なのか分からない場合も多いでしょう。高齢になると病気やケガのリスクも高くなるため、今のうちに正しい知識を身につけておきましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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日本の公的医療保険制度について
日本の公的医療保険制度は、国民皆保険制度を通じて世界最高レベルの保険医療水準を実現しています。日本の国民皆保険は国民の安心・安全な暮らしを保障するために、次の4つを柱として運用されているのが特徴です。
●全ての国民を公的医療保険で保障する
●医療機関を自由に選択できる(フリーアクセス)
●安い医療費で高度な医療を受けられる
●社会保険方式を基本としながら、国民皆保険を実現するために公費を投入する
日本の公的医療保険には、「国民健康保険」「健康保険」「共済組合」「後期高齢者医療制度」「高額療養費制度」などがあります。なかでも本記事では、医療費の過重な自己負担を抑えるために設けられている「高額療養費制度」についてご紹介しています。
高額療養費制度とは
高額療養費制度は、医療費の負担が大きくならないように、病院や薬局などの窓口で支払う医療費が1ヶ月(1日から末日まで)の上限額を超えた場合、その超えた金額を支給する制度です。
上限額は年齢や所得に応じて決められていて、条件を満たせば負担額をさらに減らせる仕組みもあります。日本国民全員が、安心して医療が受けられる社会を維持するため高齢者と若者の間での世代間公平が図られるよう、70歳以上の方の高額療養費の上限額は段階的に見直しが行われています。
年齢や所得によって上限額が変わる
高額療養費制度は、年齢や所得によって上限額が変わります。
・69歳以下の人【図表1】
適用区分 | 1ヶ月の上限額(世帯ごと) |
---|---|
年収約1160万円~ | 25万2600円+(医療費-84万2000円)×1% |
年収約770~約1160万円 | 16万7400円+(医療費-55万8000円)×1% |
年収約370~約770万円 | 8万100円+(医療費-26万7000円)×1% |
~年収約370万円 | 5万7600円 |
住民税非課税者 | 3万5400円 |
・70歳以上の人【図表2】
色が塗られている部分(図表1・2)は同じ条件ですが、70歳以上の人は年収約370万円以下の上限額がさらに細分化されています。
医療費の負担を軽減する仕組みもある
高額療養費制度には、所得が少なく医療費負担が大きい人のために、さらに負担を軽減する仕組みもあります。
ここでは、世帯合算と多数回該当の2つの仕組みについて詳しく解説します。高齢になるにつれて病気やけがのリスクも高くなるため、しっかりと仕組みを理解しておきましょう。
世帯合算
世帯合算とは、同じ世帯であれば、同月に受診した病気やケガの療養費を合算できる制度です。家族全員の療養費が自己負担額を超えていれば、「高額療養費支給申請書」を提出することで差額が支給されます。
世帯合算のポイントとなる「世帯」とは、住民票上の世帯ではなく「同じ健康保険に加入している」世帯です。また、69歳以下の人は、2万1000円を超えた自己負担のみ合算されるため、申請の際には気を付けてください。
多数回該当
多数回該当は、過去12ヶ月以内に3回以上、医療費の上限額に達した場合、4回目から上限額が下がる制度です。多数回該当の上限額は、図表3を参照ください。
【図表3】
適用区分 | 多数回該当の上限額 |
---|---|
年収約1160万円~ | 14万100円 |
年収約770~約1160万円 | 9万3000円 |
年収約370~約770万円 | 4万4400円 |
~年収約370万円 | 4万4400円 |
住民税非課税者(69歳以下) | 2万4600円 |
長期的な通院や入院が必要な人にとって、多数回該当はとても助かる制度です。なお、70歳以上の住民税非課税者には多数回該当は適用されません。
高額療養費制度のポイントは年収770万円
公的医療保険制度の1つである高額療養費制度は、年齢や所得によって上限額が変わります。年収770万円を超えると、その下の年収約370~約770万円の世帯の上限額と比べると倍近く変わることから、恩恵を最も受けるのは「年収約370~約770万円の世帯」だといえるでしょう。
日本の公的医療保険制度は、多くの仕組みや制度があります。病気やケガで通院するときは、一度どんな制度が使えるのか、調べてみることをおすすめします。
【出典】
厚生労働省保健局
厚生労働省保健局 我が国の医療保険について
厚生労働省保健局 高額療養費制度を利用される皆さまへ
日本医師会
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー