更新日: 2022.03.25 年収

年収850万円ラインとは? 税制改正によって大きくなった税金格差

年収850万円ラインとは? 税制改正によって大きくなった税金格差
2020年の税制改正により、年収が高い会社員や公務員は改正前と比べて税負担が増えることになりました。税制改正で基礎控除が10万円引き下げられて所得制限が設定され、給与所得控除も引き下げられたためです。
 
この税制改正の影響を大きく受け始めるのが「年収850万円」のラインです。
 
ここでは、2020年から適用された税制改正の主な内容と、増税・減税などの影響を受ける人について解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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中村将士

監修:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

2020年の税制改正の主な内容とは

2020年1月から税制改正によって、基礎控除額や給与所得控除額が変更になりました。基礎控除額は引き上げられましたが所得制限が設けられ、給与所得控除額は引き下げられています。給与所得者は自身の手取りに影響するため、税制改正の内容を把握しておくことは大切です。
 
ここでは、2020年の税制改正の主な内容について見ていきましょう。

 

基礎控除は10万円引き上げ

基礎控除は、確定申告などで所得税額を計算する際に、所得額から差し引ける控除の1つです。2020年の税制改正によって、基礎控除額は10万円引き上げられ、改正前の38万円から48万円になっています。

 

基礎控除に所得制限が設けられる

税制改正によって、基礎控除に所得制限が設けられました。2020年の税制改正前までは、所得額に関わらず、基礎控除額は一律38万円でしたが、税制改正後は所得額に応じて基礎控除額が変わることになりました。また、所得額が2500万円を超えると、基礎控除額は0円となります。
 
図表1は、税制改正前・改正後の所得額と基礎控除額です。
 
図表1

    

所得額 基礎控除額
改正前(2019年分まで) 改正後(2020年分から)
2400万円以下 一律38万円 48万円
2400万円超2450万円以下 32万円
2450万円超2500万円以下 16万円
2500万円超 0円

※国税庁「基礎控除」より筆者作成

 

給与所得控除の引き下げ

給与所得控除は、会社員や公務員などの給与収入に適用される控除です。2020年の税制改正で、給与所得控除が一律で10万円引き下げられました。
 
税制改正前と改正後の収入に応じた給与所得控除額は、図表2のとおりです。
 
図表2

    

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
改正前(2019年分まで) 改正後(2020年分から)
162万5000円まで 65万円 55万円
162万5001円から180万円まで 収入金額×40% 収入金額×40%−10万円
180万1円から360万円まで 収入金額×30%+18万円 収入金額×30%+8万円
360万1円から660万円まで 収入金額×20%+54万円 収入金額×20%+44万円
660万1円から850万円まで 収入金額×10%+120万円 収入金額×10%+110万円
850万1円から1000万円まで 収入金額×10%+120万円 195万円(上限)
1000万1円以上 220万円(上限) 195万円(上限)

※国税庁「給与所得控除」より
 
税制改正で給与所得控除額が10万円引き下げられただけでなく、上限が220万円から195万円に減り、上限が適用される収入金額が1000万円超から850万円超へと変更されました。
 
年収850万円以下の会社員は、これまでより給与所得控除額が10万円少なくなります。また、年収850万円超の方の給与所得控除額は195万円が適用されます。

 

税制改正によって生じる税金格差

税制改正の影響を大きく受けるのが、年収が850万円を超える会社員や公務員です。給与所得控除額変更の影響を受け、改正前と比べて税負担が増えることになります。
 
一方、給与所得控除の変更や基礎控除の段階的減額の影響を受けない個人事業主などは、税負担が減る可能性があります。
 
ここでは、税制改正によって増税になる人、減税になる人について見ていきましょう。

 

増税になる人

会社員や公務員で年収が850万円を超える人は税制改正により増税となります。例えば、年収1000万円の会社員の場合、改正前と改正後で控除額は図表3のように変わります。
 
図表3

税制改正 基礎控除 給与所得控除
改正前 38万円 220万円
改正後 48万円 195万円

 
基礎控除と給与所得控除の合計は、改正前の258万円に対し、改正後は243万円と15万円少なくなります。控除が15万円減ると、課税所得が15万円増えるため増税となります。

 

減税になる人

税制改正によって減税になるのは、課税所得2400万円以下の個人事業主やフリーランスの人です。課税所得2400万円以下は税制改正で基礎控除額が10万円上がっているため、改正前より課税所得が10万円少なくなります。なお、個人事業主やフリーランスは給与所得ではないため、給与所得控除の減額は影響がありません。

 

税制改正により年収850万円を超える会社員は増税

2020年の税制改正で「基礎控除の10万円引き上げ」「基礎控除の所得制限」「給与所得控除の10万円引き下げ」「給与所得控除の上限額と上限が適用される収入の引き下げ」などの変更がありました。
 
これにより、会社員や公務員などの給与所得者は年収850万円を超えると、改正前と比べて税負担が増えることになります。

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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