更新日: 2022.11.10 年収
月収30万のうち「固定残業代」が8万!これってブラックですか?
固定残業代の制度は労働者にとって、有利になる場合と不利になる場合があるのです。そこで、「月収30万円のうち固定残業代が8万円」の場合を例に取って固定残業代制度を説明していきます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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固定残業代とは
固定残業代とは、一定時間分の残業代を固定額であらかじめ支払う方法です。例えば、月給30万円のうち8万円は固定残業代として支払うというような場合です。この8万円の固定残業代については、何時間分の残業代を想定しているのかも決められています。この例では45時間分という取り決めだったとしましょう。
この固定残業代が適正なものなのかどうかを判断するには、まず、定められている固定残業時間に対して固定残業代が適正な金額であるかどうかをチェックすることが必要です。もし、著しく低い金額で設定されているような場合は、労働者に不利な取り決めだといえます。
先の例では、45時間分が8万円ですので、時給に換算すると1777円です。この金額は各都道府県の最低賃金を大幅に上回っており、著しく低いとはいえません。
したがって、この例は金額面でいえば適正なものといえます。実際には月の残業時間が45時間に達していない場合でも8万円は支払われるので、残業時間が少なかった月には労働者にとって有利な結果となるのです。したがって、固定残業代だから一概にブラック企業ということではなく、この例ではホワイト企業だともいえます。
固定残業代だからいくら残業しても追加は支払われない?
固定残業代が適正なものであるかどうかを判断するもう一つ重要なポイントは、定められている固定残業時間を超えて労働した場合、追加の残業代が支払われるかどうかです。先の例でいえば、45時間超の残業をした場合に、8万円の固定残業代以外に時間計算した残業代が支払われるのかどうかについて注意が必要となります。
もし、支払われないのであれば、制度を悪用した“ブラック企業”であるといって差し支えないでしょう。実は固定残業代のこのような制度悪用は以前から続いていたため、固定残業代とブラック企業のイメージが結びついているのです。
このような制度の悪用については、平成29年7月7日に下された最高裁判決で明確に違法であると判断されました。また、同年に出された厚生労働省の通達でも、定められた残業時間を超えて労働した場合にも固定残業代しか払わない会社のやり方を「不適切な運用」とし、これを防ぐ必要があることが示されています。
最高裁判例も厚生労働省も、固定残業代の制度自体を違法としているわけではありません。適切に運用している場合は何ら問題ないのです。どんなに残業をしても固定残業代以上の残業代は払わないという運用を否定しているのであり、このような運用をする企業こそがブラック企業だといえるのです。
ブラックかホワイトかは固定残業代の運用次第
固定残業代を導入していても、それだけでブラック企業になるわけではありません。運用の仕方によっては、労働者に有利な“ホワイト企業”になる場合もあります。
問題は、固定残業代の金額が適正なものかどうか、また、決められた時間以上に残業した場合に固定残業代以外の残業手当が支払われるかどうかです。著しく金額が低い場合、またどんなに残業しても固定残業代以上の残業代が支払われない場合は、明らかにブラック企業となります。
出典
裁判所 裁判例結果詳細(事件番号 平成28(受)222)
厚生労働省 時間外労働等に対する割増賃金の適切な支払いのための留意事項について
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部