更新日: 2022.12.28 年収

【保険相談】年収300万円のひとり親です。働けなくなった時のために保険でどのくらい備えておけばよいでしょうか

【保険相談】年収300万円のひとり親です。働けなくなった時のために保険でどのくらい備えておけばよいでしょうか
Aさんは5歳の子を持つシングルマザーです。働けなくなった場合に備えて、保険に加入したいけれど選択肢が多く迷っていると、相談に来られました。
 
Aさんにアドバイスした内容をお伝えします。
前田菜緒

執筆者:前田菜緒(まえだ なお)

FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士

保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)

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働けなくなった時を想像してみる

まず、働けない状態とは、どのような状態でしょうか。
 
治療期間が長い病気としてガンや脳卒中があります。確かに、ガンになる可能性は否定できませんが、ガンになっても治療しながら仕事をしている人は多くいます。東京都福祉保健局の調査(*1)によると、「がん罹患がわかった後の就労状況」として、仕事を継続している人の割合は68.7%でした。
 
また、脳卒中においても厚労省の調査(*2)によると、脳卒中を発症した労働者は発症から3~6ヶ月頃、1年~1年半頃のタイミングで復職する場合が多く、最終的な復職率は50~60%だそうです。
 
これらのことから、ガンや脳卒中など比較的重い病気でも、まったく働けないことはないかもしれません。実際、Aさんの職場でもガンの治療をしながら働いている人もいるようで「確かに病気になったからといって、まったく働けないわけではないですね」とおっしゃっていました。
 
また、ガンや脳卒中以外に考えられる病気としては心の病気があります。心の病気になるかどうかは、Aさんの性格や職場環境によるかと思いますが、独立行政法人労働政策研究・研修機構(平成25年)の調査(*3)によると、復職率は約46%のようです。
 

公的保険を確認する

ガンにしろ、脳卒中にしろ、心の病気にしろ、会社員の場合、仕事を休むと傷病手当金の制度があることを忘れてはいけません。
 
会社員の場合、病気やけがで仕事を3日連続して休み4日目以降も休んだ場合、税引き前給料の3分の2の金額が健康保険から支給されます。傷病手当金からは社会保険料は差し引かれますが、非課税であるうえ、通算1年半支給されます。
 
もちろん、傷病手当金の中から治療費を払っていかないといけませんが、Aさんはひとり親のため医療費負担は現在1割です。また1ヶ月に医療費の自己負担が高額になった場合、一定額を超えると超えた金額は、後から戻ってくる高額療養費制度がありますが、Aさんの自己負担限度額は5万7600円です。公的な保障だけでも手厚いことがわかります。
 

どのような保険に入るべきか

とはいえ、高額療養費ではベッド代や食事代など健康保険適用外の支出は対象外です。また、傷病手当金で、それまでと同じ生活水準を保つのは厳しいでしょう。公的保障だけでは心配なら、就業不能保険や所得補償保険に加入されてはいかがでしょうか。
 
就業不能保険は、就業不能状態が60日など一定期間続いた場合に保険金を受け取れる保険です。所得補償保険も、就業不能時に保険金を受け取りますが、所得を補償するものなので、自分の収入以上の保険金を設定できません。
 
そのほか、医療保障を手厚くする方法もあります。新たに医療保険に加入し、所定の状態になった時に、以後の保険料の支払いが不要になる保険料払い込み免除特約をつけたり、3大疾病になった時に一時金が支払われる保険に加入したりすることも有効でしょう。
 

保険以外で備える方法も

しかし、保険だけが解決の選択肢ではありません。Aさんは、現在、元夫から養育費をもらっています。Aさんが働けなくなった時は、元夫にお子さんを引き取ってもらう方法もあるでしょう。そうすれば少なくともお子さまの生活レベルは保証される可能性があります。
 
ひとり親ですから、保険で準備する考えは大切です。しかし、まずは働けない場合をイメージし、保険に加入すればその問題は解決するのか考えてみてください。
 
就業不能保険や所得補償保険の保険金支払いのハードルは決して低くありません。思っている内容と違うということがないように、検討の際は、免責期間、保険金支払期間や、就業不能とはどのような状態をさすのか、しっかり確認してください。
 

出典

(*1)東京都福祉保健局 東京都がん医療等に係る実態調査報告書(平成31年3月)
(*2)厚生労働省 職場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(令和4年3月改訂版)
(*3)独立行政法人 労働政策研究・研修機構 ホームページ〜「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」調査結果〜
 
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ

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