更新日: 2023.11.11 年収
出世したくない若者が増えている!? 「管理職」になると一般社員に比べてどのくらい収入が増える?
この記事では出世拒否の背景について、また管理職の収入などに関する現状などを考えてみます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
将来、役職者になりたくない若者はどれくらいいる?
東晶貿易株式会社が運営する転職メディア 「転職サイト比較plus」 が20代の男女を対象に行ったアンケート調査 (2022年6月) の結果では 「将来役職者になりたいと考えますか?」 という質問に対して 「いいえ」 と回答した割り合いは全体の77.6%と大多数を占めていました。
昭和のように多くの方が、がむしゃらに働き、出世を目指した時代に比べると驚くような結果といえるかもしれませんが、現在では出世を望まない若者が昔よりも増えていると考えられます。
出世をしたくない理由としては 「責任のある仕事をしたくない」 が最も多く、続いて 「プライベートを大事にしたい」 となっていました。
この2つの回答が目立って多くなっていることからは、近年の若者は重い責任を負ってまで出世したくない、出世して仕事の量や時間が増えるよりもプライベートを優先したい、と考える傾向が強いとみてとれます。
ただし、出世は望んでいなくても、お金が欲しくないというわけではないようです。
出世をしたくない理由のうち 「給料UPに興味がない」 という回答は、ほかと比べて極端に少なくなっているため、適度なお金と時間がある、いわばワークライフバランス重視の生活を求めているのではないでしょうか。
管理職になると一般社員に比べてどれくらい年収が増える?
同調査の結果では、20代で出世を望まない方が全体の約8割を占めている一方で、出世したいと回答している方もいます。
理由としては 「給料を上げたいから」 という回答が圧倒的に多くなっています。では統計をもとに管理職に出世した場合、役職のない一般職と比べてどれくらい年収が増えるのか確認してみます。
厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査の結果から試算すると、非役職者の平均的な年収 (企業規模10人以上の企業での定期給与額を年収に換算し、年間賞与、その他特別給与額を合計した金額) は451万2000円となります。
非役職者の平均年収に対して、課長は783万6800円、さらに部長級になると913万2800円と増えていきます。
統計をもとにした平均ではありますが、一般職との差は課長で332万4800円、部長では462万800円と、出世によって年収が大幅にアップすることが想定されます。
出世しても労働時間が増えないこともある
前述したアンケート調査の結果では、若者が出世したくない理由の1つに 「プライベートを大事にしたい」 とありますが、出世をしたからといってプライベートの時間が必ずしも減るとは限りません。
例えば、賃金構造基本統計調査による非役職者の1ヶ月の平均労働時間 (企業規模10人以上の企業での所定内実労働時間と超過実労働時間を合計したもの) は178時間です。それに対して、課長級と部長級の場合は172時間となっており、平均的な労働時間でいえば、むしろ非役職者よりも管理職のほうが若干、少なくなっています。
もちろん統計上の平均のため、企業や業界、職種などによっても異なりますが、一概に出世をしたことで労働時間が増え、プライベートの時間がうばわれるというわけでもなさそうです。
まとめ
昨今の若者の8割近くが出世をしたくないという理由については、お金がいらないわけではなく、管理職としての責任の重さや、プライベートよりも仕事を優先せざるを得なくなるような働き方をさけている結果と考えられます。
統計上では、課長や部長といった管理職の平均年収は非役職者の1.7倍から2倍程度ですが、労働時間については、ほぼ横ばいとなっています。
統計のように出世をしても労働時間が大きく増えることなく、仕事とプライベートを両立することができる社会が一般的になれば、出世を望む若者も多くなるのかもしれません。
出典
法務省 e-Stat 令和4年賃金構造基本統計調査
東晶貿易株式会社 転職メディア 「転職サイト比較plus」 「出世欲」に関するアンケート
執筆者:柘植輝
行政書士