大学に行くために「奨学金を借りる」くらいなら、高卒で働いたほうが「収入面」ではいいでしょうか?
配信日: 2024.04.11
そこで今回は、奨学金を利用して大学に進学しても大丈夫なのか、有利になる点や返済への懸念について考えてみました。
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執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
学歴別に見ると大学進学した方が有利である
「やりたい学問がある」「あこがれの学校に行きたい」など、大学に進学する理由は人それぞれです。その中でも特に多くの方が理由とするものの一つに、将来の職業に関することがあります。「より多くお金を稼げる職業に就きたい」「安定している職業に就きたい」といった目的のために大学進学する方は珍しくありません。
将来的な賃金という観点から見ると、大学進学をした方が明らかに有利となります。厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」によると、学歴別に見た男女計の賃金は高校卒業で27万3800円、大学卒業では36万2800円です。賃金の差は月間で8万9000円、年間では106万8000円となります。仮に賃金の額が変わらず40年間働き続けるとしたら、単純計算でも4000万円以上の差になります。
統計上から想定される大まかな年収のみでの試算ではありますが、生涯年収だけで見れば大学進学した方が有利となる可能性が高いでしょう。
奨学金を踏まえて考えるとどうなる?
収入が上がっても、その分奨学金の返済があるのなら結局意味がないのでは? と思われるかもしれませんが、この点については違うといえます。
例えば、有利子の第二種奨学金を月額12万円、年利3%で4年間借りた場合、返済は毎月3万2297円を20年間かけて行います。このとき総返済額は775万1445円となります。
先に見たとおり、高卒と大卒の収入差は年間106万8000円のため、7年程度で奨学金返済分の差は埋めることができます。このように考えると、収入面で見れば、奨学金を借りてでも大学へ行く意味は大いにあるといえるでしょう。
奨学金を返せないことってないの?
奨学金を借りる場合は返済時のことも考えなければなりません。きちんと返済できるかどうか不安になる方もいらっしゃるかもしれませんが、過度に心配する必要はありません。
独立行政法人日本学生支援機構の調査によると、延滞者のうち69.7%の方が年収300万円以下となっています。平均的な大学卒の収入であれば、延滞の心配はさほどないと想定されます。
また、万が一けがや病気、失業などで収入が減少したり途絶えたりした場合でも「減額返還制度」や「返還期限猶予制度」といった、無理なく返還が続けられるような制度が整えられています。
これらのことから、奨学金の返済が不可能になることのリスクを過度に心配する必要はないと思われます。
とはいえ、奨学金を4年間借りると相当な額になることは事実であるため、返済リスクについてはしっかりと考えておく必要があるでしょう。
まとめ
大卒と高卒との年収を比較した統計上のデータを見る限り、奨学金を利用してでも大学に行く価値は十分にあるといえるでしょう。
ただし、大学に行けば必ずしも高い収入を得られるというわけでもありません。けがや病気など、不測の事態に見舞われることもあり得ます。
奨学金を利用して大学進学をするに当たっては、奨学金の返済リスクも踏まえ、事前にしっかりと考えておく必要があるでしょう。
出典
厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査の概況
独立行政法人日本学生支援機構
大学 ・ 返還例
令和元年度奨学金の返還者に関する属性調査結果
執筆者:柘植輝
行政書士