更新日: 2024.06.07 年収
保育士10年目だけど、昇給は「2万円」! 保育士の給与は“上がりにくい”の? 民間企業との比較や退職理由も解説
本記事では、保育士の給与の実態や職場環境の問題点について解説します。働く親の味方である保育士への理解を深めましょう。
執筆者:渡邉志帆(わたなべ しほ)
FP2級
保育士の給与は上がりにくい
保育士の給与水準は、民間企業の平均と比べると決して高くありません。さらに勤続年数が長くなっても、給与が上がりにくいようです。具体的な数字を見ていきましょう。
民間企業平均との比較
厚生労働省が公表している「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、全産業と保育士の賃金は以下の通りです。
●保育士:26万4400円
●全産業平均:31万8300円
保育士の賃金は全体より、5万円以上低い水準となっています。
経験年数による給与の推移
勤務が長くなれば給与が上がっていくのが一般的ですが、保育士は上がり幅が小さいようです。厚生労働省の調査によると、経験年数による保育士の給与の推移は、図表1のようになっています。
図表1
経験年数 | 所定内給与額 |
---|---|
1~4年 | 23万7200円 |
5~9年 | 25万4800円 |
10~14年 | 26万4400円 |
15年~ | 30万4000円 |
厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査より筆者作成
図表1のとおり、1~4年目の23万7200円から、10~14年目の10年間で、給与は2万7200円しか上がっていません。
長年勤務しても給与水準があまり上がらなければ、仕事へのモチベーションが低下し、退職に踏み切る人が増えても不思議ではありません。
保育士を辞めた理由
東京都福祉局による「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」によると「過去に保育士として就業した者」の「保育士を辞めた理由(複数回答)」は以下となっています。
●2位:仕事量が多い(23.1%)
●3位:給料が安い(22.1%)
●4位:健康上の理由(体力含む)(20.6%)
先述した給料の低さは第3位と、保育士を辞めることを後押ししているようです。仕事量の多さから、労働時間が長くなったり、家に仕事を持ち帰ったりしなければならず、体力面の不安を感じる人も多いのかもしれません。
人手不足が続いている
保育士は人手不足が常態化している職種でもあります。2022年10月時点の有効求人倍率は2.49倍と、全職種の平均1.35倍を大きく上回っています。人手不足から、給与が低いなど不満があっても簡単には辞められない環境にあると言えそうです。
一方で、厚生労働省は保育士の処遇改善に向けた取り組みを進めています。「処遇改善加算」という手当を支給し、保育士の給与アップを後押ししているのです。経験年数に応じて手当が加算されるなど、きめ細かい支援により今後の保育士の職場環境が整うことが期待されています。
まとめ
保育士の給料は全職種の中で低い水準にあり、長く勤めても給与が大きく上がらないという現状にあります。人手不足により辞めづらい環境にあるものの、一方では、国を挙げた処遇改善の取り組みが進められています。今後のさらなる改善に期待しましょう。
出典
厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査
東京都福祉局 「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」
こども家庭庁 保育士の有効求人倍率の推移(全国)
執筆者:渡邉志帆
FP2級