更新日: 2024.07.12 年収

父が「昔はボーナスの額面と手取りが同じだった」と言っています。私は今年「額面50万円」から10万円ほど引かれていたのですが、本当にそんな時代があったのですか? そのまま受け取れたらかなり助かります…

父が「昔はボーナスの額面と手取りが同じだった」と言っています。私は今年「額面50万円」から10万円ほど引かれていたのですが、本当にそんな時代があったのですか? そのまま受け取れたらかなり助かります…
2024年の夏のボーナスはもう支給されたでしょうか。物価高騰の昨今です。給与とは別に現金が入ってくるボーナスは貴重な生活の糧となっている人も多いでしょう。ただ、ボーナスの明細を見て、額面金額と手取り額の差にがく然としたことはありませんか? 仕方ないこととは言え「こんなにも天引きされるのか……」と不満に思うこともあるかもしれません。
 
そしてここでさらに驚く事実があります。以前はボーナスの額面金額と手取り額が、ほぼ同じだった時代があったのです。人によっては、「そんなことあり得るの?」と思ったでしょうか。本記事で解説します。
佐々木咲

執筆者:佐々木咲(ささき さき)

2級FP技能士

ボーナス50万円の手取りは約40万円

現在、ボーナスが額面で50万円の人であれば、手取り額は約40万円です。給与の手取り額は額面金額の7割から8割と言われていますが、ボーナスについても同様の考え方で差し支えありません。
 
ボーナスから天引きされる税金や社会保険料の種類は給与とほぼ同じで、所得税、健康保険料(40歳以上は介護保険料も)、厚生年金保険料、雇用保険料となっています。ただ、住民税については基本的にボーナスからの天引きはないので、給与よりも若干手取り額の割合は多くなります。
 
ボーナスが給与1ヶ月分以上支給される場合であれば、毎月の給与よりボーナスのほうが額面上の金額は大きくなります。金額が大きいほど天引き額も比例して大きくなるので、給与に比べてボーナスは「いつもの給与以上に天引きされていないか?」と感じることもあるかもしれません。
 
しかし、実際は天引きの割合はほぼ変わらず、むしろ住民税がない分、ボーナスの方が額面に対する手取りの割合は大きい場合が多いのです。
 

昔はボーナス50万円の手取りは約47万円

昔のボーナスは額面の金額と手取り額がほぼ同じだった、というのは本当です。なぜなら、ボーナスから社会保険料が引かれていなかったからです。
 
よって、ボーナスから天引きされるのは所得税のみであったため、額面50万円にかかる源泉所得税は約3万円(前月の社会保険料控除後の給与が30万円、扶養親族1人、令和6年分の源泉徴収税額表により計算)となり、手取りは約47万円となります。
 
額面50万円に対して手取り47万円であれば「ほぼ同額」と捉えることもできそうです。
 

ボーナスから社会保険料が引かれるようになったのは約20年前

しかし、「給与には社会保険料がかかって、ボーナスにはかからない」となると、給与を少なくしてボーナスを多くする会社が出てきます。その方が会社も従業員も社会保険料の負担が少なくて済むからです。
 
特に会社については、従業員の社会保険料を支払うことに直接的なメリットはありません。可能であれば年収すべてをボーナスで出したいと考えるほどだったのではないでしょうか。
 
これでは明らかに社会保険料負担の不公平が起こります。そういった背景もあってか、2003年4月から現在のようにボーナスからも社会保険料が引かれるようになったのです。
 

実は昔も0.5%だけ社会保険料が引かれていた

ボーナスに対する社会保険料の天引き計算が、現在と同様の仕組みになったのは2003年度からですが、実は1994年度からすでに「特別保険料」という名目の社会保険料は天引きされていました。
 
ただ、今では考えられないわずか1%の料率であり、ボーナス50万円から天引きされる特別保険料は2500円(労使折半のため0.5%)でした。
 

まとめ

2003年3月までは「ボーナスの額面と手取りはほぼ同じ」でした。会社によって計算方法が異なるわけではなく、単に国の法律が、「ボーナスに社会保険料はかからない」という違いがあったためです。現在の20代・30代の人にとっては夢のような話に感じられるかと思いますが、20年前の話です。40代以上の人は経験があるでしょう。
 
少子高齢化による社会保障費の増大が問題となっている現代、今後は社会保険料が増加しても、減少することは考えにくいでしょう。「ボーナスの額面がほぼ手取りだったなんてうらやましい」と感じる人も多いかと思います。
 
ただ、支払った厚生年金については将来自分の年金受給額に反映されますし、せっかくもらったボーナスなので、よく検討して大切に使いたいですね。
 

出典

国税庁 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和6年分)
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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