更新日: 2024.09.29 年収

新しいパート先では給料が“手渡し”です。「20万円以上」の現金を持ち帰るのが不安なのですが、小さな会社では「普通」なのでしょうか?

新しいパート先では給料が“手渡し”です。「20万円以上」の現金を持ち帰るのが不安なのですが、小さな会社では「普通」なのでしょうか?
従業員の給与を口座振込で支払う会社が多いなか、給与封筒に現金を入れて手渡しする会社もあります。給与の手渡し自体は合法ですが、従業員にとってはセキュリティ面などのデメリットもありそうです。本記事では、給与の現金手渡しについて、法的根拠とメリット・デメリットを紹介します。
橋本典子

執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)

特定社会保険労務士・FP1級技能士

給与の手渡しは違法?

多くの会社では、毎月の給与を従業員の銀行口座に振り込む方法で支払っています。しかし一部の会社では、給与封筒に入れた現金を手渡しているようです。給与を振り込まず、現金で支払うことは違法ではないのでしょうか?
 

手渡しは違法ではない

結論から言えば、給与の手渡しは違法ではありません。むしろ労働基準法にかなった渡し方ともいえます。労働基準法第24条では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とされているからです。「通貨で」とは、現金で支払うことを意味しています。
 

銀行振込も違法ではない

とはいえ、銀行振込も違法ではありません。なぜなら労働基準法は、第24条のただし書きの中で一定の場合は通貨以外の支払い方を認めるとし、労働基準法施行規則で「労働者の同意を得た場合には、労働者が指定する銀行その他の金融機関の預金または貯金への振込みを認める」としているからです。
 
つまり「現金手渡し」も「口座への振込」も、どちらも合法なのです。ただし振込の場合は、従業員が振込に同意している必要があります。
 

「手渡し」は減少

以前、給与は「現金手渡し」が主流でしたが、時代とともに「振込」が増加しました。理由としては、セキュリティ上の問題や事務処理負担の軽減が考えられるでしょう。現在も給与を現金で渡している会社は、少数派だと思われます。
 

「手渡し」の理由

今も給与の現金手渡しをしているのは、規模が小さく従業員数も少ない会社が多いようです。従業員数が少なければ、多額の現金を銀行から引き出してくる必要もなく、給与封筒に詰める手間も少なく済むため、会社側にそれほど負荷がかからないのです。また、振込手数料の節約という理由もあるかもしれません。
 
なお、日雇いや臨時雇いの従業員が多い会社では、現金手渡しのほうが便利な面もあります。
 

従業員側のメリット・デメリット

次に、従業員側の目線で「給与の現金手渡し」を考えてみましょう。
 

現金手渡しのメリット

従業員としては、給与を現金で受け取れば、わざわざ銀行に行って引き出す手間がかかりません。また預金から現金を引き出す場合、平日の遅い時間や土日祝日などは時間外手数料がかかることが多いため、その分の節約にもつながるでしょう。
 

手渡しのデメリット

逆に、家賃や水道光熱費を口座引き落としにしている人などは、手渡された給与を銀行に預けにいく手間がかかります。また、給料日に多額の現金を持ち歩くことになるため、紛失したりひったくりに遭ったりしたときの損害が大きくなるでしょう。
 
給与額が比較的少ない人は現金手渡し、給与が多額の人は口座振込に、それぞれメリットが大きいのかもしれません。
 

まとめ

給与の現金支払いは労働基準法にかなった方法ですが、現在は少数派になっています。現金手渡しにはメリットもデメリットもありますが、従業員が口座振替を望んでいる場合は、合理的な理由とともに会社に伝えてみれば、状況が変わる可能性があるでしょう。
 

出典

e-Gov法令検索 労働基準法
e-Gov法令検索 労働基準法施行規則
 
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

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