更新日: 2024.11.21 年収
消防士の友人が「出動したら700円支給される」と言っていました。兄が勤めている消防署では「1回300円」だそうですが、地域によって異なるのでしょうか?
今回は、消防士の出動手当の内容や地域差、最終的な年収などについて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
出動手当には地域差がある
消防士の出動手当の算定方法は、地域によって異なります。ここでは具体例として、東京都と神奈川県横須賀市の出動手当を取りあげます。
東京都の出動手当は「東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例」で規定されており、算定方法は次の3パターンです。
●1回あたり最大700円
●1時間あたり最大900円
●1日あたり最大5500円(原子力災害など、特定の条件下では最大4万2000円に引き上げ)
支給額は、東京都人事委員会で承認を得たのち、「東京都規則」に基づいて決定されます。
これに対し、神奈川県横須賀市の災害出動手当は、「消防吏員特殊勤務手当支給条例」によって、1回あたり300円と決められています。東京都のように、時間や日数に対応した料金形態は設けられていません。ただし、深刻度が高い災害にあたる場合は、「出動した日数×2300円」が追加支給されます。
また、支給額に地域差があるのは出動手当だけではありません。特殊勤務手当には「救急手当」や「火災調査手当」なども含まれ、これらの金額も地域ごとに異なります。
出動手当以外にもさまざまな手当が設けられている
出動手当以外の特殊勤務手当について、例えば「東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例」では、次の9つが定められています。
・救急手当:1回あたり最大710円
救急事故などに出動し、救急業務などに従事した職員が対象。
・火災調査手当:1日あたり最大330円
火災現場などで火災原因などの調査に従事した職員が対象。
・査察業務手当:1日あたり最大300円
消防対象物に立ち入り、火災予防のため、立ち入り検査などに従事した職員が対象。
・救出救助手当:1日あたり最大4000円または1回あたり最大840円(例外あり)
災害などにおける救出救助や、国際緊急援助などに従事した職員が対象。
・高所活動危険手当:1日あたり最大220円
はしごなどを使い、高所での消防活動などに従事した職員が対象。
・ヘリコプター従事手当:1時間あたり最大5600円(例外あり)もしくは1日あたり最大1230円
ヘリコプターに搭乗し業務に従事した職員および、ヘリコプターの点検、整備に従事した職員が対象。
・管制手当:1日あたり最大200円。
消防部隊の運用などの管制業務に従事した職員が対象。
・夜間緊急招集手当:1回あたり最大1300円
正規の勤務時間外に、緊急に呼び出され、業務に従事した職員が対象。
・深夜特殊業務手当:1勤務あたり最大490円
正規の勤務時間が、22時から翌朝5時のあいだにかかる交替制勤務に従事した職員が対象。
一方、神奈川県横須賀市の「消防吏員特殊勤務手当支給条例」による規定では、救急出動手当は1回あたり150円(例外あり)、国際緊急援助隊手当は1日あたり4000円です。
また、人命救助などのため潜水作業に従事した職員に、1時間あたり最大1000円を支給する「潜水手当」が設けられています。特殊勤務手当は、金額だけでなく、内容にも地域差があることが分かるでしょう。
なお、総務省の「令和5年 地方公務員給与の実態」によると、「消防職」の特殊勤務手当の平均月額は7898円です。
消防士の平均年収は約640万円
複数の手当が設けられている消防士ですが、最終的な収入が気になった人もいるでしょう。
総務省の「令和5年 地方公務員給与の実態」によれば、消防職の「給料月額」は平均30万4233円、特殊勤務手当を含む「諸手当月額」は平均10万991円です。総額は40万5224円で、年額にすると486万2688円となります。これに、期末手当と勤勉手当の平均年額152万251円を加えた平均年収は、638万2939円です。
また、寒冷積雪の厳しい地域の職員には、上記に加えて平均8万3752円の「寒冷地手当」が支給されます。
なお、全一般職員の平均年収を同様の方法で計算すると、値は641万6047円です。よって、消防士の平均年収は、全一般職員の平均を下回っていることが分かります。
出動手当を含む特殊勤務手当には地域差がある
出動手当を含む特殊勤務手当には、金額、支給方法などに地域差があります。例えば出動手当は、東京都は1回あたり最大700円、1時間あたり最大900円、1日あたり最大5500円の3パターンで支給されますが、神奈川県横須賀市の災害出動手当は1回あたり300円です。
なお、総務省の調査によれば、消防職の特殊勤務手当の全国平均月額は7898円となっています。これに住居手当や通勤手当などを加えると、諸手当の合計は月平均10万991円となります。
ただし、消防士の平均年収は638万2939円であり、全一般職員の641万6047円を下回ります。
出典
東京都例規集 東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例
横須賀市 消防吏員特殊勤務手当支給条例
総務省 令和5年 地方公務員給与の実態 第2 統計表[附帯調査関係] 諸手当関係 第13表 団体区分別,職種別職員の平均給与月額及び平均諸手当額(371、372ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー