年収「800万円」で「幸福度が頭打ち」になると聞いたことがあります。稼げば稼ぐほど生活が楽になり幸福度が増すわけではないのでしょうか?
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収入と幸福度の関係
収入と幸福度の関係を探る研究は、数多く存在します。そのなかでも有名なものに、心理学者ダニエル・カーネマン氏による調査があります。この研究では、米国における収入と主観的幸福度の関係を分析し、年間収入7万5000ドル(当時の日本円で約800万円)を境に幸福度の増加が緩やかになることを発見しました。
一方で、別の調査では、非常に高い収入を得ている人々でも、一部の幸福指標が引き続き増加するケースも報告されています。
また、日本でも似たような傾向が確認されています。
例えば、内閣府の「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」では、雇用賃金満足度が年収100万円以上300万円未満から700万円以上1000万円未満までは、正規雇用・非正規雇用ともに上昇していますが、年収1000万円以上2000万円未満になると正規雇用では上昇幅が小さくなり、非正規雇用では減少しています。
年収が1000万円を超えると満足度の上昇幅は小さくなると発表しています。
これらのデータは、収入が一定レベル以上になると、生活の質向上や心理的な安心感が飽和状態に達することを示しています。
一定の収入以上で幸福度が増加しにくい理由
心理学や経済学の調査によると、収入と幸福度の関係は「一定の収入レベルで頭打ちになる」現象が確認されています。上述した通り、米国の調査では年間収入が7万5000ドルを超えると収入の増加にともなう幸福度の上昇が鈍化する傾向が示されています。
この現象は幸福の限界点と考えられ、基本的な生活が満たされたあとは、収入が幸福度に与える影響が小さくなることを示唆しているのです。
この現象の理由として、新しい収入や豊かさに慣れることで、それが日常の一部として感じられるようになり、初めの頃の喜びが薄れてしまうことが考えられます。また、収入が高くなると、社会的比較の対象も上がるでしょう。
その結果、自分より裕福な人と比較して不満を感じることも影響していると考えられます。さらに、収入が増えることで仕事や責任が増え、ストレスが増大する可能性も幸福度に影響を及ぼします。
収入以外の幸福要因の重要性
実は幸福度を高める要因は、収入だけに限りません。
心理学では「内的要因」と「外的要因」に幸福度を影響する要素が分けられ、内的要因には性格、自己効力感、感謝の気持ちなどが含まれます。感謝の気持ちは特に幸福度と密接に関連し、日々の小さな喜びに感謝することで幸福感が高まるのです。また、楽観主義や社会的つながりも幸福度を支える大きな要素です。
外的要因としては、人間関係が大きな役割を果たします。良好な家族関係や友情、職場での信頼関係は、心理的な安定と満足感をもたらします。また、健康も幸福度にとって重要な要因です。
定期的な運動や十分な睡眠は、身体的および精神的な健康を維持し、幸福感を高めることが分かっています。このように、収入以外の要因が生活の質を左右することが多いのです。
社会的比較と幸福度の関係
人間は、無意識のうちに他者と自分を比較してしまうことがあります。この「社会的比較」が、収入に関連する幸福度に大きな影響を与えるのです。
例えば、自分の収入が周囲の人々よりも高いと感じる場合、主観的幸福度が高まりやすい傾向があります。一方で、自分よりも裕福な人々と比較することで、収入に満足できなくなり、不幸を感じる場合もあります。
特に、SNSの普及により、他者の成功や豊かさが視覚的に目に入りやすくなったことから、社会的比較の影響がさらに強まっているのが近年の特徴です。
これにより、収入が増えても満足感を得られず、不幸を感じる「相対的剥奪感」に陥る人が増えています。幸福感を高めるためには、他者との比較を避け、自分の価値観に基づいた目標や基準を持つことが重要です。
幸福度を高めるための行動と考え方
幸福度を高めるためには、収入だけに依存しない行動や考え方を身につけることが大切です。まずは、自分の生活に感謝し、現在持っているものに目を向ける習慣を持ちましょう。また、趣味や楽しみを見つけることで、日常生活に小さな幸せを増やすことができます。
収入は幸福度に影響を与える重要な要素ですが、一定以上の収入ではその効果が薄れることが心理学の研究で示されています。幸福度を高めるためには、収入だけでなく、感謝や社会的つながり、健康、目的意識など、収入以外の要因を重視することが必要です。他者との比較にとらわれず、自分らしい生活を送ることで、より満たされた人生を実現できるでしょう。
出典
内閣府 満足度・生活の質に関する調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
