「片働きで年収1000万円」の家庭と、「共働きで年収500万円ずつ」の家庭。手取りはどちらがどれくらい多い?

配信日: 2025.03.03 更新日: 2025.03.04

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「片働きで年収1000万円」の家庭と、「共働きで年収500万円ずつ」の家庭。手取りはどちらがどれくらい多い?
同じ世帯年収1000万円でも、1人で稼いでいるのか、夫婦で稼いでいるのかで税額や社会保険料額などは変わります。世帯年収が同額でも手取り額が違うケースもあるでしょう。
 
片働きと共働きの手取り額が異なる理由のひとつは、所得税率です。今回は、片働きと共働きの税率の差や、どれくらい変わるのかなどについてご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

片働きと共働きでは手取りにどのような違いがある?

片働きと共働きの大きな差は、世帯年収に対する税金の割合です。日本では、所得税に「累進課税制度」を採用しています。累進課税とは、所得が高くなるに従って所得税率も上がっていく仕組みです。
 
片働きだと、実質世帯年収の全額に対して税率が課されますが、共働きだと夫婦それぞれの金額に対して課されるため、それぞれの税率が低くなる可能性があります。
 
さらに、世帯年収が1000万円の場合、給与所得控除も片働きと共働きで差が出るでしょう。国税庁によると、給与所得控除は給与収入に応じて金額が変動しますが、850万円を超えると金額が一定になるためです。
 
給与収入が850万円を超えた場合、収入が多くなるほど収入に対する所得控除の割合が減少するため、片働きのほうが税額も高くなりやすいでしょう。
 

世帯年収1000万円の片働き世帯と共働き世帯の手取り額

今回は、以下の条件で世帯年収が1000万円の片働き世帯と共働き世帯の手取り額を比較しましょう。

●東京都在住40代(夫婦ともに)
●健康保険は全国健康保険協会に加入
●賞与額は考慮せず、月収は年収を12で割ったものとする
●控除は給与所得控除、基礎控除、社会保険料控除、配偶者控除のみ
●控除額は令和6年度のもの
●住民税は所得割10%、均等割5000円(森林環境税を含む)で計算

 

片働きで夫もしくは妻が年収1000万円の世帯

年収1000万円の場合、月収は約83万3333円、標準報酬月額は83万円です。条件を基にすると、社会保険料は以下のようになります。

●健康保険料と介護保険料の年額:57万6684円
●厚生年金保険料の年額:71万3700円
●雇用保険料の年額:6万円
●社会保険料の合計額:135万384円

また、給与所得控除は195万円となるため、給与所得は805万円です。税金の計算は、給与所得から社会保険料控除、所得税と住民税の基礎控除・配偶者控除をそれぞれ引いて求めます。
 
まず、所得税の基礎控除は48万円です。計算すると、課税所得は583万9000円で、税率は20%、控除額は42万7500円になり、所得税額は74万300円になります。
 
一方、住民税の基礎控除は43万円です。課税所得は593万9616円で税率は10%+5000円のため、住民税額は約59万8962円になります。
 
年収から社会保険料と所得税、住民税を引くと、手取りは約731万354円です。
 

共働きで年収が夫婦で500万円ずつの世帯

年収500万円の場合、月収は約41万6667円、標準報酬月額は41万円です。条件を基にすると、社会保険料は以下のようになります。

●健康保険料と介護保険料の年額:28万4868円
●厚生年金保険料の年額:45万180円
●雇用保険料の年額:3万円
●社会保険料の合計額:76万5048円

また、給与所得控除は「500万円×20%+44万円」で144万円です。
 
各控除を引くと、所得税は課税所得が231万4000円、税率が10%、控除額は9万7500円のため、税額は13万3900円になります。住民税は課税所得が236万4952円、税率は金額にかかわらず同じなので、税額は約24万1495円です。
 
年収から各項目を引くと、年収500万円の手取りは約385万9557円になります。夫婦で同じ年収だとすると、世帯年収は2倍になるので約771万9114円です。片働きで年収1000万円を得ている世帯と比較すると、手取りが約40万8760円多いことになります。
 

手取り額は共働きのほうが多くなりやすい

所得税は所得が多いほど税率が高くなるため、1人の所得が高い片働きよりも、1人あたりの所得が低くなる共働きのほうが所得税額が低くなりやすいでしょう。また、給与所得控除も年収1000万円ほどになると控除額が変動しないため、税金の計算の際に差し引ける金額の割合が少なくなります。
 
片働きで年収1000万円の世帯と、年収500万円ずつの夫婦共働きで合計年収1000万円の世帯を比較した場合、今回の条件だと手取りに約40万8760円の差が生じる可能性があります。ただし、ほかにも適用される控除があると金額は変動するので、自分で計算をするときは注意が必要です。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1410 給与所得控除
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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