年収の壁の引き上げ 企業は歓迎? 年収の壁のメリットデメリットをチェック
配信日: 2025.03.22

今回は、「年収の壁」を解説し、世間の反応についてもご紹介します。

執筆者:下中英恵(したなかはなえ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者
“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。
富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”
年収の壁の引き上げとは?
まずは、年収の壁とは何かを確認していきます。日本では、年収が一定額以上になると、所得税を支払ったり、社会保険料を支払ったりと、負担も増えていく仕組みになっています。この、支払わなければならない税金等が増えるボーダーラインが「年収の壁」と呼ばれるものです。
パートで働いている方などにおいては、手取りの減少を避けるため、年収の壁を超えないように働き控えをしているケースも多く見受けられるようです。
年収の壁は、「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」などいくつかの種類があります。それぞれ簡単に見ていきましょう。
・103万円の壁:
年収103万円を超えると所得税がかかる
・106万円の壁:
年収106万円を超え、その他一定条件を満たすと、社会保険料の支払いが必要となる
・130万円の壁:
年収130万円を超えると、ほぼ全てのケースにおいて社会保険料の支払いが必要となる
現在、国会で特に議論されている年収の壁は、103万円の壁についてのものです。これは103万円から引き上げられることがすでに決定しており、引き上げ金額については今もなお検討が続いています。
年収の壁の引き上げのメリットデメリット
次に、年収の壁の引き上げのメリットとデメリットを考えていきます。
メリットとしては、所得税がかからずに働けるようになる人が増えることが挙げられます。今まで年収額を調整して働いていたパートの方などについては、労働時間を増やすことができるため、家計の収入アップが見込めます。また、人手不足となっている企業では、より多くの労働者を確保できる可能性があります。
一方、デメリットとしては、その分国の税収が減ることが挙げられます。国の運営という点では何かしら支障が出る可能性や、所得税の減収を補うための対応策がとられることも考えられます。
また、「103万円の壁」が引き上げられたとしても、引き続き「130万円の壁」は残っています。社会保険料の負担が発生する「130万円の壁」を意識して働くパートの方は多く、結局労働人口はあまり増えないのではという懸念もあります。
世間の反応
では、年収の壁の引き上げについて、世間はどんな感想を持っているのかチェックしていきましょう。
(株)東京商工リサーチが2024年12月に行った、年収の壁見直しについての企業向けアンケート「2024年12月『年収の壁』に関するアンケート調査」を見ていきます。
賛成:91.3%
反対:8.6%
所得税が発生する103万円の壁の引き上げは、9割(91.3%)を超える企業が 「賛成」と回答し、「反対」は8.6%となっています。「賛成」の理由としては「働き控えが解消し、人手不足が緩和する」が74.4%で最多となっています。
一方で、103万円の壁だけではなく、社会保険のボーダーラインである130万円の壁の見直しを求める企業が57.4%と約6割に達していることも分かりました。所得税だけではなく、社会保険料に関わる年収の壁についても見直しを求める声が多いようです。
また、現在パートで働いている方においては、年収の壁の引き上げによって今までよりも労働時間を増やすことができるようになるため、今回の変更を歓迎している方も多いようです。
まとめ
年収の壁の引き上げは、パートで働く方や、パートを多く雇っている企業などに、特に大きな影響を与えます。引き上げ金額や実施時期については引き続き検討中です。今後のニュースにも注目していきましょう。
出典
株式会社東京商工リサーチ 2024年12月「年収の壁」に関するアンケート調査
執筆者:下中英恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者