「4月~6月」の残業代が少ないほうが、「税金が安くなる」と思っていませんか? それ、実は勘違いです!「月収40万円」の会社員を例に、残業代が“手取り”に影響する本当の意味を解説

配信日: 2025.04.17 更新日: 2025.10.21
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「4月~6月」の残業代が少ないほうが、「税金が安くなる」と思っていませんか? それ、実は勘違いです!「月収40万円」の会社員を例に、残業代が“手取り”に影響する本当の意味を解説
新年度の前後は忙しく、残業が多くなるという人もいるでしょう。しかし、「春は残業しないほうが税金が安くなる」という話を聞いて、残業時間に気を付けようと思う人もいるのではないでしょうか。
 
4月から6月の給与がそれ以降の月の手取り額に影響するというのは正しい情報ですが、厳密にいうと誤りでもあります。一見すると矛盾するように思える今回の話は、どういう理由で生じているのでしょうか。
 
本記事では、4月から6月分の給与が、それ以降の手取り額に影響を与える仕組みについて解説します。
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所得税の計算方法

「残業しないほうが税金は安くなる」という話は、個人の所得に対してかかる所得税に関する勘違いによるものです。所得税は、1月1日から12月31日までの1年間の全所得から、控除などを差し引いた金額を元に計算します。残業が少ないとその分所得が減るため、その点においては確かに所得税額が減るといえます。
 
しかし、あくまでも1年間の所得をもとに所得税を計算するので、4月から6月に支給される残業代を減らして給与が少なくなったことが、それ以降の所得税額に影響することはありません。
 

4月から6月の所得で決まるのは社会保険料

4月から6月の給与が、それ以降の月の手取り額に影響する本当の要因は、毎月の給与から天引きされる社会保険料です。社会保険料とは、主に次の3つの保険料の総称です。

・健康保険料
 
・厚生年金保険料
 
・介護保険料(被保険者が40歳以上の場合のみ徴収)

健康保険料および厚生年金保険料の徴収額は、標準報酬月額という金額に保険料率をかけて計算します。標準報酬月額とは、一定の金額幅で区分した等級ごとに決められている金額のことで、月額給与をこの等級に当てはめて決定されます。
 
この等級を決めるときに使用する月額給与は、4月から6月に実際に支払われた給与総額を3で割って算出された平均額を用います。例えば、4月から6月の給与が以下の金額だった場合で考えてみましょう。

・4月の給与:43万円
 
・5月の給与:42万円
 
・6月の給与:44万円

この場合、4月から6月の給与を全て足して3で割ると43万円となり、43万円を等級に当てはめると標準報酬月額は44万円です。仮に、1年を通した平均的な月額給与が40万円であったとしても、社会保険料は標準報酬月額である44万円に保険料率をかけて計算されます。そのため、給与から天引きされる社会保険料が多くなり、月の手取り額が少なくなります。
 

社会保険料が高くなるのは本当に損?

標準報酬月額が高くなることには、手取り額が減るというデメリットだけではなく、メリットもあります。
 
例えば、厚生年金保険料を多く納めると、将来の厚生年金の受給額の増加につながります。また、会社を休む場合の傷病手当金や、産前産後休業中に支給される出産手当金の支給額も、標準報酬月額をもとに決められます。
 
標準報酬月額が高いほうが手厚い補償を受けられるため、一概に損をするだけとはいえません。
 

標準報酬月額について正しく認識しよう

4月から6月の収入が、それ以降の月の手取り額に影響する理由は、税金ではなく社会保険料の徴収額を決める標準報酬月額が、4月から6月の給与をもとに決定されるからです。標準報酬月額が上がることで、確かに社会保険料の徴収額が高くなるため、月の手取り額に影響があります。
 
一方、将来の厚生年金の受給額が増えること、けがや病気、出産で働けないときに支給される各手当の金額が高くなるなどのメリットもあります。
 
年度替わりで忙しく、どうしても残業しなければいけないこともあるでしょう。標準報酬月額が上がってしまったと、落ち込むのは本末転倒です。メリットがあることも認識し、気持ちを楽にして仕事に集中してみてはいかがでしょうか。
 

出典

全国健康保険協会 標準報酬月額の決め方
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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