ニュースで「新卒の初任給が30万円」と聞いてモヤモヤ。同じ新卒の自分は「20万円」ですが人手不足と聞きますし、今からでも給与の高い会社に転職すべき? 注意すべき“カラクリ”もあわせて解説

配信日: 2025.05.16 更新日: 2025.10.21
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ニュースで「新卒の初任給が30万円」と聞いてモヤモヤ。同じ新卒の自分は「20万円」ですが人手不足と聞きますし、今からでも給与の高い会社に転職すべき? 注意すべき“カラクリ”もあわせて解説
新しい環境に緊張しながらも、意気込んで始めた社会人生活。
 
そんな中、SNSやニュースで「新卒初任給30万円超」「一部企業では40万円」といった話題に触れると、「あれ? 自分は20万円だけど……」「高い給料の会社、実はたくさんあるんじゃないの?」「もう一度、会社選びをしたほうがいいの?」などとモヤモヤしてしまう人もいるのではないでしょうか。
 
ただ、結論から言うと初任給20万円は特別低いわけではありません。そして、初任給30万円や40万円が必ずしも恵まれているとは限らないのです。どういうことか、詳しく見ていきましょう。
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東京都の新卒平均初任給は約22万円。ただし産業・企業規模によって異なる

まずは、「平均」がどれくらいなのかを確認してみましょう。東京労働局が2024年に実施した「新規学校卒業者の求人初任給調査」によると、大卒新卒の初任給は21万6500円です。
 
ただし、初任給は産業や企業規模によっても異なります。同調査の初任給を産業別に見ると、「建設業」の大卒初任給は22万7500円で最も高く、「宿泊業、飲食サービス業」の20万5700円と2万円以上の差があることが分かります(図表1)。
 
図表1

図表1

東京労働局 学卒者の初任賃金(令和6年3月新規学卒者の求人初任給賃金調査) より筆者作成
 
次に企業規模による違いを見てみましょう。従業員が29人以下の企業の平均初任給は21万5000円となっており、1000人以上の企業の平均初任給22万3000円と比べると8000円の差があります(図表2)。
 
図表2
図表2

東京労働局 学卒者の初任賃金(令和6年3月新規学卒者の求人初任給賃金調査) より筆者作成
 
このように、同じ大卒・新卒であっても、就職する会社の産業や企業規模により平均初任給には差があります。初任給20万円は大卒・新卒者全体の平均から見ると少し低いものの、産業や企業規模によっては妥当と言えるでしょう。
 

「初任給30万円」はもともと給与水準が高い業界orカラクリがあるケースも

このことから、「初任給30万円」を超えるのはごく一部の企業と言えます。それでもやはり、「初任給30万円」と聞くと気になりますよね。なかには「初任給40万円」というニュースも聞こえてきます。
 
図表1を見ると、金融・保険業の平均初任給は22万円です。これはあくまで平均ですから、実際にはこれより高い会社もあります。
 
例えば、SBIホールディングスでは2024年度の大卒・大学院卒の初任給が30万円、2025年度はさらに4万円引き上げて34万円と発表しています。この場合はもともと給与水準の高い業界であり、かつ企業規模が大きいためと言えるでしょう。
 
一方、高い初任給を提示している企業の中には、20時間や40時間などの残業を前提とした給与形態になっているケースもあります。
 
例えば、楽天グループは、2025年度の大学・学部卒の初任給は35万円(ビジネス総合コース)ですが、その内訳は基本給26万5823円、40時間分の固定残業代8万4177円となっています。
 
また、2024年4月以降の新入社員全員を対象に、初任給を30万円から40万円まで一気に10万円引き上げたことで話題になった東京BASEですが、内訳は基本給20万3000円、諸手当として、一律通勤手当2万円、一律販売手当5000円、80時間分の固定残業代17万2000円です。
 
「固定残業代」とは、20時間や40時間などあらかじめ定められた時間内の残業代を毎月の給料に含むものです。例えば、固定残業代が40時間の場合、実際の残業時間がゼロでも、20時間でも、40時間でも給与は変わりません。もちろん残業時間が40時間を超える場合は別途残業代が支払われます。
 
ただ、最初から固定残業時間を40時間含む給与が支払われるということは、平均的に月40時間ほどの残業が発生する可能性があると考えることができます。
 

転職を考えるなら「慎重さ」がカギ

「残業してもいいから、たくさん稼ぎたい」「バリバリ働いて、早くスキルアップしたい」そんな気持ちで初任給が高い会社への転職を考えるのもいいでしょう。
 
ただ、それなら今の会社でも可能ではないか? と考えることも大切です。
 
例えば、今の会社では初任給が20万円だけれど、その中に固定残業代が含まれていないならば、しっかり仕事をして残業をした分だけ給与が上がる可能性があります。頑張りが評価されて、賞与に反映されることもあるかもしれません。今の会社がこれから成長する業種であれば、後々給与が高くなることも考えられます。
 
転職するにしても就職したばかりの今すぐではなく、ある程度経験を積んでから、同じ業種でより企業規模の大きい会社にステップアップする方法もあります。
 
繰り返しになりますが、初任給20万円は一概に低いとは言い切れません。ごく一部とはいえ高い初任給に焦る気持ちも分かりますが、1年後、2年後、さらにその先を見据えて、今の会社でできることを着実に積み重ねていくのもいいのではないでしょうか。
 

出典

東京労働局 学卒者の初任賃金(令和6年3月新規学卒者の求人初任給賃金調査)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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