一般職から「係長」に昇進したのに、給料は“月3万円”しか増えなかった! 実は昇給って「コスパが悪い」の? 手取りが増えない理由を解説
ただ、自分が想像するよりも昇給額が低い場合は、やりがいを感じられない人もいるかもしれません。そこで本記事では、一般職から係長への昇進では平均して月に何万円の収入増になるか、データをもとに解説します。
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一般職と係長の月収の差は
一般職と係長の月収の違いは年齢や勤続年数も関係するため、一概にはいえません。
また、会社によっては係長になることで役職手当がつくこともありますが、それぞれの会社によって昇給幅はさまざまです。
1つの参考として、厚生労働省の資料で非役職者と一般職の賃金の違いを見てみましょう。
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査の概況」によると、非役職者(一般職)と、係長級の毎月の賃金の平均は図表1のようになりました。
図表1
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査の概況 より筆者作成
男女ともに、非役職者と係長級の平均月収は7万~8万円ほどの開きがあることが分かります。
係長は、現場で働く一般職(非役職者)の正社員や非正規社員と、管理職である課長級との間の役職です。自分の仕事の目標を達成することに加え、1つの課に複数あるチームの長として部下の育成も業務に加わります。
昇進して残業代が支給されなくなることもある
給料の金額には、額面の昇給額以外に、残業代が支給されるかどうかも重要な要素です。
例えば、筆者が実際に働いていた製造会社では、係長以上を「幹部」「管理職」として扱い、一般職から昇進すると5万円以上の昇給がある一方で、基本給と役職手当以外の残業代等が支給されませんでした。
賃金構造基本統計調査の平均のように、係長に昇進して月8万円の昇給を果たしたとしても残業代が支給されないと、月3万円昇給したうえで残業代が支給される会社の係長よりも手取り額で下回ることもあるでしょう。
昇進でどれくらい年収がアップするかを確認するなら、額面の昇給額だけでなく、残業代の支給の有無まで総合的に判断する必要があるでしょう。
年収が上がると税金も上がるため手取り額は昇給額ほど増えない
もう1つ、昇進の際の月収や年収に関係する要素として、「税金」があります。特に所得税は超過累進課税であり、年収が一定金額を超えると段階的に税率が上がります。
例えば、非役職者の平均月収が25万円で、年2ヶ月分の賞与も受け取っていると仮定します。すると年収は350万円ですが、給与所得控除を55万円差し引くと課税所得は「295万円」です。
課税所得が295万円の場合の所得税の計算式は、「295万円×10%-9万7500円=19万7500円」です。
一方、係長になって月3万円昇給して月収が3万円上がった28万円と仮定すると、年収は392万円、給与所得控除55万円を引くと課税所得は337万円です。
課税所得337万円の場合は所得税率が20%に増え、所得税は「337万円×20%-42万7500円=24万6500円」となります。
このように、昇給すると税金が上がる可能性があるため、昇給で手取りがどのくらい増えるかを知りたいときは、税金がどのくらい上がるかも考える必要があります。
まとめ
給与テーブルは会社ごとに異なるため、一般職から係長に昇進したときにどのくらい給与が上がるかは一概にはいえません。ただ、一見すると高額の昇給でも、残業代が支給されなくなると一般職のときからさほど手取り金額が増えない事例もあります。
また、年収がアップすると、所得税を始めとした税金や社会保険料も高くなります。ただし、厚生年金保険料が上がると、将来的に受け取れる厚生年金が高くなるというメリットもあります。
昇進のコスパが良いかを考えるなら、月収だけでなく、手取りや将来の年金がどのくらい増えるかまで計算することをおすすめします。
なお、コスパが悪いと感じて昇進を断ると、次の昇進チャンスが回ってこずに生涯年収が大きく下がる可能性もあります。自身のライフプランや老後資金まで考えると、昇進のチャンスは逃さないほうが良いのではないでしょうか。
出典
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況 役職別
国税庁 No.2260 所得税の税率
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

