テレビで「富裕層」や「準富裕層」という言葉を目にしました。なんとなく年収が高い人のイメージですが、「基準」はあるのでしょうか?
この記事では、富裕層・準富裕層の基準や背景について分かりやすく解説します。
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富裕層と準富裕層の定義
「富裕層」や「準富裕層」といった言葉の定義とは何なのか、また、なぜこのような分類が使われるのかを詳しく見ていきましょう。
純金融資産とは?
富裕層や準富裕層といった分類は、年収ではなく純金融資産に基づいて定義されます。純金融資産とは、資産の総額から借金などの負債を引いた金額のことです。野村総合研究所(NRI)によると、保有する純金融資産の金額ごとに、表1のように分類されています。
表1
| 分類 | 保有する純金融資産の金額 |
|---|---|
| 超富裕層 | 5億円以上 |
| 富裕層 | 1億円以上5億円未満 |
| 準富裕層 | 5000万円以上1億円未満 |
| アッパーマス層 | 3000万円以上5000万円未満 |
| マス層 | 3000万円未満 |
※野村総合研究所「ニュースリリース」より筆者作成
なお、保有している金融資産が1億円を超えていても、負債(住宅ローンなど)を抱えていれば、負債を差し引いて純金融資産を算出します。例えば、1億円の預貯金と3000万円の住宅ローンがあれば、純金融資産は7000万円となるため、上記の分類では「準富裕層」に該当します。
なぜ年収ではなく金融資産で判断するのか?
富裕層=高年収というイメージがあるかもしれません。NRIの定義はあくまで資産ベースです。それには以下のような理由があります。
● 年収は変動しやすい
● 資産の方が経済的自由度を示す
● 金融機関やマーケティングで活用される
年収は、職種や業績、健康状態などによって変動する可能性があります。たとえ年収が高くても、支出が多く資産がほとんど残らない場合、長期的な経済的安定があるとはいいにくいでしょう。
また、純金融資産は、実際に「使えるお金」や「将来に備える力」の大きさを示します。資産が1億円ある人は、収入がなくても生活を維持でき、将来に備える余力があるとされます。
そして、金融機関や資産運用業界では、顧客層の把握やマーケティングのために、こういった資産分類を用いています。
「いつの間にか富裕層」や「スーパーパワーファミリー」とは?
富裕層や超富裕層だけでなく、従来の富裕層像とは異なる新たなタイプの資産形成層が生まれつつあります。NRIが2025年に発表した資料では、「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」といったユニークな層にも着目しました。
一般会社員でも1億円超?「いつの間にか富裕層」
NRIが提唱する「いつの間にか富裕層」とは、特別な資産家ではない一般の会社員層が、資産運用の成果により富裕層(純金融資産1億円以上)に到達した層を指します。「いつの間にか富裕層」の特徴は表2の通りです。
表2
| 年齢 | 40代後半~50代 |
| 職業 | 大手企業勤務の会社員 |
| 大手企業勤務の会社員 | 従業員持株会・企業型確定拠出年金・NISA(少額投資非課税制度)・iDeCo(個人型確定拠出年金)など |
※野村総合研究所「ニュースリリース」より筆者作成
「いつの間にか富裕層」は、収入自体は中間的でありながら、地道に資産形成を続けた結果、資産が大きく成長した層です。この層は生活水準を大きく変えることなく、従来のマス層と近い感覚で暮らし続けるケースが多く、金融機関との関係もまだ十分に確立されていないことが指摘されています。
年収3000万円超えも!「スーパーパワーファミリー」
もう1つ注目されているのが「スーパーパワーファミリー」です。これは、大手企業勤務の共働き夫婦で、世帯年収3000万円を超えるような家庭を指します。主に都市部で見られる新しい富裕層予備軍で、スーパーパワーファミリーの特徴は表3の通りです。
表3
| 年齢 | 30代後半〜40代 |
| 居住地 | 都市部 |
| 職業 | 大手企業で共働き |
| 所得構成 | 共働きでそれぞれ1500万円以上(=世帯で3000万円超) |
※野村総合研究所「ニュースリリース」より筆者作成
この層は、教育費や住宅ローンなどに大きな出費を抱える一方、昇進や収入の増加により、急激に金融資産を増やす傾向があります。
NRIは、こうした家庭が50歳前後で富裕層入りする可能性が高いと分析しています。特に女性の社会進出が進んだ結果、このような共働き高所得世帯は、今後さらに増加するものと予測されています。
富裕層のかたちは1つではない
最近では、投資の成功で資産を築いた「いつの間にか富裕層」や、高年収共働きの「スーパーパワーファミリー」など、新たな富裕層像も注目されるようになりました。
富裕層にもさまざまなかたちがあり、資産家の家庭に生まれ育ったケースだけでなく、資産形成の積み重ねにより富裕層に到達する人も少なくありません。大切なのは、一時的な収入の高さではなく、将来に備える資産を築けるかどうかといえるでしょう。
出典
株式会社野村総合研究所 ニュースリリース(2025年2月13日)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
