「昔はボーナスなんてほぼ全額手取りだった」という父。今月「60万円」支給だったのですが、昔だったら“いくらもらえた”のでしょうか?「昭和・平成初期」との手取りを比較
果たして、昔と今とでは、ボーナスの手取りにどれほどの差があるのでしょうか? 社会制度の変遷をふまえながら比較してみましょう。
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昔のボーナスは本当に「ほぼ全額手取り」だったの?
昭和や平成初期のころ、ボーナスは「ほとんど額面通りに振り込まれていた」と語る人も少なくありません。これはボーナスからの天引き額が少なかったためです。確かに、当時はボーナスから天引きされるのは所得税だけで、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)は引かれていなかったのは事実です。
もう少し正確に書くと、2003年4月から、給与からの天引きと同様、ボーナスにも同一の保険料率で社会保険料がかかるようになりました。20年以上前ではありますが、「ほぼ全額手取りだった」と覚えている人もまだ多いでしょう。
当時、ボーナスが額面60万円支給された場合、前月社会保険料控除後の給与が30万円だった人は、源泉徴収税率6%(扶養親族1人のとき)となるため、所得税は3万6000円となります。支給額の94%、56万4000円が手元に残っていた計算になります。
今のボーナスはなぜこんなに差し引かれるの?
現在、ボーナスは給与と同様に「賃金」として扱われるため、社会保険料や税金がしっかりと課されます。所得税はもちろん、健康保険、厚生年金保険、雇用保険などの社会保険料が控除対象となり、支給額から多くが差し引かれる仕組みになっています。
仮に、ボーナス60万円を受け取ると以下のような控除が発生します(扶養親族1人)。
・健康保険料:2万9730円(健康保険料率4.955%)
・厚生年金保険料:5万4900円(厚生年金の保険料率9.15%)
・雇用保険料:3300円(雇用保険料率0.55%)
・所得税(源泉徴収税額):3万1369円
これら控除額の合計は11万9299円、手取り額は48万701円となります。
年齢や家族構成などでも変わりますが、額面に対して手取りは80%程度となり、昔と比べて10%以上も目減りしていることになります。
これからのボーナス、手取りを増やす方法はある?
現行制度のもとでは、ボーナスにかかる社会保険料や税金をゼロにすることはできません。ただし、可処分所得を増やす工夫をすることで、実質的な手取りアップは可能です。
例えば、iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用することで、拠出した金額は全額所得控除となり、結果的に所得税・住民税の負担を軽減することにつながります。また、新NISA制度を活用すれば、投資による利益が非課税となり、将来的な資産形成に有利です。
さらに、副業やフリーランス的な働き方を通じて収入源を複数持つことで、ボーナスへの依存度を下げるという選択肢もあります。加えて、社宅制度・企業型確定拠出年金・持株会など、福利厚生をフル活用することも、節税と生活費の圧縮につながります。
日常生活では、ポイント還元率の高いキャッシュレス決済や、割引制度を活用した一括払いなど、小さな工夫の積み重ねが家計の最適化に寄与するでしょう。
まとめ
「昔はボーナスがほぼ満額もらえた」という話は、決して誇張ではなく、制度上の実態に基づいた事実でした。しかし、時代とともに社会保険料や税制は大きく変化し、現代ではその分手取りが大きく減っているのが現実です。
とはいえ、制度を正しく理解し、iDeCoやNISA、副業や福利厚生などをうまく活用すれば、実質的な手取り額を上げることは可能です。大切なのは、減った金額を嘆くのではなく、どう活かすかを考える視点です。ボーナスの真の価値は、使い方と工夫次第で大きく変わるのです。
出典
協会けんぽ 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
日本年金機構 保険料額表(令和2年9月分~)
厚生労働省 雇用保険料率について
国税庁 令和7年分源泉徴収税額表
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
